1-18 学年別対抗戦 1年決勝戦 (1)
アリス生徒会長の試合を見て、今年こそはというサラザーヴァの雰囲気が少し暗くなってしまった。まぁ、あんな圧倒的な試合を見てしまうと当然だけど。
「いや~、それにしても凄かったな。オルフィス副生徒会長もアリス生徒会長も別次元っつうか、3つしか歳が違わないのに実力が違い過ぎてマジで焦る。オレ達も頑張んないとな!」
隣のウィルがこの試合で感じた思いを語っている。
「そうだな。今はこんなに実力が違うけど、この学園でしっかり実力を付けて、僕達もそんな風に思われるようにならないとね。まぁまずは明日の決勝戦に集中しないといけないけどね」
「だな! オレなんだか、もう興奮して来ちまったよ!」
そんな会話をしていると、セルオウス学園長を含む教師陣が出て来た。そして、1日目のすべての試合が終了したのでいつもより少し早いが解散だと宣言した。
生徒達は各々の目的地に向かって去っていく。中にはこの場の雰囲気にもう少し浸っていたいと残る生徒もいたが、寮に帰る生徒、勉強すると図書館や魔術の研究室に行く生徒、身体を動かしたいとトレーニングルームに行く生徒、食事に向かう生徒と様々だった。
「ねぇ、あたし達はこれからどうする?」
「そうだな、明日の決勝戦を万全の状態で迎えられるように、少し早いけどこれから食事を取るのはどうかな?」
「そうだな! それでいいと思うぜ!」
「うん、私もそれがいいと思うよ」
皆が賛成してくれたので、食事にしよう。本棟でもよかったが、そういう訳だから早く部屋に帰れるように寮棟の食堂に向かうことになった。
*****
寮棟の食堂に向かうまでの間、サラザーヴァの生徒には先輩、同級生も関係なくいろいろな人に声を掛けられた。その多くの称賛と期待の籠った応援を聞きながら恥ずかしいけど、頑張らないと、と言う気持ちに嫌でもさせられた。
寮の食堂は本棟の食堂程広くはないけど、それでも100人近くは入れるくらいのスペースがある。それぞれの寮から集まれる所なので、既に座って食事を取っている生徒達はサラザーヴァの生徒だけではない。
メニューはやっぱり本棟の食堂程には豊富ではないけど、それでも健康に考慮し、いろいろな国の生徒が満足できるように様々なものがある。
ウィルは相変わらず肉料理を食べていて、ソフィーとリリーは野菜中心の料理を、僕はキノコたっぷりのパスタを食べることにした。
食事中はやはり今日の試合の内容が主になり、あの生徒が凄かったとか、あそこで自分ならこう動くとか、いろいろ話した。当然、僕達の決勝戦についても話したよ。
「じゃあまた明日な!」
「えぇ、あんた興奮して眠れなくなりそうだから、今日は早めに布団に入るのよ?」
「オレはガキか!?」
また、この二人の漫才が始まった。やっぱり仲いいよな。僕とソフィーは顔を合わせて笑い合った。
うん、緊張し過ぎは良くないよね。明日はリラックスした状態で臨めるようにしよう。
「ははは。君達は相変わらず仲がいいな。…それじゃあ、リリーもソフィーもゆっくり休むんだよ」
「えぇ、ギルもね!」
「うん、ギルくんもウィルくんもまた明日ね」
そうして、僕達は別れて明日に備えて早めに休むことにした。
*****
翌日、準備が終わった寮生達がぞろぞろと闘技場に向かって行く。今日の戦いで各寮の順位が決まるから皆興奮している様子だ。かく言う、僕達も昨日は興奮の為か、なかなか寝付けなかったし、朝起きるとまたすぐに興奮状態になってしまった。今は早く試合をしたいという思いが強い。
「あ、おはようギルくん、ウィルくん!」
ソフィーが僕達を見つけて声を掛けてくれた。リリーも一緒に居て手を振っている。
「おぅ! 二人ともおはよう! やっぱなかなか寝付けなかったぜ。でも今はバッチリ最高のコンディションだから安心しな!!」
「二人ともおはよう。調子はどうだい?」
「えぇ、あたしもバッチリよ!」
「うん、よく眠れてスッキリしてるよ」
リリーとソフィーがスッキリした顔で答えている。うん、どうやら僕達は男共より女の子達の方がしっかりしてるね…。
「それは良かった。それじゃあ行こうか」
「えぇ!」「うん!」
お互い挨拶を済ませた僕達は観客席に向かって行った。今日は初めに1年生の3位決定戦だから僕達はまず観客席で観戦だ。
これから戦う選手以外の生徒が観客席に集まって少ししてから、1年生のノーマンダスとシルファリーの生徒達が出て来た。相変わらずゼルグスは相手を見下した顔をしている。
さて、この試合どうなるかな?
やっぱり1年生の主審はアルメリア先生で両選手に声を掛けている。
しばらく経ってから両選手が離れて臨戦態勢に入る。さぁ始まるぞ。
「始め!!」
アルメリア先生の掛け声でそれぞれの生徒が動く。まずシルファリーの獣人の男子生徒が突っ込んでいくが、そこはレイが安定した守備を見せて抑えている。しかもアクアウォールを出してエルフの男子生徒の弓を無効化しながらという鉄壁ぶりだ。
そうこうしている内に、ゼルグスの木魔術ツリーウィップ、ミーナの氷刃魔術アイスジャベリンが発動させ攻撃しようとしている。対する相手のエルフの女生徒は風魔術のエアーカッターという基本の魔術を使っている。この魔術は発動が早く、見えにくい上にいろいろな角度から鋭い風の刃で切り裂くことができる使い道の多い魔術で、案の定、エルフの女子生徒は四方八方からエアーカッターを放っている。
ただ、それは織り込み済みだったようで、ゼルグスは木魔術を盾のようにして自分とミーナを守っている。そして、その隙にミーナの氷刃魔術でエルフの3人に攻撃を仕掛けている。
エルフの3人は賢明に避けているが、突如、一番後ろにいたエルフの女生徒が倒れて退場した。
残りのエルフ2人は困惑しているが、観客席から見ていると一目瞭然。あのグレーの髪の男子生徒がエルフの生徒達はゼルグスとミーナに気を取られている隙に隠密魔術で背後に回っていたのだ。
その一連の連携は見事の一言で、そこからは一方的な展開になった。
残りのエルフ2人は動揺している隙にミーナの氷刃魔術で重症を負い、グレーの髪の男子生徒にトドメを刺されて退場。
残った獣人の男子生徒も4人から攻められれば成す術はなく、あっという間に退場させられていた。
うん、やっぱりウィルディネアの1年生達は強かったね。本当によく勝てたよ…。
会場からは勝利したウィルディネアの1年生を称えて歓声や拍手が途切れなかった。そして、それにゼルグスが満足したように手を挙げて応えている。
その試合を見終えた僕達はいよいよ決勝戦に向けて控え室に向かった。
さっきの試合は確かに凄かったけど、その余韻に浸っている暇はない。僕達はサラザーヴァの代表として、次の決勝戦でノーマンダスの1年生に勝たないといけない。
「よし! 皆絶対に勝とう!!」
「おう!!」「ええ!!」「うん!」
皆で気合を入れる。いよいよ決勝戦だ。この1ヶ月間の特訓の成果を見せて絶対に優勝したい。
そう思いながら決勝戦の会場に向かう。
観客席からはこの2日間で最高の歓声が聞こえてくる。最初の決勝戦だからね。
僕達とノーマンダスの4人はアルメリア先生を挟んで並んでいる。相手を見ると、クロエは全く気負っていない様子で、残り3人の方は緊張が滲み出ている。うん、やっぱりクロエは大物だね。
対する僕達も会場の雰囲気に若干呑まれている感じが否めない。もうこれはしょうがないよね。いざ始まれば何とかなるかと思うしかない。だって前世も含めてこれだけの歓声を聞く機会なんてなかったからね…。
アルメリア先生が一人一人を見渡してニッコリ笑っている。
「皆、決勝戦しっかり頑張ってね! 泣いても笑ってもこれで1位が決まるから悔いの無い様に実力を出し切ることを願ってるわ。それじゃあそろそろ始めるわよ、準備はいい?」
アルメリア先生の言葉に僕達は頷き返す。もう当たって砕けろだ!
「それじゃあいいわね。両チーム下がって!」
その言葉を聞いて、僕達も向こうも一気に距離を取って臨戦態勢になる。そして、僕はゆっくりと深呼吸をする。
凄く時間が長く感じる。もう魔力を練り始めていていつでも行ける。
…
…
…
「始め!!」
その言葉を聞いてから一気に練った魔力を魔術に変換する。そして、打ち合わせた通り、いきなり僕の一番得意な魔術を使う。
「ミスト」
次の瞬間、周りが霧に包まれた。よし、行くぞ!!
僕は一気にクロエに向かって奇襲を掛けに行く。
ただ、僕は霧魔術を掛けた直後のクロエの顔を思い出してゾワリと背筋が冷たくなるのを感じていた。
…そう、霧魔術を掛けた直後、クロエは口を釣り上げてニヤッとしていたから。
お読みくださってありがとうございます。
やっと決勝戦です。
サブタイトルはあたかも決勝戦う感じなのに始まった瞬間終わっちゃってすいません。
明日はバンバン戦う予定です。
あと、もう少ししたらギルとソフィーが急接近する予定なのでこちらももう少しご辛抱下さい。
さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。
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