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7(最終話)

今回で本編は終了となります

 その後シルフィアは立太子式を行い、次期女王となることが決まった。


 エルリックの失態は表沙汰にはならなかったが、噂はどこまでも広まり、その責をとるように、シルフィアの立太子式から一年後に国王は王位を退いた。



 初の女王誕生に、国はお祭り騒ぎとなった。ベンジャミン商会も特需に沸いていた。









 そんなこととは(直接は)関係なく、ミュゼットは隣国で平和に生きていた。


「ミュゼ、まーーーた徹夜したな」

「うっ……だってさぁ、新しい術式が」

「だってもなにもない!体を大事にしろって」

「まだ眠くない!眠くないもん!」


 レオンは作業テーブルにしがみつくミュゼットを軽く抱き上げると、そのままベッドに直行した。


「昨日、一緒に寝ようって約束したはずだけど」

「ふぇ?あー……わ、わす、れてた、みたい、だなぁ~~~あはははは」

「とぼけても許さないから。まだ眠くないんだろ」


 ミュゼットはベッドの真ん中にぼふんと落とされ、上からかぶさったレオンに抱きしめられた。そうして見つめ合ったあと、ゆっくりと唇を重ねた。舌が触れて一瞬ミュゼットは体をこわばらせたが、それが拒絶ではなく慣れないだけなのだと、レオンもちゃんとわかっていた。



 ミュゼットとレオンがこちらに来てすぐの頃は、こんな風に抱き合うのが難しかった。こうしてレオンが上に乗るとミュゼットの体が拒否反応を起こしていた。

 移住から一年以上経って、最近ようやく平気になってきた。


 ミュゼットにとってエルリックに襲われた一件は思ったよりも心に傷を残していたが、レオンが何に置いてもミュゼットを優先し愛を囁くだけでなく、ミュゼットの話を聞いて、時には喧嘩して、ごく普通に接することがミュゼットにとっては何よりの癒しになっていった。



「レオン、会話が通じるっていいね」


 長いキスのあと、ミュゼットが笑いながらそう言うと、レオンはにやりと黒い笑みを浮かべた。


「随分余裕があるみたいだな?」

「え、ちが、ちがう!嬉しくて、きゃ!」



 十五で結婚したミュゼットの体や心のことを気遣い、二人は話し合った上でそのときはただ抱き合うだけの初夜を過ごした。

 レオンはミュゼットの事を大事にしていたし、小柄なミュゼットに大柄で既に二十近い年齢の男を受け入れさせ、何かあったらと思うと、ミュゼットにせがまれても手を出せなかった。

 寂しさはあるけれど、学園なんて三年しか通わない、仕事していればあっという間だ、すぐに自分のもとに来てくれるとレオンは自分もミュゼットも納得させていた。




 あの事件のあと眠るミュゼットのピアスをみて、それ自体は目くらましの魔道具であるはずなのに、爆発の魔法を発動しかかっている事に気付いたレオンは、ミュゼットを永遠に失うところだったのだと分かり、半ば強引に隣国へと連れ帰った。


 それから一年以上かけてようやく……ようやく抱き合える、そんな予感がしてきた。


 レオンは昨夜勇気を出して「一緒に寝よう」と誘ったのだが、いつまでたっても来ない愛しの妻は作業室で延々と魔道具を作っていた。



 そんなミュゼットが可愛くて仕方ないところもあり、ひと段落したのを見計らって声をかけたのだ。



「今から初夜のやり直しだ」

「レオン、今は朝だよ……」

「誰かさんが徹夜したせいだな」

「ごめ……う、んん」



 心は繋がっていたけれど、ようやく本当に全てが繋がれたその日の夜、夫婦としての実感がより湧いてきたと二人はベッドの中で笑い合った。






 ミュゼットはその後レオンにそっくりな男の子と、ミュゼットにそっくりな女の子の双子を産んだ。

 夫婦の仲睦まじい姿や、隣国から聞こえてきた噂話からミュゼットの作る魔道具には縁結び効果があると話題が広まり、ベンジャミン商会は広く愛されるようになっていく。

 途中でレオンがネディクト商会を立ち上げ、ベンジャミン商会の魔道具部門はそちらに移動。何度代替わりしても両商会は協力しあい、発展を続けていく。



 アンジェラはエルリックとは当然婚約を破棄。その後遠い国の王族へと嫁ぎ、六人もの子宝に恵まれた。

 遠く離れてもミュゼットとの縁が途切れることはなかった。

 なにせアンジェラの末息子とミュゼットの娘、双子の妹が結婚し、彼女達は親戚家族になったのだ。

 時々アンジェラのもとに遊びにいっては帰らない妻を迎えにレオンが行くと、アンジェラにミュゼットとの仲を見せつけられ二人の間に冷たい空気が流れるのは毎度の光景だった。


 アンジェラの夫はそれを見て豪快に笑い、彼らの子どもたちもよく笑った。






「アンジーの旦那さんにね、石ころ蹴飛ばしたから仲良くなったんだよって言ったら嘘だろ~~って笑われちゃった」

「そう言えば……そんなこともあったわね」

「ひどい!私すごく大事な思い出だと思ってたのに!」

「ミュゼ、あなた何十年昔の話をしてると思ってるの?」

「……忘れちゃったよ、年のことなんて!」


 時間が流れ、手紙ではなく声でやり取りできるような魔道具が出来、それからさらに時間が流れるとどれほど遠くても顔を見ながら、まるで目の前にいるかのように会話ができる魔道具も出来た。


 二人は何年何十年経っても顔を合わせればあの時馬車で笑い合ったのと変わらずお喋りに花を咲かせるのだった。


お読みいただきありがとうございました⸜( •⌄• )⸝

ヒロインと悪役令嬢の友情っていいよなぁ……と思っていたら出来上がりました。思っていた以上にミュゼットとアンジェラがすごくお気に入りキャラクターになりました。

二人の仲良しエピとレオンとミュゼットの恋について番外編で書く予定です。

明日12時番外編1前編あがります。


ブックマーク、評価、お待ちしております⸜( •⌄• )⸝

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