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1-22 クロエ・ドリリア


 私はクロエ・ドリリア。


 ドリリア王国の第三王女よ。王女とは言っても上に兄と姉が7人もいるから王位継承権の順位はかなり低いけど。しかも私の母は、家柄の影響で側室の中での順位も低いから、私も母も周りからも軽んじられているわ。


 ただ、なぜか父は私をとても可愛がってくれるので、そこまで不満はないわね。


 それはともかく、そんな境遇だからか私を国内での政治に利用しようとする声は皆無。むしろ、取り扱いにとても困っているはず。


 そこで頭を捻った父達が出した答えは外国との関係強化。


 そう、私は14歳にして隣国ハウゼル王国の貴族家に行く事が決まっている。まぁ、この国で蔑まれるよりは外国に行った方が幸せになれる気もするから別にいいのだけれど。


 それは母も同じ思いだったようで、この話を聞いたときはとれも喜んでくれた。ただ、この母を一人この国に残すのだけは心残りね。


 そして、その婚約者が今通っているのがセントリア魔術学園と言う所で、私も今年からそこに行くように言われた。正直、私は会ったこともない婚約者にそんなに興味がないからセントリア魔術学園と言われても、特に何も感じるものはない。


 ただ、王族という事もあってか、入学式では学年代表で挨拶をするようにと言われてしまったので、家族にも婚約者にも恥じをかかせない様にしないといけないわね。



 そうして迎えた入学式では、挨拶もそつなくこなして王族としての務めは果たせた。婚約者も初めて見たけど、遠くからだし、まだ正式に発表した訳じゃないから表立って会う事もできなくて顔を見ただけ。ただ、優しそうでちょっと安心したのは内緒よ。


 私は目立つのが嫌いだから代表挨拶も嫌だったけど、その後の実力測定というものでまた目立ってしまったわ。小さい時から私の魔術の才能は群を抜いていたらしくて、兄妹達が一発撃つと疲れ切ってしまう魔術も何回も撃つことが出来たし、魔術を覚えるのに苦労したりもしなかった。そのせいか、魔術関連の測定では学年で1番になってしまったの。


 同級生達からは心からとは思えない賞賛を受けるし、本当に憂鬱だわ。ただ、ドリリア王国で拾った護衛のゼクトや世話係の女の子のオリビアだけは本当に嬉しそうで、そんな鬱蒼とした気持ちが少しだけ晴れた気がする。


 私は魔術に関しては得意なのだけれど、体を動かすことはあまり得意じゃないから接近されると弱い。このゼクトはそんな私を守るために接近戦の訓練を、それこそ血が滲むくらいに頑張ってくれて今の実力を付けているからとても信頼しているの。1ヶ月後に行われる学年別対抗戦の代表に選ばれたけど、ゼクトも一緒だからとても心強いわ。


 オリビアも同い年だからと付けられた世話係だけれど、家族から鬱陶しがられている私に対して特に態度を変えることなく接してくれる大切な人よ。それが原因で他の使用人から嫌われることを知っているけど、それでも私に尽くしてくれるから私は彼女の事を信頼している。


 この二人が一緒に来てくれているからこの学園での生活も少しは楽しくなると思うの。もちろん、学園を卒業してハウゼル王国に行く時もこの二人は連れて行けるようにお願いするつもり。



 そして、迎えた学年別対抗戦だけど、本当に面倒くさいわ。もし私が王族じゃなかったら絶対に断っていたわね。


 初戦は、打ち合わせ通り、ゼクトが相手の獣人を抑えて、シルとニルという双子の盾使いが他の遠距離攻撃を抑えている間に私が迅雷魔術を放って終了した。さっさと終わってくれて良かったわ。


 ただ、次の日の決勝の相手は霧魔術を使う様だから、同じ様にはいかないはず。多分、あの男子生徒が奇襲か何かを仕掛けてくると思うの。というかそれくらいしか私達に勝てないと思うわ。だって、ゼクトとシルとニルの三人って私でもびっくりするくらい守りが堅いから、向こうの男子生徒二人ではとても抜けて来る気がしない。


 そのことを三人に言ったら、それなら開幕直前から私のすぐ傍で守ってくれることになった。



 そして、迎えた決勝戦。案の定、向こうの男子生徒は開幕直後に霧魔術を使ってきたから、あまりに予想通り過ぎて、少し笑ってしまったわ。だって、あまりにも安直で…。


 私は向こうの生徒達が動く前に迅雷魔術を使って攻撃した。別に速度を重視するくらい私には難しくもなんともない。霧魔術で魔力を練るのを邪魔されている感じがするけど、必要以上に魔力を練ってしまえばどうにかなる。


 そして、一人の女子生徒を倒したから、あと三人ね。霧魔術を使う生徒はこの中でも動き回るだろうから最後に回す。


 恐らく一発目の迅雷魔術で近くに居た女子生徒も影響を受けているから早めに二発目を撃てば、その子も倒せる。


 と思って迅雷魔術を撃ったけど、どうももう一人の男子生徒に邪魔されてしまったらしい。でもその男子生徒を倒せたから全く問題ないけど。


 ただ、女子生徒の位置がよく分からなくなってしまったわ。多分あの辺りだろうから、いつもの迅雷魔術で倒すことにしましょう。


 そう思っていたら、ゼクトがシルとニルの名前を叫ぶのが聞こえた。ちょっと急がないといけなさそうね。


 私は少し急いでサンダーの魔術を使った。威力はいつもより少し弱いだろうけど、女子生徒を倒すのには十分だから問題ない。


 さて、後は一人ね。…と思ったところで背筋が凍るような殺気を感じた。おかしいわ。あの三人に抑えられているからもう奇襲なんてできるはずないのに…。


 そう思い、振り向いた所でゾッとした。


 私のすぐ後ろに霧魔術を使った男子生徒がいたから。なんでここにいるの? 他の三人は?


 急いで避けようとするけど、私の身体能力はそんなに高くないから絶望的ね。


 そう思っていたが、幸運にも相手の男子生徒の手元が狂った様で、背中を浅く切られただけで難を逃れることが出来た。次の瞬間にはゼクトが私の名前を呼んで駆け付けてくれたから退場せずに済んだ。


 その後、シルとニルも追いつき、完全に霧魔術を使った男子生徒を抑え込んでくれている。


 私は背中の痛みに耐えながら魔力を練っていく。ここで仕留めないと、という思いに駆られる。ここまで焦るのは初めてかもしれない。



 そして、魔術の準備が出来て、シルとニルが相手を突き飛ばしたところで迅雷魔術を使って倒した。


 勝った…。結果だけ見れば、こちらは全員残っていて、相手は全員退場なので完全勝利だが、とてもそんな余裕はない。


 だって、運が悪ければ多分負けていたのは私達だから。


 男子生徒が退場になり、霧魔術が晴れて来たところで、アルメリア先生の勝利宣言をしてくれた。


 その後、三人が駆け寄って来てくれたけど、私は小刻みに震えて恐怖していた。勝ったけど、とてもそんな思いにはなれない。怖い、怖いわ…。



 だって、あの背後を取られて慌てて振り向いた先に居たのは”鬼”だったから…。


 そう、瞳の色は赤くなり、額から小さいけど角が生えていたあれは、まさしく鬼だった…。




お読みくださってありがとうございます。


クロエの婚約者とは果たして!?

まぁ結構分かりやすいかなとは思っていますが(笑)


そして、ギルの正体とは!?

これは2章で明かしていくつもりです。



さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。


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