冒険者ギルド
クリスマスを削って書き上げました
今までで一番長い話だと思います。
調子がよければ明日も投稿するかも?
「「「……」」」
ククルさんの言葉への俺たちの返答は沈黙だった。
「と言っても、別に君たちに何かするわけではないよ。ただの親切心からの警告だよ。その職業は他人には絶対に知られてはいけない。特にレスミン教国の連中にね。歴史から抹殺したのも彼らだ。彼らは表向きには世界平和を謳っているが、その実、人間至上主義的な考えをしている。そして超常の力を手に入れたボクらを悪魔の手先として排除しようとした。当然撃退したわけだけど、その後は正体を隠して生きていくしかできなくなった。だからボクの正体を知っているのはごく一部の人物だけだ。森精族の長老と君たちくらいかな。ああ、それとボクの仲間もか」
「そんな重要なことを俺達に言ってもよかったのですか。もしかしたらレスミン教国の手先かもしれないんですよ」
俺たちを代表して、カズヤがそう尋ねた。
「それは大丈夫。ボクには種族能力“精霊眼”があるからね。これは能力“鑑定眼”の上位互換みたいなものかな。能力“鑑定眼”は効果が『解析・鑑定』で、これは物限定だけど物の名前、効果がわかる。だけどボクの種族能力“精霊眼”は効果が『解析・鑑定・真贋・精霊交信』で、人にも対応しているから。具体的に言うと、人の持っている能力や職業が分かるんだ。と言っても、能力の効果までは見抜けないけどね。そこは知識でカバーすれば問題ないから大丈夫。それは措いといて、だからボクは君たちが勇者だと見抜けた、というわけだ」
よく見ると今のククルさんの目は翡翠色ではなく、髪と同じ蒼色だ。おそらく種族能力“精霊眼”を発動している時は目の色が変わるのだろう。光の加減で色が違って見えるのかと思ってたけど違ったのかも。
「だからツグミ君、きみは道化師じゃなくて、奇術師として活動していった方がいいよ」
「そうでしたか。忠告ありがとうございます。心に留めておきます」
「うん、そうするといいよ。じゃあ、困ったことがあったらボクを頼ってよ。君たちならすぐに都合をつけるからさ。受付もすぐにボクもとへ通すように話をつけておくよ。じゃあ、アマンダを呼び戻そうか」
そう言いながらククルさんはアマンダさんが置いていった宝石に手を触れながら、何か呟いていた。
ククルさんが宝石から手を離してからすぐ、アマンダさんはやってきた。
「思っていたよりも早く終わりましたね。貴女のことですので、もっとかかるかと思っていましたが」
「アマンダはボクのことを何だと思っているのかな? そんなにずっと喋ることがあるわけないでしょ」
「それは……どうでしょうか。少なくとも私は、近所の奥様方と同じ感じだと思っていますよ」
「酷い! 部下にそんな風に思われてたなんて。ボク泣いちゃうかもしれない」
「そう言っていられるうちは大丈夫ですよ」
この二人は仲がいいんだか悪いんだか。良いんだろうな。
「じゃあ、アマンダ。この子たちを冒険者登録してあげて」
「承知いたしました。では皆様、文字は書けますか? 書けないようでしたら代筆いたしますが」
「ツグミ、お前書ける?」
「少しなら。ハルユキ、お前は」
「フッ、我に不可能などないといったであろう」
「じゃあ書けんの?」
「うむ」
意外だな、こいつが書けるなんて。でも古文の成績は良かったからこういうのは得意なのかもしれない。というかハルユキのノリにアマンダさんちょっと引いてるんだけど。
「じゃあよろしく」
「心得た」
「ではこちらの紙に名前と戦闘形態、パーティー活動かソロ活動かをお書きください」
ハルユキが手慣れた手つきで全員分の情報を紙に記入していく。
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《名前》
カズヤ・イノウエ
《戦闘形態》
前衛/徒手空拳
《活動方式》
パーティー
《名前》
ツグミ・ハヤカワ
《戦闘形態》
後衛/支援
《活動方式》
パーティー
《名前》
ハナ・イズミ
《戦闘形態》
中衛/支援・薙刀
《活動方式》
パーティー
《名前》
アカギ・コンドウ
《戦闘形態》
前衛/短剣・弓
《活動方式》
パーティー
《名前》
ハルユキ・ウチダ
《戦闘形態》
後衛/魔法
《活動方式》
パーティー
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「ありがとうございます。ではこちらの魔機に血を一滴垂らしてください。これにより魔力の波長が冒険者板に記録され、不正利用されなくなります。また、身分証明証となるので失くさないようにしてください。失くした場合はギルドにて再発行手続きが可能となりますが、その場合手数料をいただきますのでご了承ください。では左の方から順によろしくお願いします」
左っていうとアカギからか。そうすると俺は真ん中に座ってるから、三番目か。まあ、右からでも三番目なので関係ないと言えば関係ないが。
ということで、全員の魔力の記録が終了した。
「ご協力ありがとうございました。では冒険者組合の制度の詳しい説明に移らせていただきます。まず禁止事項から説明させていただきます。第一に、訓練場を除いて、建物内での争いは禁止です。万が一発見された場合は、罰が課せられます。最悪の場合、冒険者板の永久剥奪もあります。第二に、ギルド職員への暴行は禁止です。こちらも先ほどと同様に、冒険者板の永久剥奪の可能性があります。次に階級制度についてです。階級には最上位をSとして、以下A、B、C、D、E、Fといったの七つの階級があります。特例として、S級の上にEX、ERといった階級が設けられることがありますが、こちらは制度として存在するのみで、魔物以外で存在したことはありません。またA級を超えると所属国家に情報が送られるようになり、国家からの緊急クエストを受理することができるようになります。最後に、注意点です。クエストは放棄や失敗した場合貢献度が下がり、成功した場合貢献度が上がります。なのでなるべく放棄や失敗しないようにしてください。しかし、事前情報と違った場合、その限りではありません。ギルドで調査を行った後、クエストの可否が決定いたします。又、クエストには恒常クエストと一時クエストの二種類に分けられます。恒常クエストは受理せずに討伐証明部位だけを持ってきた場合も達成扱いとなりますが、一時クエストは受理してからでなければ討伐証明部位を持ってきても達成とはなりませんのでご了承ください。以上となります。不明な点はございますか」
説明が長かったけど、要約すると――
・ギルド内での暴力行為は御法度。冒険者板の永久剥奪もあり得る
・A級から義務が増える
・クエストはなるべく失敗しないように
・クエストの達成証明には討伐証明部位が必要
――といった感じだろう。俺には特に疑問点はないがみんなはどうだろうか。みんな納得したような顔をしているし、大丈夫だろう。
「いえ、問題ないです」
「そうですか。ではこちらが冒険者板となります。駆け出し冒険者は全員F級からのスタートとなります、頑張ってください」
「ボクも応援してるよ。頑張ってね」
うわっ、ククルさんまだ居たんだ。すっかり自分の仕事に戻ったと思ってた。すごい気配の消し方だな。
「「「お二人ともありがとうございました!」」」
「うん、頑張ってね」
「お気をつけください」
そう言って部屋を後にした。
だから、ククルさんの呟きを聞き逃してしまった。
「不思議なものだね。僕たちじゃなくてあの子もか。あの子は、すっかり大きくなったよ、ハヤテ」
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