2-3 生徒会1年の交流
生徒会の顔合わせが終わり、オルフィス副生徒会長から1年生は早めに帰っていいと言われた。先輩達はこの後も活動を行うようなので、どうやら生徒会に入った1年生同士で交流を深めたらいいという気遣いの様だ。
生徒会室から出た僕達は今後について話すことになった。
「さて、早く帰っていいと言ってもらったことだし、少し早いけど寮棟の食堂にでも行かないかい?」
レイが爽やかな笑顔で提案してくれる。正直、まだ皆と仲良くなれていないので、こうして引っ張ってもらえるとありがたい。
「そうだね。僕も皆とちゃんと話したことがないからその案に賛成かな」
「えぇ、私もそれでいいですよ~」
「私も別に構わないわ」
僕に続いてユリアとクロエが返事をする。
「それじゃあ行こうか」
レイの先導に従って僕達は寮棟の食堂に向かった。これから4年間も同じ生徒会で一緒にやっていく仲間達がどんな人達か興味が尽きないな。
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「なんか、改めてとなると今更感もあるけど、まずは自己紹介からしようか。僕はウィルディネアのレイ・ジラル。セントリア聖王国のジラル侯爵家の次男さ。僕の父はセントリア聖王国騎士団の副団長をしていてね。その影響で騎士を目指してこの学園に来たという訳なんだ」
レイが改めて自己紹介をしてくれる。ほうほう、レイも騎士になる為に頑張っているんだね。同じ目標に向かう同志を見つけて嬉しくなる。
「レイさんは騎士様になりたいんですね~。凄くお似合いだと思いますよ~。じゃあ次は私が自己紹介しますね~。私はシルファリーのユリア・ウィンダルです~。フォレスティア国のウィンダル子爵家の、こう見えても長女なんですよ~。お母様が昔は冒険者をしていて、他の国のことを沢山聞いて育ったからセントリア魔術学園に来ようと思ったんです~」
ユリアがおっとりとした喋り方で自己紹介をしてくれる。ニッコリと笑うと優しいタレ目と目元の泣き黒子が相まって母性溢れるお姉さんという感じで癒される感じがする。
「へ~、ユリアのお母さんは冒険者をやっていたんだね。僕の家の執事長も昔冒険者をやっていたみたいで、同じようにいろいろな話を聞いたよ」
「そうだったんですね~、ギルバートさんも周りに冒険者の方がおられたんですね~。いろいろな所に行って活動した冒険者の話はとても面白いですよね~」
「そうだな。あ、僕のことはギルでいいよ。それと、この流れだから僕の自己紹介をしようかな。ハウゼル王国のウォリス伯爵家三男のギルバート・ウォリスだ。僕もレイと同じように騎士になりたくてね。折角だからいろいろな国の生徒が集まるこの学園に決めたんだよ。これから宜しく頼む」
「っ!」
僕が皆に笑いかけるとなぜかクロエがビクッと反応した。なぜか怯えられているような気がする……。なぜ? 確かに決勝戦で追い詰めたけど、その後に強烈なサンダーを浴びせてきて完勝してたじゃないか!?
「ん? クロエ、どうしたんだ?」
不思議に思って僕は問いかける。至って冷静を装って聞けた僕を誰かに褒めてもらいたい。
「いや、別になんでもないわ。気にしないで」
「そ、そうか。何か気に障ったなら謝るよ」
「そんなことはないわ。は~、ごめんなさいね、あなたは何も悪くないの。折角の空気を壊してしまって申し訳ないわね。私のことも言っておくわ。名前は知っていると思うけど、クロエ・ドリリアよ。ドリリア王国の第三王女だけど、上に兄と姉が7人もいるからあまり王族として接してもらわなくて構わないわ。この学園にはちょっと訳があって来ることになったのだけど、今はまだ言えないの。その内に皆知ることになると思うわ」
クロエが申し訳なさそうに自己紹介をする。なんかこっちも申し訳ない思いになる。何が悪いか全然分からないけど……。
「ははは。折角こうして生徒会で一緒に頑張ることになったんだ。皆、仲良くしようじゃないか」
「そうですよ~、皆仲良くですぅ!」
クロエの自己紹介の後、レイとユリアが場を盛り上げてくれる。
その後、お互いの事や今後の活動のことなどをいろいろ話して解散になった。あれ以降、クロエは怯えた様子を見せず、普通に接することが出来た。
本当に何だったんだろうか……?
*****
「いや~、セントリア流槍術部はスゲーとこだったわ! 先輩達、マジでつえ―の何のって。いろいろ参考になることも多いし、行ってよかったわ~。そういや、ギルは生徒会どうだったんだ?」
寮の部屋に帰ってしばらくするとウィルが帰ってきて、開口一番にセントリア流槍術部についての感想を言ってきた。
「いい所に入れて良かったな。生徒会の方は、今日は顔合わせだったな。早めに終わったから1年生同士で食事を食べながらいろいろ交流してきたよ」
「マジか!? ってか、生徒会の1年って誰がいるんだ?」
「生徒会の1年は僕の他は3人で、ウィルディネアからはレイ、ノーマンダスからはクロエ、シルファリーからはユリアっていうエルフの女の子だったよ。レイとクロエは分かるだろ? ユリアは学年別対抗戦で風魔術を使ってた女の子2人のうちの一人で、少し小柄な子だよ」
「あ~、なんか分かるような?」
「ははは。まぁそれはしょうがないかな。シルファリーとは直接戦っていないしね。そういえば、ウィルも自治団体に兼務で所属しようかとか言ってなかったかい?」
「おぅ、それなっ! 先輩に聞いたら武術委員会に行ってるらしいから、オレもそこに兼務で入ることにしたんだよ。つっても兼務だとあんましやる事ないらしいけどな!」
ほうほう、ウィルは武術委員会と。てっきり、リリーと同じ風紀委員会に行くかと思ったけど、皆バラバラになったな。まぁそれもありかな。
その後、ウィルが入ったセントリア流槍術部の凄さについて熱く語られて少し疲れてしまった……。その熱意を是非明日の講義にぶつけて欲しいものだ。
そのことを言うと、ウィルの熱は一気に冷めて、寝るための準備を始めるものだから笑ってしまう。
さて、僕も明日に向けてしっかり休もうか。
お読みくださってありがとうございます。
すいません、今日は少し短いです。
第二章の執着地点は考えてるんですけど、そこに行くまでのあれこれは毎日頭を悩ませている日々です。
どんどん面白い話を考える作者さんって凄いな―と改めて感じています。
さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。




