入学
暇なのでテレビをつける。
部屋は真っ暗でテレビがまぶしく光った。
ふと付けた番組は有名人たちを落とし穴に落としていくといった内容だ。
彼らのリアクションを見て、笑う人たち。
俺には全く面白さ分からなかった。
気分が落ち込んだため、コンビニでビールを買うことにした。
「ああ寒」
「にゃー」
猫が木から降りれなくなっているようだ。
今日は今年一番の寒波が訪れており、路面は氷が張っていた。
凍える猫を見て、俺はそいつを木からおろしてやった。
猫はさっそうとその場を後にした。
雪もちらほら降り始めた。
今日の夜頃から本格的な吹雪となる見込みだ。
さっさと用事を済ませたいという気持ちが高くなり、少し小走りになった。
「えっ?」
突然地面がなくなった。
自分の周りだけこのような状態になっていた。
抗おうにも、踏み場がない。
ずるずると下へ、また下へと落ちていく。
落ち始めは、這い上がろうと努力したが、人生を振り返るとそんな必要などなかったと思い抵抗をやめた。
「これでいいんだ……」
どれだけ眠っていたのだろうか。
俺にはまだ意識があった。
目を開けると目の前には、天使?が目の前に立っていた。
「おうおう、ようやく目を覚ましたか。お主は死んだのじゃ。」
いきなり現れて何を言い出すんだこのおっさんは。
どうせドッキリだろう。
素人をひっかけるとは、最近の番組は攻めてるなと感じた。
「嘘だと思っとるじゃろ。あの穴に落ちてお前は死んだのじゃ。若いのにすまんのう。」
「えっホント?そのいいかただとお前が俺を殺したという事か。」
天使は目をつむり、ゆっくりとうなずいた。
何もかも信じられず、聞きたいことは山積みであったが、今一番聞きたい質問をすることにした。
「どうして俺を殺した。理由がないわけじゃないだろう。」
天使は部屋の周りを歩き始めた。
ゆっくりとした動きから、相当な年数を生きてきた人であると確信できる程であった。
「私のような天使は、世界に足を踏み入れることを許されておらん。ゆえに協力者が必要という事だ。お前の世界でいうと異世界だな。そこにいる魔法学校の生徒スコア=サイマルテニアという少女に危険が及ぼうとしている。その子は今後の世界に大きな影響をもたらす存在なんだ。君には彼女の護衛をしてもらいたい。」
「待ってくれよ。どうして俺なんだよ。ニートの俺なんかより適任な奴なんて他に山ほどいるだろ。」
「君は優しい。誰よりも‥‥だから私は君を頼ることにしたんだ。必ずお前なら成し遂げてくれるはず。長年の感だよ。」
天使は少しにやッとした表情を見てこちらを見ていた。
人に頼られたことなど、これまでの人生で一度もなかった。
だから、こんな理不尽な仕打ちと無茶苦茶な要望をされても悪くないと思った。
「分かった。異世界に行ってスコアという女性を助ければいいんだな。それでなんかこういうのって特別な力を授かれるんだろ。」
「そんなのないぞ。天使をなんだと思っているのだ。」
「えっ?」
漫画やラノベだと授かったスキルで俺最強みたいなことができるはずだろ。
「じゃ後はよろしく。」
「おいおいおいちょっと待て。このダメ天使、情報とかもっと教えてくれよ。」
身体が地面に吸い込まれていく。
てかなんだよこの気持ち悪い転送の仕方、普通ぱっと異世界に飛ばすだろ。
どんだけ無能なんだよこの天使。
「もう、最悪だ――」
「本学では、魔法を学ぶことで成長を目指していく学校です。魔法の役割は生活、就職などいたるところにおいて必要不可欠なものとなっています。また悪の組織による暴動も過激化しています。自分の身を防ぐためにも魔法の勉強を頑張ってください。」
彼はこの魔法学校クロウリーの校長のようだ。
異世界と言っても学校の入学式はあるようだ。
そして、当然のように校長の話は長い。
魔法学校の説明をしてくれるのはありがたかったが、その前の校長と魔獣の感動系友情話は本当に眠りそうで危なかった。
「ぎゅうう」
急に腹が痛くなってきた。
最近はこういう状態が続いている。
元の世界と食がかなり異なっているからだ。
この世界はよくわからない魔獣の肉が主食であり、味はゴム見たいでとても食い物だとは思えない。
式の最中ではあるが、俺はするっと式場を抜け出しトイレへ向かうことにした。
といっても、今日が初めての登校であったためその場所がどこにあるのかわからなかった。
とりあえず、校舎を探索することにした。
校舎は木製建築でとても豪華であり、まるで城の中にいるようであった。
少し廊下を歩くと部屋のドアが見えた。
ここは図書館か。
やはり魔法の本が多いのだろうか。
少しドアを開けて中を覗いてみることにした。
「すげえ」
数万冊の本が蔵書されていた。
周りには机イスが並べられており、読書するスペースも確保されている。
「バサッ」
「んん!?」
何か音が聞こえた、その方向を振り向くと少女が本を落としていた。
白髪でスタイルがモデルのようであった。
彼女は人気を察したのか、本を拾い上げ周りを見渡した。
「いたたた」
俺は腹の痛みが再び訪れたためとっさに図書館の外に出てトイレを目指して走ることにした。
少し向かった場所にトイレがあることが分かった。
「ふうう、危なかった。あやうく漏れてしまうところだった。」
しかし、今日は入学式で校内には誰もいないはずじゃ…。
でも、すごくかわいかったな。
まあ、学園生活は始まったばかりだし、また会えるはずだ。
さあ、教師に気づかれる前に帰らないと…。
入学式後は自分のクラスでホームルームが行われた。
事務的な内容でとても退屈で校長の話よりもつまらなかった。
異世界に来てからなれない事ばかりでとても疲れている状態も重なりこの生活が嫌になってきた。
現実世界の家に帰り、好きなゲームや漫画で楽しみたかった。
「はあ」
うつむき深々としたため息をついた。
「どうしたんだお前、めちゃくちゃ幸薄そうな顔して。今日はまだ学校始まって一日目だぞ。」
「俺は疲れてるんだよ。かまわないでくれ。」
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