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2-1 課外活動


 学年別対抗戦が終わってから数日が経った。あの時の熱気が嘘のように平穏な日常が過ぎていく。


 いや、平穏というのは僕に限っては当てはまらないな。


 結局、あの夜、ソフィーと抱きしめ合ったけど、お互い直ぐに冷静になって離れたんだよね。だけど、一部始終をウィルとリリーに見られてしまったようなんだ。おかげで、ここ数日はその話題で僕の精神をガリガリと削ってくるから困ってしまう…。


 昨日も、「おい、彼女とはどこまで行ったんだよ?」なんてことを言って来る始末だ。断じて何もないと宣言させてもらったさ!


 それはソフィーも同じようで、会うたびに曖昧な笑みを浮かべてくるし、隣のリリーは凄くニヤニヤしてるんだよね。


 いくら三男とは言え、僕は貴族の男子なので、いきなり抱き合うのは順番がおかしい。それが分かっているからどうしたものか頭を抱える日々だ。ただ、ウィルもリリーも周りの生徒に言いふらしている訳ではないので、それだけは助かっている。


 とは言え、それはそれ、これはこれな訳で「ソフィーを守る」という決意は絶対に成し遂げる。そして、その為の努力は惜しまないつもりだ。



 という訳で、僕は今、魔術理論の講義をかつてない程に集中して受けている。もちろん1年生の初めの方の講義なので知っている事ばかりだけど、何か一つでも今の自分の成長に繋がるかもしれないので聞き漏らす訳には行かない。


 ただ、皆がそう思っているはずはない訳で、案の定、ウィルとリリーは現実と夢を行ったり来たりしている。おい、1年の寮代表に選ばれた生徒がそれでいいのか!?


 …まぁそれを見ながらソフィーと笑い合えるので許してやるか。




 *****



 魔術理論の講義が終わり、4人で食事を取る為に本棟の食堂に来ている。それぞれ、注文したメニューを持ってテーブルに座って食事を取る。


「いや~、知ってる内容の講義はキツイな。眠気との戦いが熾烈だわ」


「ホントそれっ! せめて知らない内容なら頑張れるのに…」


 ウィルとリリーが先程の講義について愚痴を言っている。僕はそんな二人が可笑しくて笑ってしまう。


「ははは。ウィルもリリーも見事に眠気に負けてたぞ」


「そうだよ。もう、私達サラザーヴァの1年代表だったんだから頑張らないと!」


 僕もソフィーも二人を諭すように言葉を掛けた。


「いや~、今日も仲が宜しいことで」「ホントね。お似合いの二人だわ」


「「!!」」


 ウィルとリリーが静かに茶々を入れてきて、僕とリリーは真っ赤になって固まってしまう。


「いや~、からかい甲斐があって楽しいぜ」

「えぇ、ホントね」


「もう! ウィルくんもリリーちゃんも変なこと言わないでよ。私たちは別に…」


 ニヤニヤする二人にソフィーが反論するが、負けたように真っ赤になって顔を伏せてしまう。そんな姿も可愛らしいなと思ってしまう。


「そうだぞ。僕達はまだ何ともないから、変にからかわないでくれよ」


「「まだ?」」


「「…」」


 二人の突っ込みに僕達は何も言えなくなってしまう…。



「ふふふ。二人をからかうのは楽しいわね。それはそうと、あんた達は、課外活動は何するか決めたの?」


「あ? 課外活動って先輩達が勧誘してたあれか?」


「そうそう、それよ。いろんな流派の剣術とか新しい魔術を研究するのとかいろいろあったじゃない?」


 リリーが話しているのは、講義が終わってから学生がそれぞれ実施している活動のことで、それぞれ有志を募って生徒会や委員会に団体申請を行うことで活動費を貰って実施しているらしい。


 この1ヶ月間、先輩達が1年生をずっと勧誘していて、多くの1年生が何かしらの活動に参加している。かく言う僕達は学年別対抗戦に向けて特訓していたので、まだどこにも所属していない。


 ただ、とても有意義だと思うし、どこかに所属した方が絶対に自分の為になるのは間違いない。


「そうだな~、まだ決めてね~んだよな」


「うーん、僕もいろいろ魅力的な団体が多くて正直迷っているよ。そう言うリリー達はもう目星は付けているのかい?」


 二人の茶々から回復した僕は逆にリリーに問いかける。


「そうね~、実はあたしは友達経由で自治団体の中の風紀委員会に誘われてて、そこに行こうかと思っているのよね。で、ソフィーはギル次第って感じだから聞いてみたわけ」


「なっ、リリーちゃん!?」


「いーじゃないの? ギルの意見聞いて決めたいんでしょ?」


「う~、それはそうだけど…」


 リリーがニッコリ笑って問いかけ、ソフィーがやっぱり真っ赤になりながら同意を示す。 そうだったのか、お互い考えていることは同じと…。ウィルもニヤニヤ笑いながら僕を見ている。


「は~、降参だな。僕もソフィーがどこにしようとしているかは興味があったんだけど、そう言う事なら僕の考えを言わないといけないな。…実はオルフィス副生徒会長から生徒会に誘われているんだ。まずは書記でどうかとね」


 そうなのだ。オルフィス副生徒会長からは学年別対抗戦が終わってからでいいから返事を聞かせてほしいと言われている。


 ちなみに生徒会は各委員会と連携しながら学園の自治を行う所で、生徒会長、副生徒会長、会計、書記、庶務、広報の役職があるらしい。そして、生徒会長と副生徒会長は一人ずつで他は各学年から1人ないし2人が担当していると聞いた。



「へ~、生徒会ね。ギルなら問題ないんじゃないかしら? それにソフィーもそれなら悪くないんじゃない?」


「ん? どういうことだい?」


 僕は疑問に思ってソフィーに問いかける。


「えーっと、実は私は保健委員会に行こうかなって思ってるから、学園の自治団体なら関わりも深くていいかな~って…」


「なるほど、それはいいんじゃないか?」


 僕はソフィーの意見に全面的に賛成だな。確かにソフィーの回復魔術の腕なら生徒の治療を行うことが多い保健委員会はぴったりだし、ソフィーが言うように自治団体だと関わりも深いから素直に嬉しい。


 この学園の自治団体は、生徒会を中心に、武術委員会、芸術委員会、風紀委員会、保健委員会、図書委員会という5つの委員会がある。教員の数も限られているので、生徒が自分達で運営する体制が整っているという訳だ。



「なんだよ、皆もう決まってんじゃねーか。オレはセントリア流槍術部ってのに興味があるからそこに行こうと思ってるぜ。ってか、皆が自治団体に所属するんならオレも兼務で武術委員会か風紀委員会に所属しよっかな~」


「いいんじゃない? 風紀委員会なら歓迎するわよ」


「おう! 部の先輩に兼務の人がいるだろうから聞いてみるわ」



 こうして、皆の課外活動の所属先を聞けて良かった。この数日間、ソフィーがどこに行くかを気にしてたからからね。


 それにしても意外に皆それぞれ別の団体になりそうだな。それはそれでいろいろ交流の幅が広くなりそうで良いなと感じる。


「まぁ、何はともあれ次の講義をしっかり受けないとな」


「うへー」「はぁ」


 僕の言葉を受けてウィルとリリーが共に溜息を吐いている。本当にこういう所は似てるよな。


「ふふふ」


 ソフィーも同じことを思ったのか、二人を見ながら微笑んでいる。


 さて、課外活動の所属先に目途も経ったことだし、午後からの講義も頑張ろうかな。



お読みくださってありがとうございます。


第二章も本日から本格的にスタートです。

プロローグの二人は結構重要人物ですが、まだ出てこないです。

思わせぶりなプロローグですいません…。



さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。


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