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2-9 セルシアでの休日 (2)

 

 大神殿に感動しているソフィーに癒された僕はこの世界で再び出会えた奇跡に感謝の祈りを捧げた。


 そして、一通り大神殿を堪能した僕達は昼間で時間があるからという事で、僕とウィルの希望の武器屋に向かって歩いている。


「はぁ、男の子って武器とか見て何が楽しいのかしら?」


 リリーが呆れたように呟いた。


「は~? 格好いい武器とか見たらテンション上がんだろ!?」


「はいはい、分かりましたよ」


「ははは。確かにリリーもソフィーも武器は使わないからな。でも僕達からしたら命を預ける相棒だからね。武器選びにも力が入ってしまうんだよ」


「まぁ、そう言われると仕方ないか~」


「はん! 分かりゃいんだよ!」


「あんたに言われると腹立つわね!」


「ははは」「ふふふ」


 リリーとウィルのやり取りを僕とソフィーは笑って見守る。



 そうして、談笑しながら歩くこと数分。目当ての武器屋が見えて来た。


 この武器屋はオルフィス副生徒会長やレイに聞いて、まず間違いないというお墨付きを貰った武器屋だ。セルシアの中ではあまり大きな武器屋ではないが、職人の腕はこの国有数なんだとか。


 武器屋は少し古びている建物で確かにあまり大きい感じはしない。扉の上にこれまた古びた看板が付いていて、「ダンテの武器屋」と記載されているので、この建物が武器屋であることが分かる始末だ。店主はあまり外観とかに拘らないのかな? 商人気質ではないのは間違いないような気がする。


 僕達はその武器屋の扉を開けて中に入る。


 武器屋の中には所狭しと武器が並べられている。流石に武器屋というだけあって、剣、槍、斧、弓と様々な種類がある。また、剣も両手剣に片手剣、レイピア、短剣と品揃え豊富だ。


「お~、スゲー! どれもしっかり作り込んでる感じがするぜ!」


「感じじゃなくて、しっかり作り込んどるんじゃ!!」


「おっ! なんかすいません……」


「ふん! 分かりゃいいんじゃ!」


 店内の奥から髭をたっぷりと蓄えた小柄な男性が出てきてウィルを叱って来た。


 そう、この気概の強い店主のせいでこの武器屋は大きくなることが出来ないという訳なんだ……。


「ダンテさんですね。友人が失礼をしました。僕はギルバート・ウォリスと言います。オルフィス副生徒会長とレイ・ジラルからの紹介で参りました」


「ほう、オルフィスとレイの知り合いか。それじゃあ無下にはできんな」


 どうやらあの二人はこの店主にとっても重要な顧客の様だ。多分この二人の名前を出さなかったらまともに相手をして貰えなかったんじゃないだろうか……。


「ありがとうございます。少し武器を見せて頂いても?」


「あぁ、構わん! どんなもんを探しとるんじゃ?」


「僕は片手剣を、こっちのウィルソンは槍を使っています」


「ふん! じゃあその辺のを適当に見てみろ」


「ありがとうございます。それでは失礼します」


 僕達は店主のダンテさんの許可を得て、武器を見に行く。


「それにしてもどの武器も見事だな……」


「あぁ、この槍の重心なんて絶妙だぜ」


「ふん、お前ならこっちの槍の方がいいじゃろ」


 ウィルが持っている槍を見ながらダンテさんが別の槍を持ってきた。


「お? スゲー! メチャクチャしっくりくる!」


「ふん、そうじゃろうて」


「ありがとー、おっちゃん。今度ちゃんと金持って来るからその時に買うぜ!」


「誰がおっちゃんじゃ! ふん! まぁよいわい。お前さん達はセントリア魔術学園の生徒じゃろ? この時期じゃと魔物を討伐する行事があったはずじゃから、そいつが無くなる前に来るんじゃぞ。しっかり微調整してやる」


「おぅ! ありがとな!」


 最初は気難しい人かと思ったけど、どうやらかなり面倒見の良さそうな店主だ。


「そう言えば、ダンテさん。この二人に短剣を持たせたいと思っているんですけど、扱いやすいものを見繕って頂けないでしょうか?」


「えっ!? 別にあたし達は武器なんていらないわよ?」


 僕の提案にリリーが遠慮の声を上げる。でも何かあったときに短剣一つでもあるとないとじゃ大違いだ。どうやらこの二人は特に武器も持ってなさそうなので気になっていたので、今日武器屋に来たようなものだしね。


「そうだよ、ギルくん。私達は武器なんて……」


「いや、今後何があるか分からないからね。リリーも魔術が使えない状況にならないとも限らないし、ソフィーなんかは周りに誰も居なくなったときに襲われたら大変だから持っておいて損はないよ。大丈夫、今日ここに来たのはその為だから手持ちはあるよ」


 僕の言葉に二人は戸惑っている。まぁ急に言われてもビックリするか。


「おいっ、こんなのはどうだ?」


 そんな僕達のやり取りをよそにダンテさんはゴソゴソと短剣が置いてある場所から2本の短剣を持ってきた。2本とも女性が持っても違和感がない小ぶりで少し装飾というか綺麗に彫りが入れられている。


 僕はその2本を受け取って確認をする。とても軽くて力のない女性でも問題なく扱えそうだし、服の中に忍ばせることも問題なさそうだ。


「ありがとうございます。これなら問題ないと思います」


「おぅ! そりゃよかった」


 ダンテさんが満足そうに頷いている。


「ということで二人ともこれでどうかな?」


「……い、いいのかな?」


「うん、二人の身を護るものだからできれば受け取ってほしいかな」


「そ、そういう事ならお言葉に甘えるわ」

「あ、ありがとうギルくん」


 僕がニッコリと笑って渡すと、二人ともおっかなびっくり短剣を受け取る。まぁ初めにプレゼントするのが短剣って何だかロマンとかないなと思わなくもないけど、これで万が一の時の安全が買えるのだから我慢してもらおう。


「毎度あり! 今度はお前らの武器を買いに来いよ!」


「おう! またなおっちゃん!」


「だから、誰がおっちゃんだ!」


「ははは。今日はありがとうございました。また来ます」


「おぅ、また来な」


 そう言って「ダンテの武器屋」を後にした。お店を出るときには女性陣の短剣は懐に忍ばせて見えない様になっている。女性陣は申し訳なさそうな、慣れない武器に戸惑っているような何とも言えない表情をしていた。




 ******



 その後は女性陣が行きたがっていたスイーツカフェで軽めの昼食を取ってから、これまた女性陣希望のファッション店巡りをしている。


 スイーツカフェは評判が高いだけあって、とても上品な味でとても満足した。リリーもソフィーもパフェやケーキをいくつか食べていてとても満足そうだった。


 そして、ウィルはそんな二人を恐ろしいものでも見る様に小さいケーキだけ食べて撃沈していた。どうも甘いものは苦手というのは本当の様だった。



 そうそう、以前から女性のファッション店巡りは男性の体力と精神を削ると聞いていたけど、今それを実感している所だよ……。


 僕とウィルは終始、女性陣の着る物に称賛を送り続ける時間を過ごしている。


 それにも拘わらず、結局ほとんど何も買わないってどういうことだ!?


 買ったものと言えば、僕達が唯一見ていない下着だけ。僕達の称賛の時間は一体……。隣ではウィルもげんなりしている。


「いや~! 楽しかったわ!」


 やっと満足したのか、何件目か分からない服のお店を出たリリーが満面の笑みで言った。隣ではソフィーも本当に嬉しそうな顔をしている。


 ……まぁ、この顔を見れたんだから頑張った甲斐はあったかな。


「や、やっと終わった~……」


「何よ! 男なんだからそれくらいでへばらないでよね!?」


「いや~、何か体動かすよりこっちの方がキツイわ……」


 リリーの言葉に対してウィルはボソボソと返事をしている。相当疲れた様だ。


「何言ってんのよ! はい! 元気出しなさい!」


「グェッ」


 リリーがウィルの背中をバシッと叩き、ウィルが噎せている。


 そんなやり取りを見ていたが、ふと横を見るとソフィーがある装飾店を覗き込んでいた。


「ん? 何か気になるものでもあったのかい?」


「ううん、何でもないよ」


「気になるなら見に行こうか」


「でも、二人とも大変じゃない?」


「折角来たんだから、気が済むまで見ないと」


「ありがとう!」


 僕の言葉を受けて、ソフィーが満面の笑みで返事をする。うん、そうやって笑っていると元気になるから本当に問題ないぞ。



 そして、僕達はソフィーが気になっていた装飾店に入った。


 中は高価そうな品が多く並んでいて、ソフィーは入って早々躊躇している様だ。


「外からは何を見ていたんだい?」


「え、えっと、あれを……」


 そう言って指をさした先にあったのは、青い宝石が付いているネックレスだった。


「へー、綺麗なネックレスだね」


「うん、凄く綺麗。……私とギルくんの瞳の色と同じだし……」


 最後の方は聞き取れなかったけど、ソフィーはうっとりとそのネックレスを見つめていた。



 その後、店内をいろいろ見まわってソフィーもリリーも満足した様で外に出たが、だいぶ時間が経っていたようで、太陽も傾きかけている。


「さて、そろそろ帰らないと遅くなるな」


「えぇ、帰りましょうか!」



 僕達は来た時と同じ馬車に乗り込んでセントリア魔術学園に向かって出発した。


 馬車の中では「あれが美味しかった」「これが楽しかった」という会話がされていて今日来て良かったと心から思えた。




 そして、セントリア魔術学園に着き、馬車の御者にお礼と料金とは別の追加のチップを渡して僕達は寮の方に向かう。


「ソフィー、この後ちょっといいかい?」


 僕はソフィーに向かって囁くように尋ねた。なるべくあの二人には聞かれたくないしね……。


「う、うん」


「じゃあ、ちょっと付き合ってよ」


 僕はそう言ってから前を歩く二人に声を掛ける。


「ウィル、リリー、すまん、ちょっと僕達は生徒会関係の事で用事があるから先に帰っておいてくれ」


「……へいへい」

「……は~い」


 うん、絶対に気付いてるね。二人とも嫌らしくニヤニヤと笑いながら答えてくる……。 まぁそうは言ってもやることは変わらないけど。


「すまないね。じゃあまた後で」

「ごめんね、またね」


 そう言って僕達はウィル達から離れて本棟の方に向けて歩いて行く。そして、人気のない裏手に回って立ち止まった。


「どうしたのギルくん?」


 ソフィーが首をかしげて聞いてくる。そんなソフィーを見ながら僕の心臓は張り裂けそうに鳴り響いている。うん、やっぱり緊張するな。


「これを受け取ってほしいんだ」


 そう言って、僕は懐から細長い箱を取り出してソフィーに手渡す。


「うん? これは何?」


 ソフィーが箱を受け取り、恐る恐る蓋を開ける。


「っ! これって……」


 そこには、ソフィーが気にしていた青い宝石が付いたネックレスが入っていた。実はあの後、こっそりと買っていたんだ。


「凄く気に入っていたからね。今はこれくらいしか買ってあげられないけど、その内もっとちゃんとしたものを買ってあげるよ」


「え、それって……」


 ソフィーが驚いたような顔をしている。僕も平静を装うのに必死だ!


「うん、ずっと傍にいて欲しい。僕が君を絶対に幸せにしてみせるよ」


「っ! ……う、うん」


 ソフィーは返事をしながら大粒の涙を流している。お互いに同じ想いで良かった……。


「とは言え、親にはこれから言わないといけないんだけどね。まぁあの両親なら許してくれると思うよ」


 僕が照れ隠しにおどけて見せるけど、ソフィーは相変らず涙を流しながら俯いている。


「さぁ、そのネックレスを貸して、着けてあげるよ」


 そう言って、僕はプレゼントしたネックレスをソフィーの首に着けてあげる。ついでに、ソフィーの目元の涙を手で拭ってあげた。


「あ、ありがとう。大切にするね」


 そう言って笑うソフィーの笑顔が眩しすぎて僕は言葉を失ってしまった。



 と、そこで後ろの方からザッという音が聞こえた。


 僕が慌てて振り返るとそこには……。


「い、痛ぇ~」「ちょっと何してんのよ!?」


 重なり合ってこちらを見ているウィルとリリーが居た。


「あははは~、何かごめんね。雰囲気壊しちゃって」

「すまねーなー、陰から見守ってるつもりだったんだけどな~」


 僕とソフィーはお互い見つめ合った後、どちらからともなく笑った。何だか本当に雰囲気が台無しだ。


「ははは。まぁ見られてるかなとは思っていたからあまり気にはしてないよ。と、そういう訳で僕達は付き合う事になったからね」


「いつくっ付くかこっちはもどかしい思いだったーつーの」

「そ~よ、見てられなかったんだから~」


「もう! ウィルくんもリリーちゃんも意地悪なんだから!」



 こうして友人達に祝福されながら僕の一世一代の告白は無事成功した。


 本当に今日はセルシアに行ってよかったな。



お読み下さってありがとうございます。


やっと二人をくっ付けることが出来ました!

あとは親を説得するだけです!



さて、相変わらず拙い文章ですが、引き続き楽しんで頂けると嬉しいです!


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