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2-5 1年生の武術最強 (2)

 

 結局、残る4人はウィル、レイ、リーオンとノーマンダス代表のドワーフの男子生徒になった。


 他の生徒達もこの4人の戦いが見たくて自分の勝負は誰もやっていない。


「おい、お前名前はなんて言うんだよ!」


 ウィルがノーマンダスの男子生徒に話しかけている。どうやらウィルとノーマンダスの男子生徒、レイとリーオンで戦う様だ。


「僕はゼクト。平民だから姓はない」


「へー、平民なのにあんなに凄い瞬雷魔術を使うなんてスゲーじゃねーか。まぁ今回勝つのはオレだけどな。オレはウィルソン・ダンヴァルガンだ。宜しくな!」


「あぁ、宜しく頼む」


 ゼクトは口数少なく答える。そしてウィルとゼクトが向かい合い戦闘態勢に入った。レイとリーオンもこの戦いを見てからやるようだ。まぁどんな動きをするか見ておきたいだろうしね。


「行くぜ!!」


 ウィルが訓練用の槍で一気に攻撃を仕掛ける。相変わらず恐ろしい踏み込みだ……。


 ガキン!と刃と刃がぶつかり合う音が響く。あの早い一撃もゼクトは難なく捌いている。


「はっ! そう来なくっちゃ! どんどん行くぜ!!」


 そう言ってウィルは槍を縦横無尽に振り回している。よくあの距離で槍を使って戦えるなと感心する動きだ。


 対するゼクトは無駄のない動きでウィルの攻撃に対処している。ゼクトが持っている剣は体が小さいからか長さが短めだけど、取り回しがよさそうで、嵐のような攻撃にも難なく対応して見せている。


 レイの流れるような剣術とは違うけど、あれも凄い技術だ。


「やるな! もうちょっと早くするぜ!」


 ただ、ウィルの攻撃はまだ本気ではなかったようで、攻撃の速度が上がっていく。あの重そうな槍が木の棒みたいだ……。


「くっ!」


 そんなウィルの攻撃にゼクトは防戦一方だったけど、速度が上がったことでさらに苦しそうだ。



 と、その時、ゼクトが決死の覚悟でウィルの懐に飛び込んだ。一歩間違えれば吹き飛ばされて終わりだけど、最小限の動きで一気にウィルに肉薄する。


「何っ!?」


「はっ!」


 ゼクトがほぼゼロ距離から短い剣で切りつける。決まったか?


「ぉうりゃ!!」


「なっ!?」


 さ、流石ウィルだ……。あの距離からの攻撃に対して体をグッと捻って躱して、その捻った回転の勢いを殺すことなく、槍をぐるんと回して攻撃に転じる。


「ぐっ!」


 ウィルの横なぎの一撃がゼクトの横腹に当たって吹き飛ばされる。


「いやー、最後のは危なかった! なかなか楽しかったぜ!」


「は~、負けたよ……」


 ウィルが吹き飛ばしたゼクトに手を差し出して立ち上がらせる。



 一方、その試合を見ていたレイとリーオンが動き出した。


「さて、僕達もやろうか」

「おう、いつでもいいぜ!」


 お互いに声を掛け合って戦闘態勢に入る。


 レイは右手に片手剣、左手に盾を持って構えており、対するリーオンは両手にガントレットを装備してボクシングスタイルだ。相変わらずレイは相手の様子を窺うように佇んでいる。


「それじゃあこっちから行くぜ!」


 そういうや否や、リーオンが一気に距離を縮めてレイに殴り掛かる。流石、身体能力測定1位というスピードだ。あれで腕力もあるから受け止めるのも大変そうだな……。


「ははは。凄いスピードとパワーだな!」


 ただ、流石はレイで剣と盾をうまく使って攻撃を受け流している。その後のリーオンの両腕での連撃もレイは難なく捌いて行く。


「くそっ! 分かっちゃいたが、これだけ攻撃を往なされると腹立つな!」


「ふふ。往なすだけじゃないよ!」


 そう言って、レイは隙ありとばかりに剣で迎撃している。その動きは流れる様にスムーズで惚れ惚れしてしまう。


「うぉ!」


 そんな攻撃もリーオンはウィルの様に体を捻って躱す。ホント、こいつらの身体能力はどうなっていることやら……。


「流石の運動神経だけど、どんどん行くよ!」


 ただ、その隙をレイは見逃さずに追撃を掛けている。先ほどまでの受けから一気に攻撃に転じていて、その怒涛の連撃に今度はリーオンが防戦一方になる。


「隙あり!」

「何っ!」


 そして遂にレイが盾でリーオンの両腕を弾き上げて胴体が丸見えになっている。


「ふっ!」

「ぐぁ!」


 その丸見えの胴にレイの横なぎの剣が見事に決まった。そして、リーオンが痛そうにしゃがみ込む。いやいや、あんなに綺麗に入ったんだから少しは吹き飛ぶと思ったんだけど……。


「凄いフィジカルだね。数メートルは吹き飛ばしたと思ったんだけどな」


「……体の丈夫さだけが取り柄だからな。しかし、久しぶりに負けたな」


「ははは。いい勝負だったよ。またやろう」


「おう! 次はその涼しそうな顔を崩してやるよ!」


 二人は固く握手をして再戦を誓っている。そして、レイは何食わぬ顔でウィルの方に向かって歩いて行く。



「やあ、待たせたね。早速始めようか」


「オレは構わねーけど、少しくらい休まなくて大丈夫か?」


「ははは。ありがたい心配だけど、それは無用だよ。騎士はこれくらいでへばったりしないからね」


「はは。違いねー! そんじゃやるか!」


「うん、いつでもいいよ」


 これで1年生の武術最強が決まる。それにしてもウィルはリーオンでも突破できなかったレイの守りをどうやって崩すつもりなんだろうか?


「まさかウィルがここまで凄いとはね」

「うん、ウィルくんに勝ってほしいね」


 お、リリーとソフィーがウィルの応援にこっちに来た。同じサラザーヴァの代表としてはウィルに勝ってほしいもんな。


「あぁ、ウィルには頑張ってもらいたいな。ただ、レイは本当に強いからどうなることやら」


「あっ、始まるわよ!」


 リリーが言うように、ウィルが突きの姿勢になって準備万端だ。対するレイも、いつでも来いとばかりに盾を胸の前に構えて腰を落としている。


 まさに一触即発。


「行くぜ!」


「来い!」


 その言葉でウィルが一気に突きを放つ。……ただ、狙っているのは上半身ではなく下半身! 足を狙って態勢を崩させる気だ。槍のリーチの長さを使っての奇襲だな。


「おりゃ!」


「くっ!」


 ウィルは突きからそのまま横なぎの攻撃に転じる。しかもまた足を狙っていて、レイはたまらず剣を出すが、力任せのウィルの槍を受け流すことができず遂に態勢が崩れた。


 これは早々にウィルが押し通すか!


「もらったー!」


 ウィルはここぞとばかりに素早く突きを放つ。ただ……。


「甘い!」

「なんっ!」


 ガッ!という鈍い音をさせながらウィルの槍とレイの盾がぶつかる。


 あの態勢から何とか左腕を動かして盾で突きを受けた。ちゃんと受けたわけじゃないから少し後ろに飛ばされたけど、これで完全に振出しに戻った。


「流石にやるね。久しぶりに冷や汗をかいたよ」


「くそー、絶対に勝ったと思ったのに~!」


「ははは。同じ手はもう食らわないよ」


 そのレイの言葉通り、ウィルの攻撃はことごとくレイに捌かれて試合は膠着状態になった。


 こうなるとレイの独壇場だな。


 しっかり落ち着いたレイの守りは鉄壁で、少しでも隙が出来る者なら反撃するので、ウィルも攻めきれない状態が続く。


「隙あり!」

「がっ!」


 そして、リーオンの時の様に少しできた隙を突かれてからの怒涛の反撃で遂にレイの一撃がウィルの胴体に決まった。


「いい勝負だったね。今回は肝を冷やしたよ」


 そう言いながらレイがウィルに手を差し伸べる。


「負けたぜ~。でも次はオレが勝つからな!」


「あぁ、またやろう」


 ウィルの言葉にレイは爽やかな笑顔で答える。まさかあのウィルが接近戦で負ける日が来るとは……。世界は広いな。



「1年生の武術で1番だったのはウィルディネアのレイくんね。1年生の試合で久しぶりにレベルの高い試合を見せて貰ったわ!」


 アルメリア先生がいつもの様にニッコリと笑いながら話し出した。


「じゃあ、せっかく1番になったんだし、ウィルディネアには10ポイント上げるわね」


 その言葉を聞いてウィルディネアの生徒達が騒ぎ出す。試験じゃなくてもポイントってもらえるんだね。



 その後、アルメリア先生が今日の武術の終了を告げて解散となった。



お読み下さってありがとうございます。


1年生で接近戦最強はレイでした。

やっぱり片手剣と盾の組み合わせってバランスよくて強いと思うんですよね。



さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。


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