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ピエロは嗤う  作者: ネギ鮪パラダイス
ギルド編
11/30

追憶

すいませんでした……


昨日は爆睡してました


睡眠時間なんと13時間!

 ククルは転生者であった。

 前世ではそれなりに人望もあり、皆から愛されていた。

 彼女は結婚した。この人と生涯を共にすると心に決めていた。

 やがて一人の息子が生まれ、家族三人仲睦まじく暮らしていた。

 この幸せなひと時がずっと続くと思っていた。

 しかし、そんな彼女の生に終わりを告げる出来事がやってきた。

 息子が二歳になった誕生日の日、彼女は誕生日プレゼントを買うためにデパートへ出かけていた。

 その帰り道、彼女の身に不幸は降りかかった。

 信号待ちをしていた時、何者かに背中を押され道路に飛び出してしまった。

 そして、撥ねられた。

 彼女は薄れゆく意識の中で、願った。


(死にたくない、まだ家にはあの子たちが。でも、無理でしょうね。ああ、出来ることならば、来世でもあの二人と共に暮らしたい。)


《確認しました。願いより種族を決定。死の超越――失敗しました。代替措置として寿命の超越――成功しました。種族“森精族(ハイエルフ)”に転生。続いて、能力(スキル)の決定。特定人物召喚――失敗しました。代替措置として現実と夢との位相反転――成功しました。固有能力(ユニークスキル)幻想者(デイドリーマー)”を獲得。転生を実行します――》


 聞こえてきた声に疑問を抱きながら、彼女の視界は暗転した。

 彼女の命の(ともしび)は消えてしまった。

 彼女の死は自殺として処理された。

 度重なるストレスによる、心的疲労から飛び込み自殺したと判断されたのだ。

 だが、事実は異なる。

 彼女の知り合いの一人が、彼女の幸せに嫉妬し引き起こした出来事であった。

 しかしそのことは公になることなく、闇に葬られていった。事実を知るのは本人と犯人だけとなった。

 否、もう一柱(ひとり)だけいた。だが、それは知られぬままとなるだろう。

 死んでしまったはずの彼女の意識は再び明転した。

 彼女は一糸まとわぬ、生まれたままの姿でそこ(・・)にいた。

 どこかは分からぬが、確かにそこにいた。

 彼女は身を隠すものがほしいと願った。

 次の瞬間、どこからともなく服が現れた。

 その時、脳に直接語りかけるように、それでいて目の前の人物に話しかけるように声が聞こえてきた。


『やあ、君が今回の転生者かい? ずいぶんと若いんだね。ところで話は変わるけど、君は意識を失う前、何か声が聞こえなかったかい?』


 その声は少年のようで少女のよう。しかし、老婆のようであり老爺のような声であった。

 そして彼女は聞こえてきた声に安心感を覚えた。

 彼女の本来の気質か、それとも()に有無を言わせぬ雰囲気があったのか定かではないが、何故か聞かれたことはすべた答えなければいけないと思った。


「はい、聞こえました」


『それは良かった。あの声で分かったかもしれないけど、一応説明させてもらうね』


 分かりませんでした。とは言えない雰囲気であったので、素直に説明を聞くことにした。


『君は、あちらの世界では死んでしまった。特に君の場合は多くの人に愛されていたのにも拘らず、理不尽な理由で殺されたしまった。そこで救済措置として転生を行うことにしたんだよ。あのときに聞こえた声は世界の声(ナレーション)と言って、説明は省くけど、要約すると色んなことを説明してくれるん便利な声なんだ。言い換えると神の代弁者ともいえるかな』


「なるほど?」


 分かったようで分からないような、そんな感覚であった。


『あんまり分かってなさそうだね。まあ、慣れればそのうち分かるよ。じゃあ転生を始めるよ』


 ちょっと、こっちの都合は。とも思ったがもう言い出せる雰囲気ではなかったので、受け入れることにした。


『今、目の前に門が出ているだろう? そこをくぐったら転生が完了する。森精族(ハイエルフ)の赤ん坊として転生するようにしてあるから頑張ってね。説明し忘れは……そうだ、転生者特典として記憶の保護が行われているから、前世の記憶は引き継がれるようになってるよ。それと、今の言語の記憶があると言語習得に苦労するかもしれないから消すこともできるけどどうする?』


 しかし、家族との記憶から言葉が消えることを、何より愛する家族の声を思い出せなくなることを恐れた彼女は断った。


『じゃあ、行ってらっしゃい。よい来世を』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 時は過ぎ、彼女は強くなろうと必死になった。全ては、自分と自分の大切なものを守るために。

 彼女は森精族(ハイエルフ)で、そして世界でも有数の実力者となった。

 この時点で彼女は(よわい)二百歳を超えていた。

 彼女は森精族(ハイエルフ)の集落を抜け出した。

 このまま生を終えることを嫌ったのだ。

 人間の王国に至った彼女は旅人として活動するようになった。

 この時はまだ冒険者ギルドは存在しなかった。故に旅人として世界各地を渡り歩いていたのだ。

 そんな時、偶々(たまたま)立ち寄った集落で毒多頭竜(ポイズンヒュドラ)の討伐依頼を受けた。

 死闘の末、彼女は毒多頭竜(ポイズンヒュドラ)の討伐は成功した。

 しかし彼女は瀕死となった。


(よかった、今度はみんなを守れた。でも、結婚はできなかったな)


 そんな中、彼女に声をかけてきた人物がいた。


「大丈夫ですか! 今回復しますから、意識を保っててください!」


 声をかけてきた人物は少年だった。

 彼は彼女の前世の夫によく似ていた。

 彼女は彼に恋をした。彼の笑顔を守りたいと思った。

 彼女は持てる術の全てを彼に伝えた。もう二度と大切な人と別れることがないように。

 少年はメキメキと成長していった。

 やがて、少年は彼女と共に旅をするようになった。

 彼は勇者として祭り上げられた。そして、彼女は彼を背後から支えていた。彼女のことを『勇者に取り入る売女(ばいた)』と罵るものもいたが、彼女は気にしなかった。

 月日は流れ、数百年がたった。少年はその姿のまま人でありながら、人ならざる身へと昇華した。そして寿命を超越した。それは森精族(ハイエルフ)のようであり、精霊族(エレメント)のようでもあった。

 彼は五十年おきに別人に扮して、彼女は別人に扮した彼と共に、勇者として活動していった。

 そして、魔王討伐の任を命じられた。

 その時の勇者パーティーは今までの例を見ないほど強かった。

 彼らのパーティーは彼女、賢者、剣聖、陰陽師、そして彼の五人だった。

 魔王を討伐した彼らは救国の英雄として崇められた。

 しかし彼らの力を恐れるものがいた。それがレスミン教会だった。

 彼らは悪魔の手先として、教会の掃除屋に始末されそうになった。そのたびに撃退し、隠れ潜むようになった。

 隠れ潜むうちに一人、また一人と仲間たちは天寿を全うしていった。

 そして彼女と彼の二人になってしまった。

 二人はこの世界から不幸な人を一人でも減らしたいと思い冒険者組合を立ち上げた。これが、今の冒険者ギルドの前身となった。

 さらに時は流転し、数百年が過ぎた。

 彼女は王都のギルドマスターとして、彼はギルドのグランドマスターとして、それぞれ数十年おきに姿かたちを変えながら、時には冒険者として活動しながら、様々な形で人々の生活を守っていった。

 そして運命的な出会いが再び訪れた……。

数ある作品の中から拙著をご覧頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 皆、拉致召喚肯定派? それに、何故に殺し合いをすんなり受け入れられるんだろか。 しかも、活動の経費半分自腹宣言も二つ返事で了承? 否定意見のない不思議。 同調圧力的作用があるにしろ、家に帰れ…
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