1-17 学年別対抗戦 頂点
さて、困った…。クロエ達の戦いを見て、決勝でどう戦うかに気が取られ過ぎて2年生の予選にあまり集中できなくて、気付いたら終わってしまっていた。
ただ、クロエのサンダー程の驚きはなかったことは断言できる。
「おーい、ギル! 取り合えずメシ食いに行こうぜ!」
ウィルが昼食に誘ってくれる。うん、ご飯を食べながら皆でディスカッションするか。
「あぁ、じゃあご飯に行こう。そこで今後について話そうか」
「おぅ!」「えぇ」「うん」
皆の返事を聞いて、僕達は食堂に向かった。
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食堂に着いた僕達は、それぞれメニューを注文して、人気の少ない隅っこに移動した。これから決勝の作戦を立てるからあまり目立たない所に行かないとね。
「にしてもありゃヤベーな。あれを撃たれる前に勝負を決めないとゼッテー勝てねーって!」
「うん、敵ながら天晴れだわ。魔術の威力では負けるつもりなかったけど完敗ね…」
「リリーちゃんの魔術も十分凄いけどね…」
3人がクロエの魔術について話している。うん、あれは凄い威力だったからね。ただ、注意すべきはそこだけじゃないんだよな。
「あの迅雷魔術はもちろんだけど、他の3人の守備も厄介だよ。まさに鉄壁だったからね。」
「ホントそうなんだよなー! あのちっこいドワーフの野郎、すげー瞬雷魔術の使い方が上手かったぞ」
「そうなんだ。しかもあの双子の盾使いも相当技量が高かったからね。正攻法であの3人を抜けるのはかなり骨が折れると思う」
「そうよね。ちなみにギルは何か考えがあるの?」
リリーが聞いてくるけど、実は僕の中ではある程度方針が決まっているんだよね。
「うん、皆には悪いんだけど、開幕直後に僕が霧魔術と影魔術でクロエに奇襲を仕掛けるのが一番可能性があると思うんだ。霧魔術は皆の視界も奪うからあんまり開幕からは使いたくなかったんだけど、相手はクロエ以外は守備に徹するから問題ないと思う」
僕の霧魔術は敵味方関係なく視界を悪くしちゃうから団体戦だと使い所が難しいんだよね。下手に使って味方が奇襲なんてされたら本末転倒だし。
その点、相手はクロエだけがアタッカーで、他の3人は守備専門のようだったから、その心配がない。個人的には味方の心配が少ないからありがたい限りだ。
「なるほどね。じゃあ、あたし達はギルが霧魔術を使った後は後ろに下がって様子見しといた方がいいわね」
「あぁ、そうしてくれ。とは言っても相手も僕が霧魔術を使えることは分かっているだろうから、うまく奇襲が決まるかは分からないけどね」
「ギルくんならきっと大丈夫だよ!」
「ありがとう、ソフィー。皆にあの迅雷魔術が来ないように早めに仕留めてみせるよ」
そうして大まかな方針を決めた僕達は昼食を取って、少し休憩してから観客席に戻った。
観客席では午前の戦いについて意見を述べている生徒、午後からの試合に向けて意気込んでいる生徒など様々だ。
僕としてもクロエの事は気になるけど、この学園の3年、4年のレベルを見ておきたい思いが強い。特に4年生のアリス生徒会長とオルフィス副生徒会長の二人は注目している。
その後、3年生の試合があったが、皆レベルが高かった中、特に印象に残ったのは雰囲気がアリス生徒会長に似ているウィルディネアの女の先輩の使った氷影魔術だった。
氷影魔術とは、氷属性の魔術で主に相手の能力を著しく下げる魔術で、ソフィーの使う支援魔術と対をなす魔術だけど、その先輩の使う魔術は圧巻の一言。相手の先輩達の動きが目に見えて鈍くなっていて、その後は一方的だったな。
恐らく、この3年間ウィルディネアが連続で優勝しているのは、アリス生徒会長とあの3年生の女の先輩がいたからだと思う。
ちなみにサラザーヴァの3年生はノーマンダスの3年生に敗れてしまったので、明日の3位決定戦に臨むことになってしまった。
3年生の試合が終わってオルフィス副生徒会長が動き出す。
「さぁ、まず予選をしっかり勝って明日に向けていい流れを作ろうか」
その言葉を受けて他の先輩達が激励の言葉を掛けている。オルフィス副生徒会長以外の3人も準備をし出した。いよいよだな。
「オルフィス副生徒会長、頑張ってください」
「あぁ、ちゃんと勝って来るよ」
僕の言葉を受けて、オルフィス副生徒会長がにこやかに笑いながら自信に満ちた顔をしている。
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4年生の試合は、始めはサラザーヴァとシルファリーが戦うことになっている。
試合開始の合図を主審の先生がしてから一気に試合が動いた。
シルファリーの4年生は皆が攻撃要員のようで、風魔術や弓矢で攻撃を仕掛けている。まるで1年生のシルファリーの生徒のようだなと思ってしまった。もちろん魔術の展開速度も威力も比較にならないんだけどね。
対するサラザーヴァは2人が支援要員でオルフィス副生徒会長を強化していて、残り1人はその支援要員の2人に攻撃が行かないようにブロックしている。
そして、2人から支援を受けたオルフィス副生徒会長は…。うん、よく見えないや。
それくらい素早く動いていて相手の生徒を一人、また一人と脱落させていく。その姿はまさに獅子奮迅の活躍で、これで生徒か、と思ってしまう。もうその辺の騎士なんか相手にならないんじゃないだろうか…。
そして、気付いたら試合が終わっていた。2年生や3年生は見たことがあるから普通に歓声を上げていたけど、1年生達はそろって絶句している。
「こ、これがオルフィス副生徒会長の実力か…」
「あ、あぁ、ありゃすげ~」
僕とウィルが呆然としながら、語彙の少ない会話をしている。ソフィーとリリーも言葉を失っている。
というか、このオルフィス副生徒会長が毎年決勝で負けるアリス生徒会長ってどうなってるんだ?
そんなことを考えているとオルフィス副生徒会長が帰ってきた。
その後、サラザーヴァの生徒達から囲まれてオルフィス副生徒会長が祝福されている。うん、まずは宣言通り1勝したからね。
オルフィス副生徒会長は、まだまだだよ、とか、明日が本番だからね、と受け答えしているけど、闘技場の中央に向かうアリス生徒会長を凝視しているので、相当意識しているのが分かる。
そのアリス生徒会長は王者の風格というのか、全く気負っている様子はなく、悠然と歩いている。そして、美しい容姿も相まって、会場の生徒達の多くが見惚れている。
まさに生徒最強の評判は伊達ではなく、この試合に多くの期待が籠っているのが分かるほど、会場は熱気に包まれ騒然としている。
かく言う僕も、この学園の生徒の頂点がどのくらい凄いのか興味が尽きない。さっきから心臓がバクバクと脈打ち尋常じゃない程に興奮している。
そして、両チームが戦闘態勢に入り、試合が始まった。
ただ、その結果は思っていたものと違っていた。いや、想像の遥か先を行ったと言えばいいのか。
その勝負は本当にすぐ終わった。しかも、ウィルディネアで動いたのはアリス生徒会長ただ一人。氷影魔術で相手の動きを鈍らせて、氷刃魔術でバッサリと切り伏せて終了。
言葉にするとこれだけだけど、よく考えてほしい。相手も4年間この学園で実力を付けて来た猛者達だよ? 恐らく、僕達では勝てないくらいに強いはずだ。
そんな生徒をまるで赤子のように倒してしまったアリス生徒会長が異常なんだよ…。
少し離れたところでオルフィス副生徒会長が眉間にしわを寄せて結果を見守っている様子が見える。
隣のウィルも、ソフィーやリリーも唖然としている。向こうではウィルディネアの生徒達が盛り上がっているけど、とてもそんな気にはなれない。
オルフィス副生徒会長も異常だと思ったけど、アリス生徒会長の実力はそれ以上だった。
しかも、これが本気かどうかも分からない。
こ、これがセントリア魔術学園の生徒達の頂点。
僕は、自分が目指すもののあまりの遠さに気が遠くなるよう思いだった…。
アリスの凄さを文章で書くことの難しさと自分の文章力のなさに絶望しております。
もっとうまく書けるようになったら絶対に修正しようと決意しながら、ひとまずこれで許してくださいと思い投稿しました。
なんとなく雰囲気が伝わると嬉しいなと思っています。
さて、相変わらず拙い文章ですが今後も引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。




