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1-3 入学式

 

 その後、案内人の女性と後から来た二人の男性職員に手伝ってもらい、部屋まで荷物を運ぶことができた。


 そして、その三人は僕に17時に本棟の大広間に行くまでは自由時間だと言い残した後、足早に去って行った。


 恐らく僕と同じように他の新入生の案内や手伝いに行ったのだろう。


 部屋は相部屋になっていて、少し広めの作りになっている。目測だけど、幅4m、奥行きは6mくらいあると思う。


 入口を入ると左右に割と大きいタンスがあって、奥の方にベッド、その間に机が壁沿いに配置されている。


 寮と聞いたので、もっと狭い部屋を想像していたけど、これだけ広ければ余裕を持って生活できそうだな。


 相部屋なのでもう一人住人が居るのだが、そのもう一人は、荷物はあるのに部屋にはいないので、どこかで時間を潰しているのだと思う。


 17時まではまだ3時間以上あるので、魔力操作の練習でもしながら時間を潰そうかな。




 *****



 1時間くらい経ったころに、部屋の扉が開いた。


 入って来た人物は、実はよく知っている男で、ウィルソン・ダンヴァルガンという。僕は「ウィル」と呼んでいる。


 ハウゼル王国の最も東に位置するダンヴァルガン辺境伯家の四男で、歳が同じこともあり、洗礼式後からちょくちょく会っていて、魔術なしの武術の組合ではこいつから1本も取れたことがないくらい強い。


 まぁ魔術では負けないけどね。



 向こうは僕が相方だと知らなかったらしく驚いた顔をしている。


「おいおい、相方ってギルだったのかよ!」


「そうだよ。知った仲だから今更だけど、これから宜しくね」


「おう! こりゃ、これからの生活が楽しみだな」


 ウィルは人懐っこい笑顔で答えてくれる。


「そうだな。僕もウィルが相方でよかったよ。僕って結構人見知りだからね。ははは」


「確かに、オレ達が初めて会ったときも、お前は親の後ろに隠れてたな。女かよって思ったよ!」


「それは忘れてくれ…」



 久しぶりに会う友人とお互いの近況を話している内に、時間は16時半前になっていた。


「そろそろ、時間だね。本棟の大広間に行こうか」


「そうだな。本棟まで割と距離があるし、そろそろ行くか!」


 僕達は既に制服に着替えていて、持っていくものは特にないと言われているので、身一つで本棟の大広間に向かって歩き出した。


 廊下では同級生達が同じように大広間に向かっている。これからこのみんなと切磋琢磨すると思うとワクワクするな。



 大広間に着くと、入り口で案内人の女性がそれぞれの生徒に座る席の場所を連絡している。


「ギルバート・ウォリスとウィルソン・ダンヴァルガンです。どこに座ればいいでしょうか?」


「ギルバート・ウォリス様とウィルソン・ダンヴァルガン様ですね。席はあちらのテーブルの前から3番目の席になります。席に名札が置いているので確認してから座ってください」


「分かりました。ありがとうございます」


 テーブルはかなり大きく長いものが4つ並んでいて、案内されたのは一番左のテーブルだった。4つあるのは、寮ごとに座るためだと思う。


 その4つ並んでいるテーブルのさらに奥に、こちらを向いて座れるような長いテーブルがある。恐らく、あそこに教師陣が座るのだろう。


 テーブルにはすでに何人かの生徒がすでに座っていて、1年生が前の方にいるようだ。入学式だからだろうな。




 *****



 席に座って少し経つと、ぞろぞろと席が埋まった。教員も含め全員が座ったところで、教員席の真ん中にいる髭を生やした貫禄のある60代くらいの人物が立ち上がった。


「今宵、新たな生徒を迎えられることを心から嬉しく思う。儂はこのセントリア魔術学園の学園長セルオウス・フリンティアじゃ」


 セルオウス・フリンティア、この名前は恐らく1年生と言えど、確実にみんなが知っているだろう。


 それだけの有名人で、セントリア聖王国のフリンティア公爵家の次男で、光と闇という非常に稀有な組み合わせの適正を持っており、しかも適性はないが他のすべての属性を人並み以上に使えるという規格外な存在だと聞いたことがある。


 しかも魔法の腕は宮廷魔術師団長クラスという、この世界のトップクラスの実力を持っているはずだ。


「この学園には、6つの国から多くの入学希望者がいる中で毎年100人の中に選ばれた優秀な生徒達が集まっておる。この学園は、その将来有望な若者が切磋琢磨しながら、この世界に必要な人材に育っていくことを目的に創設されているわけじゃが、武術や魔術はもちろん、この世界の歴史や、各国の情勢、魔物の生態、薬草学に経済学など、多種多様なことを学ぶことができる。また、各国から生徒が集っているので、この学園にいる間に交流し、お互いの文化や思想などを学べる貴重な環境じゃ。皆、よく励むのじゃぞ」


 学園長セルオウスの話が終わってから、1年生の担任が発表された。担任はアルメリア・エレインというドワーフの女性で、髪はピンクのショートヘアで瞳は黄土色、身長は140㎝とドワーフらしく小柄だった。


 そのアルメリア先生は威厳を出そうとしているのか、無い胸を張って生徒達を見渡している。


「私が、1年生を担当することになったアルメリア・エレインよ! チビだからってバカにしたヤツは半殺しにするからそのつもりでねっ!!」


 ニッコリと可愛らしい顔で微笑みながら恐ろしいことを言う女性だった! ウィルと目が合ったので、お互い気を付けようと目配せをした…。



 他の学年の担任の紹介と、すべての教員を簡単に紹介し終わった後、生徒会長の女性からの激励の挨拶があり、最後に1年生代表の挨拶があると言われた。


 前に出てきたのはノーマンダスという寮の女生徒らしい。その女の子は金髪のツインテールで瞳の色も金色、身長は135cmくらいと小柄なのでドワーフだと思う。


「1年生代表としてご挨拶をさせて頂くことになりました、クロエ・ドリリアです」


 …これは驚いたな。クロエ・ドリリアは確かドリリア国の第三王女のはずだ。あまり情報はないけど、非凡な魔術の才能を持っていると聞いたことがある。まさか同い年で、しかも同級生になるとは…。


 クロエは生徒を見渡しながら話を進めた。


「この学園は、国や身分で差別しない公平な環境と聞いています。ただ、私はこの学園に遊びに来たわけではありません。優秀な教員から知識や技術を学び、各国の実力のある生徒達と切磋琢磨しながら、卓越した実力を身に着けて国に帰るつもりでこの学園に来ました。皆様もそれぞれ思いを秘めこの学園に集ったはずです。共に目標に向かって頑張っていきましょう。最後に、先生方と先輩方、いろいろご迷惑をおかけすることになりますが、これから宜しくお願い致します」


 クロエが深い礼をした後、会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響いた。


 そして拍手の音が小さくなって来たところで、再びセルオウス学園長が立ち上がり、場を鎮める。


「さて、一通り紹介と挨拶も終わったところで晩餐としようかの。今夜は入学式なので、学園のシェフが特別に豪勢に作ってくれたんじゃよ。全員が集うのもあまりない機会なので、より良い交流の機会となることを願っておる。…ほいっ」


 セルオウス学園長が小さい声で魔術を使った瞬間、目の前に料理が表れた。転移魔術だ…。


 転移魔術は空属性の魔術で、あまりにも高度で使える人がほとんどいないはずなので、初めて見る1年生はみんな絶句している。


「では、至高の時間を」


 その言葉を言われてから、先輩達が談笑しながら食べ始めたので、1年生も料理に手を伸ばし出した。僕もウィルも料理を口にしたが、あまりの美味しさに愕然とした。


 こんなの伯爵領でもほとんど食べた記憶がないな。




 …ただ、その後の記憶はほとんどない。


 どうやって自分の部屋に戻ったかも覚えていない…。



 何気なく他の1年生の様子を見ていると、ある女生徒が目から離れなくなった。銀髪のロングヘアーで、瞳は綺麗な青色のおとなしそうな女の子だった。



 その女の子を見た瞬間の衝撃は永遠に忘れないだろう。


 魂が底の方から歓喜しているのを感じる。


 現世でここまで心を揺るがせたことは皆無だ。強力な魔物から命からがら逃げだした時も、魔族達との戦争の様子を見た時もここまでの衝撃ではなかった。


 そして、あの夢の最後の瞬間が脳裏に鮮明に焼き付いて離れない。


 僕は確信した。



 あそこの女の子が前世で死に別れた妹だと…。




お読みくださってありがとうございます。


章タイトルが再会ですが、まだまだ全然終わりません。

まだ妹を見つけただけなので!


相変わらず拙い文章ですが引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。


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