2-2 生徒会
すみません、遅くなりました。
昼食が終わり、午後の講義を受けた。やっぱりウィルとリリーは睡魔と戦っていて、それをソフィーと笑いながら見ていた。まぁ貴族なら皆知っているであろう各国の歴史の導入編じゃ仕方ないかな。
「くそッ、今度こそちゃんと聞こうと思ったのに!」
「えぇ、不覚を取ったわ……」
全く、この二人は相変わらずだな……。
「もう、ちゃんと頑張ってよね!」
「……えぇ、善処するわ」
ソフィーが二人を窘める。
「そうだぞ、代表としてしっかりしないとな。さて、じゃあ今日から課外活動に行こうか。僕はこれから生徒会に向かおうと思うよ」
「おぅ! じゃあオレはセントリア流槍術部に行くぜ!」
「えぇ、あたし達は風紀委員会と保健委員会に向かうわ」
そう言って、皆席を立ち上がった。
*****
その後、僕達は別々の場所に向かうことになった。生徒会は、ここ本棟の最上階である5階にあるはずなので、僕は階段を上っていく。
と、その途中でアルメリア先生とばったりと会った。
「あら? あなたはギルバートくんじゃない。こんな所でどうしたの?」
アルメリア先生は可愛らしく首をかかげながら質問してくる。そう言えばアルメリア先生と1対1で話すのは初めてかもしれない。
「こんにちは、アルメリア先生。実はオルフィス副生徒会長から生徒会に誘われていまして、学年別対抗戦も終わったので、今日から参加させて頂こうと思って向かっているところです」
「へ~、そうだったのね。オルフィスくんも見る目があるわね。いいんじゃないかしら? あなたは代表に選ばれる実力もあるし、講義の受講態度もとても真面目で教師陣からも評判良いわよ」
「そう言って頂けるとありがたいです。生徒の模範となれるように頑張ろうと思います」
「えぇ、頑張ってね。応援しているわ」
「はい。ありがとうございます」
アルメリア先生がニッコリと笑って激励してくれるので、それに応えて別れた。なんか、アルメリア先生って凄く可愛らしく外見をしているから教師っぽくなくて変な感じだ。
その後、事前にオルフィス副生徒会長に教えて貰っていた生徒会に向かって行くと、ある一室のドア付近に「生徒会」と記載されている札を見つけた。
「ここか……」
ちょっと緊張するので、深呼吸をしてからノックをした。
「どうぞ~」
中からオルフィス副生徒会長の声が聞こえてきて少し安心した。何度も言うけど、僕は基本的にビビりなんだよ……。
「失礼します」
一声掛けてドアを開ける。
部屋の中は中央に大きめのテーブルがあり、ここでいろいろ議論するのだろうことが分かる。他にも壁際に本棚や作業用と思われる机と椅子などが綺麗に整頓された状態で配置されている。
「やぁ、ギルバートくん、ようこそ生徒会へ!」
中央のテーブルにアリス生徒会長を筆頭にオルフィス副生徒会長や3年生のウィルディネアを優勝に導いた女のエルフの先輩やその他先輩達。1年生はクロエとウィルディネアのレイ、後はシルファリーの後衛で魔術を放っていたエルフの女の子が座っていた。
「遅くなってしまいすみません。本日からお世話になりますサラザーヴァの1年、ギルバート・ウォリスです。どうぞよろしくお願いします」
僕は挨拶をしてから礼をして部屋に入る。
「いやいや、全く構わないよ。さぁ座ってくれ」
「はい、失礼します」
オルフィス副生徒会長に促されて、1年生達の横の空いている席に座った。
「それじゃあ全員揃った所で、自己紹介でもしようか。僕の事は知っていると思うけど一応ね。僕はハウゼル王国のオルフィス・ヴァーグナーで副生徒会長さ。サラザーヴァの班長も兼任しているよ。生徒会についてだけでなくても遠慮なく聞いてくれ。それじゃあ次はアリスにお願いしようかな」
オルフィス副生徒会長がアリス生徒会長に自己紹介を促す。というか、この場を仕切っているのは完全にオルフィス副生徒会長でアリス生徒会長じゃないんだな。
「生徒会長とウィルディネアの班長を兼任しているアリスよ。生徒会長なのだけれど、こういうのは苦手なの。実務はオルフィスくんにいろいろとお願いしているわ」
アリス生徒会長はどこかはにかんだような笑顔で自己紹介をしている。意外だな、もっと冷淡なイメージがあったけど、単純に人前とかが苦手なんだろうな。元が凄く綺麗な顔なので笑顔になると破壊力が凄い……。
「ははは。そういうことで生徒会は僕が仕切らせてもらっているんだ。アリスには生徒の顔としての活動を主にやってもらっているよ。さて、じゃあ次は書記長のエリザにお願いしようかな」
オルフィス副生徒会長が、あの3年のウィルディネアの女のエルフの先輩を指名する。エリザ先輩は水色ショートヘアに瞳は青色のツリ目でクールビューティーな印象だ。
「書記長をしているエリザ・フロストと申します。フォレスティア国から参りまして、アリス様の専属侍女が本職です。アリス様に集る害虫には容赦しませんので、そのつもりで」
エリザ先輩は僕やレイを見ながらニッコリと笑顔を向けるが、目元が全く笑っておらず僕達は恐怖心から固まってしまう。こ、怖い人だな……。
「エリザ」
「はい、アリス様、すみませんでした」
「二人とも、ごめんなさいね。エリザは私の為を思って言ってくれているのだけど、少し真面目過ぎるの。面倒見はいいからいろいろと頼ってくれて問題ないわ」
「「……はい」」
僕とレイは静かに頷き言葉を発した。
その後、他の先輩達の挨拶も一通り終わり、今度は僕達の自己紹介をした。クロエとレイの事は知っていたが、もう一人の1年生は初めてだった。
彼女の名前はユリア・ウィンダル。エルフの国のフォレスティア国から来ておりウィンダル子爵家の長女だそうだ。エルフにしてはおっとりした喋り方が特徴的で、身長は160cmくらいと小柄だが、エルフにしては珍しく制服越しでも分かる豊満な胸をしていて目のやり場に困ってしまった。髪は優しい緑色のロングヘアーで瞳は黄緑のタレ目で泣き黒子がある女の子だった。
そういえば、レイも名前しか知らなかったけど、フルネームはレイ・ジラルと言って、セントリア聖王国のジラル侯爵家の次男だそうだ。どうりで高貴な雰囲気が出ていると思ったよ。
「さて、皆の自己紹介も終わったし生徒会の活動について説明しようかな」
オルフィス副生徒会長が僕達1年生を見ながら説明を始めた。
「皆、もう知っているかもしれないけど、生徒会は武術委員会、芸術委員会、風紀委員会、保健委員会、図書委員会という5つの委員会を統括する組織で、このセントリア魔術学園の生徒達の活動のサポートやイベントの運営を初め、他の学園との外交や広報活動も教師陣と連携を取りながら行っているよ。まぁ言い方は悪いけど、何でもする便利屋みたいな感じかな。アリスや僕の生徒会長、副会長の他に会計、書記、庶務、広報の4つの役職があるんだ。1年生はどこかやりたいことの希望とかあるかな?」
「いえ、特に希望はありません」
オルフィス副生徒会長の問いかけにレイが代表して応えてくれて、僕達も頷く。
「ははは。まぁそれはそうか。まだ具体的な活動も分からないもんね。じゃあ、申し訳ないけど僕の裁量で決めさせてもらおうかな。レイくんが庶務で、ユリアさんが会計、ギルバートくんが書記で、クロエさんに広報をやってもらおうと思う。それで問題ないかな?」
「「「「はい」」」」
僕達はオルフィス副生徒会長の問いに答える。書記か、何となくやることは想像できるけど、書記長があのエリザ先輩ってちょっと身構えてしまうぞ……。
「ありがとう。じゃあ役職も決まったことだし、それぞれ分かれて貰おうかな。僕とアリスはウロウロしているだろうけど気にしないでくれ」
オルフィス副生徒会長の言葉を受けて、それぞれの役職毎に別れる。書記は壁際の机の方に向かう。
書記は3年生のエリザ先輩と2年生の猫耳獣人のミア先輩と僕の3人の様だ。そしてオルフィス副生徒会長もこちらに来ていた。
「先程も申しましたが、書記長をしているエリザです。書記は4年生がいません。4年生は去年までオルフィス副生徒会長が書記をしていたのですが、副生徒会長に就任されたので、私が書記長を行うことになり、人数もあなたを入れて3人で活動することになります。とは言え、あまりに業務量が多くなるとオルフィス副生徒会長に頼ることもありますが……。さて、それは置いておいて、書記の活動は生徒会の会議の記録を取る事はもちろん、他の委員会とやり取りしている書類関連の取りまとめなど多岐に渡ります。詳細は実務を行いながら覚えて行ってください」
「はい、分かりました」
エリザ先輩の説明に僕は頷く。うん、結構ビビってたけど、全く問題なさそうだ。きっとアリス生徒会長に関わる事以外は問題ないんだろうな……。
「うん、書記の仕事は僕も分かるからいろいろ手伝っているんだよ。エリザも3年生で書記長になって大変だろうしね」
オルフィス副生徒会長が先ほどのエリザ先輩の説明に対して発言をする。
その後、簡単に仕事の話をしてからは何気ない雑談や今後についての業務連絡などして解散となった。
凄く緊張したけど、皆良い人そうで安心したよ。エリザ先輩についてはアリス先輩に茶々を入れなければ至って安全であることが分かった。というか、見た目は怖いけど、アリス生徒会長が言っていた様に面倒見は良さそうで本当にホッとしたな。
さて、これからこの生徒会でアリス生徒会長達と一緒に頑張って行こうかな。
お読みくださってありがとうございます。
人がどんどん増えてきて申し訳ないです。
もっと少数で進行する予定だったのですが、気付けばこんなことに……。
さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。




