プロローグ 密会
お待たせしました。第2章の開幕です!
日が沈み月明りのみが世界を照らしている中、霧が立ち込める仄暗い町に大きな城が佇んでいる。その城は、屋根は瓦で壁は白い土壁で作られており、日本的な城と似た風貌をしていた。
そんな城のとある一室に、一人の女と一人の男がいる。
女は10代前半頃に見える幼い顔をしているが、濃い紫の長い髪は艶やかで、その佇まいは色気を感じさせる。また、着ている着物は仕立てがよく、この女の身分の高さを表している。
一方、男は50代後半か60代前半くらいの好々爺といった風貌だが、こちらも身分の高そうな服を着ている。
二人とも額には2本の角があり、この二人が人間ではないことが分かる。
そんな二人が蝋燭の明かりのみの薄暗い部屋で座りながら会話をしていた。
「爺や、あの話は聞きんしたかぇ?」
「ははは。姫様、あの話ではこの爺やでも分かりかねますな」
男は女の質問に対してはぐらかすように答えるので、女は拗ねた顔をしている。その表情もどこか品格があり、多くの男性を虜にするかのよう美しかった。
「爺やも人が悪いでありんすね。あの人間の国の話に決まっていんす 」
「これは失敬。して、その人間の国の男がどうしたのですかな?」
「爺やはどう思いんすかぇ?」
男の返答を聞くや否や、女はさらに問い詰める様に質問する。そんな女を男は我が子を慈しむように見つめながら言葉を探している。
「…、正直分かりかねますな。ただ、可能性はあるかと」
「そうでありんしょう? わっち、彼を一目見に行こうと思ってありんす」
女は男の答えに満足したように笑顔で今後の思いを男に告げる。
「そう言うと思っておりました。ただ、殿は間違いなく反対されますよ?」
「もちろん黙って行こうと思っていんす。爺やは付いて来てくれるでありんしょう?」
女の言葉に男は深い深い溜息をついている。ただ、女の言うことが予想出来ていたのか、その顔には全く焦りの色はない。
「姫様を一人で行かせるわけには行きませんな。それに一人だと何日かかるか分かりませんからな。もちろん、この爺やもお供致しましょう」
「そう言ってくれると思っていんした。やっぱり爺やは頼りになりんすぇ」
男の返答に満足したのか、女は機嫌のいい顔で頷いている。そして女は程なくして窓の外に目を向けた。まるで遠くに居る愛しい人を探すように。
そんな女の様子を男は黙って見守っている。
そしていくらか時間が経った頃、男がゆっくりと立ち上がった。
「とは言え、今日はもう遅い。姫様もお休みにならなくては」
「そうでありんすね。今日はもう寝んしょうか」
そう言って、振り返った女の顔は薄っすらとしか見えない月明りに照らされて、とても幻想的だった。
お読みくださってありがとうございます。
遅くなりすみません、今日から第2章を投稿していきます。
数日と言ったのにほぼ1週間休んでしまいすみません。
第2章の構成を考えるのに思ったより時間が掛かってしまいました…。
相変わらず拙い文章ですが引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。




