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1-7 決起

 

 ソフィーとリリーの二人を見つけて向かっていく途中で、午後の講義の前にウィルと話していた男子生徒がウィルに声をかけて来た。


「おい、ウィル! 代表に選ばれるってお前すごいな! オレ達の代表だから負けたら承知しないからな!!」


「おぅ! 任せとけって!! ってか、オレとウィルが居ればまず負けないから安心しろよ」


「おっと、そっちがギルバートか。お前も頼むぜ!! まぁ来年の代表はオレだけどな!」


「あぁ。頑張るよ」



 そんな会話をしながらその男子生徒と別れたが、その後からイヤらしい笑みを浮かべながら見知った連中がこちらに向かって来るのが見えた。


「おいおい、そこにいるのは()()()のギルバート・ウォリスと脳筋のウィルソン・ダンヴァルガンじゃないか。まさかお前たちがサラザーヴァ代表とはな。これは、うちが優勝に一歩近付いたかな。ふふふ」


 声をかけて来たのはゼルグス・バスカビル。


 ハウゼル王国のバスカビル伯爵家の長男で、洗礼式以降、ちょくちょく嫌味を言ってくる僕の苦手なヤツだ。いつも寄り子の貴族の息子を二人取り巻きに付けていて、今もその二人はゼルグスの後ろでニヤニヤと笑っている。


 あ、忌み子というのは、僕の魔術適正に問題があって、火属性と水属性に適性があり霧魔術をよく使うのが鬼人といって、人族と争っている魔族陣営の種族だから、僕は幼いころから忌み子と言われて蔑まれることがあった。


 とは言え、家族や使用人の皆はそんなことは全く構わずに僕と接してくれたし、ウィルという親友もできたので僕はやさぐれることもなくここまで生きてこられた。だからそこまで気にしていないけどね。


「うるせーな! ウィルは忌み子でもなんでもねーよ!! そういうお前はウィルディネアの代表みたいだな。お前の木魔術なんて、オレの火魔術でも燃やし尽くせるぜ!」


 ウィルが僕の代わりに怒ってくれている。流石にあいつの木魔術をウィルの火魔術で燃やし尽くすのは難しいだろうけど、それは売り言葉に買い言葉だろうな…。


「あまり調子に乗るなよ脳筋が! 学年別対抗戦は今年もオレ達ウィルディネアが優勝だ。お前たちが活躍できることなんてないんだから今のうちに荷物を抱えて家に帰るんだな。おい、行くぞ!」


 いつものように嫌味だけ言い放って、ゼルグス達はウィルディネアの代表達が集まるところ向かっていった。


「はっ! なんだよあいつら、ホント感じ悪いよな。おい、忌み子とかあんまり気にするなよ。霧魔術なんて人間にも使えるヤツいるしな」


「あぁ。僕はそんなに気にしてないよ。でも僕の代わりに怒ってくれてありがとう。さぁ、僕達も他の二人のところに行こうか」


「そうだな」




 ソフィーとリリーの二人に合流した僕達はお互い自己紹介から始めた。


「初めましてだな。オレはウィルソン・ダンヴァルガンで、こっちはギルバート・ウォリス。二人ともハウゼル王国出身だ。まぁ代表同士仲良くしようぜ!」


「ギルバート・ウォリスです。これから宜しくね」


「えぇ、こちらこそ宜しくね。あたしはリリー・アシュラインよ。フォレスティア出身だけど、あの閉鎖的な雰囲気があんまり好きじゃないからサラザーヴァに来られてよかったと思ってるんだ。敬称は嫌いだからリリーって呼んでね」


 リリーは緑髪のミディアムヘアに赤色の瞳のエルフで、エルフにしては珍しくとても無邪気で活発そうだ。エルフは綺麗だが、生徒会長がいい例で冷淡なイメージがあるからな。


「あ、初めまして、ソフィー・マグワイヤです。私もお二人と同じハウゼル王国出身ですが、西側の片田舎の貧乏貴族領なので、お二人とお会いするのはこの学園が初めてですね。私のこともソフィーと気楽に呼んでください」


 ソフィーが微笑みながら自己紹介をしていくれた。まずい、やっぱり可愛いぞ。


 気にしないようにしようとすればするほど、心臓の鼓動が早くなるのが分かる。自分で思うのもあれだがちょっとこれは重症だな…。



「ねぇ、こんなところで話し込むのもなんだし、寮の談話室に行きましょうよ!」


 僕が平静を装いながら一人心の中で思い悩んでいると、リリーが場所を移す提案をしてくれた。


「そうだな。じゃあ行くか! 歩きながらお互いの魔術適正の話とかしとこうぜ!」


 ウィルが返事をして、僕たちはサラザーヴァの寮に向かって歩き出した。




 *****



 その後、僕達はサラザーヴァの寮の談話室に着いた。


 談話室は広々とした空間に、ソファーとテーブルが余裕を持って配置されている。


 1年生の講義は早めに終わったからか、数か所に1年生が集まっているだけで先輩達はいなさそうだ。僕達は奥の方の空いているテーブルに向かった。



 ちなみに、ここに来るまでに聞いた話だと、リリーは風属性と火属性に適性があり、得意なのは炎属性の爆炎魔術だそうだ。

 爆炎魔術はかなり威力の高い魔術だけど燃費は悪い。ただ、リリーはとにかく派手にぶっ放すのが快感らしい。この子、エルフにしてはかなり珍しいと思う…。


 一方のソフィーは光に適性があり、得意なのは回復魔術とのことだ。戦闘時などではお世話になることが増えそうだ。


 ちなみに、ウィルは火属性と土属性に適性があり、雷属性の瞬雷魔術というものを駆使して槍で戦うスタイルだ。瞬雷魔術は身体強化に特化した魔術でウィルの戦闘スタイルとマッチするんだよね。


 正直、近接戦闘なら1対1で正面から戦ってウィルに勝てる1年生はほとんどいないんじゃないかな? 何せ、そこらの兵士になら大人相手でも圧勝しちゃうし…。


「ここまでの話だと、前衛はウィルで遊撃がギル、後衛の攻撃はあたしで、回復含むサポートはソフィーね。案外、あたし達ってバランスいいんじゃない?」


 リリーが僕達の戦闘時の配置について提案する。


 ちなみに、僕とウィルの呼び方についても愛称で呼んでもらうようにした。短い方が戦闘時などの咄嗟の時に呼びやすいしね。


「確かにバランスはいいね。僕は霧魔術も使えるから、相手を錯乱している間にリリーにドでかい爆炎魔術を放ってもらえれば、結構いい線行くと思う。前衛がウィルなら鉄壁だから後衛まで敵が来ることはあんまりないだろうし」


「おぅ! 前衛は任せな!! これでも辺境伯領の騎士と訓練してるから学生相手に抜かれることはねーぞ!」


「ははは。頼もしいな。まぁ、ウィルはもちろん、僕やリリーに何かあってもソフィーが居れば回復もしてもらえるし、安心して戦えるよ」


「はい。回復なら任せてください。あとは簡単な付与魔術も使えるので、多少なら戦力の底上げもできますよ」


「そりゃいいな! 早速明日からトレーニングルームで動きの確認だな。付与魔術を使ってもらうと、いつもと感覚が変わるから早めに慣れとかねーといけないからな」


 僕達は、お互いの得意魔術を元に戦術の検討をして、おおよその方針が定まった。後は明日から動きの確認をして、精度を上げていくだけだな。


 ソフィーとも自然に話ができているし、切り替えて集中しないといけない。1ヶ月しかないので効率的にやらないとすぐに本番だし。



 と、そこで、オルフィス副生徒会長がこちらに向かってくるのが見えた。



「おや、今年の1年の代表は君達だったね。施設見学の時にも行ったけど、ここ数年はサラザーヴァは低迷気味でね…。君達に期待している先輩は多いから、プレッシャーだろうけど、頑張ってね。もちろん、僕達も今年こそはビリを脱却するように頑張るよ!」


「はい! 1年生の対抗戦ではオレ達が優勝するので、安心してください!!」


 ウィルがオルフィス副生徒会長に優勝の宣言をした。流石にそこまで行けるか分からないけど、確かに優勝は目指したい。


 学年別対抗戦は各国の貴賓も来ると聞いているので、ここでアピールできれば卒業後に騎士団に入りやすくなるはずだし。


「ははは。それは頼もしいな。困ったことがあれば遠慮なく相談してくれ。先輩として君達が心置きなく実力を発揮できるようにサポートしていくつもりだよ」


「ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」


 僕はオルフィス副生徒会長に対して返事をした。


「うん。それじゃあまたね」


 それだけ言うと、オルフィス副生徒会長は他の先輩達がいるテーブルに向かって歩いて行った。恐らく、あれが今年の4年生の代表なのだろう。



「オルフィス副生徒会長に優勝するって宣言もしたし、気合入れて頑張ろうぜ!!」


「そうね。明日もあるし、今日はここまでにしましょう。あたしとソフィーは部屋も同じだし、これで帰るわね。ソフィー行きましょ」


「うん、じゃあギルくんもウィルくんもおやすみなさい。また明日から頑張ろうね」



 どうもソフィーとリリーは相部屋だったようだ。


 僕とウィルも相部屋だし、代表に選んだ生徒は固めているんだろうな。人見知りな僕にはありがたい配慮だ…。


「うん。二人もゆっくり身体を休めてね。それじゃあ、おやすみ」


「じゃあまた明日な!」



 僕達は分かれて、自分たちの部屋に向かった。


 さあ、まずは明日から1か月後の学年別対抗戦に向けて頑張るとしますか!



お読みくださってありがとうございます。


だいぶ主要人物が出そろってきました。

もうちょっといますが、第一章は大体このメンバーでストーリーを進行していく予定です。



相変わらず拙い文章ですが引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。


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