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2-10 生徒会のもう一つの活動

 

 一世一代の告白が無事に成功した後、折角だから一緒に夕食を食べようという事になった。


 ウィルとリリーも誘ったけど、「後はお二人でごゆっくり~」とか言って二人は去って行った。……そんなに気を使わなくてもいいのに。


「え、えっと、じゃあ行こうか?」


「う、うん」


 僕の言葉を受けてソフィーが返事をするけど、凄く顔が赤い。何だか僕も恥ずかしくなるな。




 そして、寮棟の食堂の奥の方に二人で座って夕食を食べている。


 まずいぞ、冷静になると急に恥ずかしくなってきた。だって先程の告白、万が一「前世の兄とは付き合えません」とか言われる可能性もあった訳で……。


 結局、杞憂なんだけど、それでもよく考えると前世の妹と付き合うってどう接すればいいか分からなくなってきてしまった。


「今日はありがとね」


 そんなことを考えていると、ソフィーが微笑みながらお礼を言って来てくれた。もう涙の跡もなくスッキリした顔だ。


「いや、こちらこそ楽しかったよ。ちゃんとサプライズも成功したしね」


「う、あれは反則だよ~。本当にビックリしたんだから。……でも、凄く嬉しかったよ」


「ははは。僕もいい返事が聞けて良かったよ。最後は雰囲気ぶち壊されちゃったけどね」


「ふふふ。本当ね」


 僕達は先程の最後のやり取りを思い出しながら笑い合った。



「……そう言えば、ギルくんは私たちの前世の最後の瞬間って覚えてる?」


 ソフィーが突然、そんな事を言ってきた。


「もちろん覚えているさ。あまり思い出したい記憶ではないけどね」


「うん、それは私も同じ。でも、最後の最後に言った言葉、私は本気だったんだよ?」


「ん? それってどういう……」


 何だ? どういう事だろう? 最後の言葉って……。


「もう! ちゃんと覚えてないじゃない。 ……『大好きだよ』って言葉!」


「えっ、あ、あぁ、もちろん覚えているよ。でもあれは兄妹としてということだろう?」


 僕の返事を受けてソフィーは絶句している。え、何で?


「もうギルくんなんて知らない!」


 そう言うと、ソフィーはプイッと頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。うーん、どうやら機嫌を損ねてしまったようだ……。


「す、すまないソフィー。前世でも現世でも君は僕にとって特別な存在だよ。だから機嫌を直しておくれ」


 僕が苦しい言い訳をしながら謝ると、ソフィーはそっぽを向いたまま、目だけこちらに向けて、ジト目をしている。うっ、どうしよう……。


「ふふっ、冗談だよ。何だかいつもしっかりしてるギルくんがこんなに慌てるなんておかしい」


 そう言うと、ソフィーはこちらを向き、怒る前の様にニッコリと笑いながら「してやったり」という得意げな顔になった。


 うん、どうやら僕は彼女には勝てないようだ……。


「お、驚かさないでくれ」


「ふふふ。でも『大好き』っていう言葉は本当よ」


「ありがとう。僕もソフィーの事が大好きだよ」


 そんな甘いやり取りをしながら夕食の時間は終わりを告げる。




「今日は本当にありがとうございました。不束者ですがこれからも宜しくお願いします」


 ソフィーは別れ際にそう言いながら頭を下げて礼をして来た。


「顔を上げてくれ。僕もまだまだ至らないけど、きっと君を守って見せるよ。僕の方こそ、これからも宜しく頼む」


 そう答えるとソフィーは顔を上げていつもの様にニッコリと微笑みながら「はい」と答えてくれた。


 その笑顔を見ながら、僕はソフィーを絶対に幸せにしようと決意を新たにした。




 ******



 寮に帰ってからは想像していた通り、ウィルからずっと茶化され続けた。そして、翌日ソフィー達と会った時は、やっぱりリリーもニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらやって来るし、隣のソフィーは苦笑していた。


 まぁ、分かっていたから気にしたら負けだ、と自分に言い聞かせながらこの羞恥心に必死に耐え続けた。


 それはソフィーも同じだったようで、講義の最中に目が合うたびにお互い苦笑しながら気持ちを分かち合っていた。


 まぁこんなやり取りができるのも嬉しいので、何も後悔なんてしていないんだけどね。



 そうして、講義が終わり、お互いに課外活動に向けて別れた。


 ソフィーと一緒に居たい思いはあるけど、それはそれ、これはこれな訳で、課外活動は一片も力を抜くつもりはない。


 先ほどの講義は専門科目でユリアだけ一緒だったので、ユリアと生徒会室に向けて歩いて行く。


「そう言えば、ユリアが言っていたスイーツカフェに行ってみたぞ」


「ホントですか~。どうでしたか~?」


 ユリアは相変らずおっとりとした感じで返事をしてくる。


「確かにあれは美味かったな。甘いものが苦手な友人は辛そうだったけど、一緒に行った女の子達には大好評だったよ」


「そうですよね~。私も友人達とまた行こうと話しているんですよ~」



 そうして、会話している内に生徒会室に到着した。


 ガラガラと扉を開けると、そこには黒髪ショートヘアに猫耳を生やしている小柄なミア先輩がいた。今日の講義は割と早く終わったんだけどな……。


「こんにちは、ミア先輩。相変わらず早いですね」


「あら、こんにちは。……ふふふ、私はなんでも一番が好きなの!」


 ミア先輩は手を腰に当てて元気よく答える。なんか、この感じ、アルメリア先生と被る所があるな……。



 その後、続々と生徒会の生徒達が集まってきた。


「さて、皆、ここ最近は通常の業務に加えて次のイベントの準備もあったから大忙しだったけど、少し余裕が出来て来たね。という事で、今日から特訓活動を再開しようと思う」


 オルフィス副生徒会長が皆を見渡しながら言葉を発した。ん? 特訓活動ってなんだ?


「ごめんごめん、1年生は知らないよね。僕達生徒会は全生徒の模範にならなければならない。それは分かっているね?」


 僕達はオルフィス副生徒会長の言葉に頷いて答える。


「うん、分かっていれば宜しい。で、当然事務作業ばかりやっていたら他の課外活動をしている生徒達に置いて行かれてしまう。それでは生徒会の面目丸つぶれさ」


「では私達も体を鍛えたりするということでしょうか?」


 オルフィス副生徒会長の言葉に対してレイが質問をする。


「その通り、でも闇雲にはやらない。君達も分かっていると思うけど、ここ生徒会に集っている生徒はその学年を代表する生徒ばかりさ。つまり、トップレベルの学生同士で得意なことを教え合ったり、代々続く生徒会の特訓メニューをこなしたりするのさ。そうすることで劇的にレベルアップできるという事なんだ」


「な、なるほど」


 レイの答えは僕も同じ思いだ。生徒会に入ってから疑問だったんだよね。だって、ここに居る先輩達は皆途轍もない実力者ばかりだけど、毎日事務作業をこなしていてあそこまで強くなれる物なのか、とね。


「まぁ、まずはやってみないと分からないよね。今日は君達1年生の魔力操作の実力を見せて貰おうかな」


 オルフィス副生徒会長がそう言ってから、僕達は魔力を動かしてみたり、魔術の発動手前まで魔力を練ってみたりと言われたことをやってみた。なんか、皆に見られながらやると恥ずかしいな……。


「うんうん、魔力操作はギルが一番上手だね。でもまだ魔力を練る速度に課題があるかな。ちょうど、魔術の展開速度なら書記長のエリザが一番だから後で教えて貰うといい」


「はい、オルフィス副生徒会長、ありがとうございます。すみません、エリザ先輩よろしくお願いします」


「はい。私は手加減できませんが」


「お、お手柔らかに……」


 エリザ先輩は相変らず目が笑っていない笑顔で答えてくれる。ちょっとこれからの時間が怖いな……。


「ははは。エリザは教え方もうまいから安心するといいよ。さて、他の3人だけど、皆まだ粗削りな感じだね。特にクロエは魔力の練り方に無駄が多いかな。君達には僕とアリスが付いて教えようか。さて、他の皆はいつもの様に各自特訓に励んでくれ」


「「「「「はい」」」」」



 そう言って、それぞれの特訓の時間になった。


 僕はエリザ先輩に魔力を練る速度を上げるコツや練習方法を手取り足取り教えて貰った。


 その教え方は凄く丁寧で、オルフィス副生徒会長が言ったようにとても上手な教え方だったから、今後自分の訓練に取り入れて行こうと思う。


 ……ただ、終始アリス生徒会長に変な気を起こすな、と何度も何度もあの目が笑っていない笑顔で言われ続けるのには参ってしまった。


 僕にはソフィーが居るからそんなことには絶対にならない自信があるんだけど、エリザ先輩はアリス生徒会長への想いが強すぎて何を言っても聞き入れてくれない……。


 最後はそのアリス生徒会長に取り成してもらったけど、エリザ先輩に信頼されるようになるにはまだまだ時間が掛かりそうだ……。



お読み下さってありがとうございます。


今日は少し早めに書き終わったのでもう投稿してしまいます。


これから次のイベントに向けて物語は動いて行く予定です。

やっとかよ!って感じですよね。

物語の進行が遅くて申し訳ないです。

もう少ししたらプロローグに出て来た人物を登場させる予定ですので、もうしばらく辛抱下さい。



さて、相変わらず拙い文章ですが、引き続き楽しんで頂けると嬉しいです。


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