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1-11 爆炎魔術

 

 次の日、朝の準備を終え、ウィルと講義室に行ってソフィー達と合流した。もうこの4人で居ることに違和感はなくなって来たので嬉しい限りだ。



 しばらく雑談をしているとアルメリア先生がやって来て講義が始まった。


「えー、今日は講義初日なので、必須科目の中の魔術理論と世界情勢を午前、午後に分けて行います。ちなみに必須科目は、魔術理論、世界情勢、歴史、武術の4つで、専門科目は、経済学、薬草学、魔物学、礼儀作法などから2つ選んで貰うことになります。どの専門科目を選ぶかは、今日の講義の最後に調査用紙を配るので、各自持ち帰って決めてから明日提出してね」


 なるほど、専門科目は選択制なのか。今日、4人で集まるし、そこで相談して決めようかな。


 などと考えている間にも講義は進んで行っている。


「じゃあ、早速、魔術理論の講義を始めます!! この学園は平民の生徒も多いので、貴族の子達は知っている内容が多いと思うけど、そこは復習だと思って真面目に聞いてね」


 確かに、僕は貴族の子供なので、父も母も魔術が使えるし、セバスは闇属性の魔術のスペシャリストでいろいろ教えて貰っている。


 ただ、魔術は基礎がとても大事なので、きちんと理論の基礎を教えて貰えるのは素直にありがたい。




 アルメリア先生の講義は、いろいろと例も交えてくれたので凄く分かりやすかった。


 簡単に要点をまとめるとこんな感じかな。



 魔術とは、魔力を魔術回路に通して世界に干渉すること。


 魔力の量は才能もあるが、体力と同じで使えば使う程増やすことができる。


 魔力は魔術回路がないと発現しないと言われているが、正確には魔術回路がないと魔力を使うことができないので、観測ができない。


 一人ひとりの魔力には、属性に対する適性があり、その適性が強い程、世界への干渉が強くなる。


 魔術の属性は、基本属性の火、土、水、風、特殊属性の光、闇、そして2つの属性からなる派生属性がある。


 派生属性は、火と土で雷、土と水で木、水と風で氷、風と火で炎、火と水で霧、土と風で砂、光と闇で空となるが、火と水、土と風、光と闇は相性が悪く、これらの適正を持つ人はかなり少なく、分かっていることは少ない。


 なお、霧魔術は鬼人が、砂魔術は不死者が、そして空魔術は魔人がよく使うことが分かっている。



 一方、魔術回路とは、魔力を魔術に変換するもの。


 魔術へ変換する最低の魔力量は決まっており、それ以下の魔力しか抽出できなければ発動しないし、より多くの魔力を抽出して変換すると威力や効果が上がる。


 ただし、魔力を魔術に効果的に変換するには訓練が必要で、初めの頃は必要な魔力量の何倍もの魔力を抽出しないと魔術が発動しない。


 魔術への変換については初心者でも上級者が魔術へ変換する過程を見て、魔力の流れを教えてもらうことで出来るが、よりハイレベルに行うためには使う魔術の理論についての見識を深める必要がある。


 魔術回路の有無は基本的に先天的なものだが、極稀に後天的に魔術回路を得る場合もある。


 後天的に魔術回路が発現する原因は今でも不明で、このセントリア魔術学園でもこの問題を題材に研究している研究室があるとのこと。




 うん、知らないこともあって、とても勉強になった。あっという間に講義が終わったが、集中力が切れたからかどっと疲れたな。


 隣を見ると、講義が終わったことで気が抜けたのかウィルがぐったりしている。ソフィー達も疲れている顔をしているな。


「いやー、オレこういう講義は苦手だわ。やっぱ体動かしたいよな」


「それはあたしも同感! ホントに疲れたー。さぁご飯食べに行くわよ!」


 リリーの言葉を聞いて、一気に空腹感が押し寄せて来たので4人で食堂に向かうことにした。午後は世界情勢で、また座学なので、きちんと栄養取って備えないとね。




 *****



 昼食を取って一休みした後、再び講義室に来た。


 そして、アルメリア先生が教壇に上がったところで、再び講義が始まった。


「さて、午後は世界情勢の講義です! この講義では、各国の情勢や、人族と魔族の戦争についての最近の動向などの話をします」



 今日は初日ということもあり、皆知っていることの復習がメインの話だった。


 まず、人族はここセントリア聖王国を中心に6つの国があり、人間が中心なのがセントリア聖王国と東側のハウゼル王国と北側のザイール連邦国の3国であり、ザイール連邦国はその中で小さい国がいくつか合わさってできている。


 そして、北西側に獣人が中心のヴァイザル王国、南西にエルフ中心のフォレスティア国、南にドワーフ中心のドリリア王国がある。


 さらに北側に行くと、ガルア山脈という巨大な山脈がある。


 そして、このガルア山脈のさらに北に行くと、魔族領になり、魔人、鬼人、竜人、不死者のそれぞれの国がある。


 現在の魔人の王がとても好戦的なようで、魔族の他の国々の王と結託して僕達人族の領土を得ようと南進しているため、ここ数十年は激しい戦争が多いらしい。


 ちなみに、今は少し落ち着いているが、いつ魔族が仕掛けてくるか分からないため、ずっと緊張状態にあるんだとか。


 この魔族との戦争がある為、人族はうまく結託できており、人族同士の戦争なんて全くないし、ここセントリア魔術学園は各国から生徒を募ることができているという背景があるということだった。


 また、この世界には魔力を持った動物がいて、それらは魔物と呼ばれている。


 魔物の生息地はいくつかあるが、ハウゼル王国の近くだとガルア山脈周辺、他にも獣人が中心のヴァイザル王国とエルフ中心のフォレスティア国の周りにあるジュリエ森林などに存在していて、近付くと人族も魔族も関係なく襲ってくるので、人族も魔族もガルア山脈を迂回する形になるということだ。たまに奇襲で山脈を超えてくることもあるらしいが、それなりに消耗してしまうので、割に合わないと思ったのか、今では素直に迂回してくる方が多くなったのだとか。


 冒険者という職業はこの魔物を狩ったことで得る素材を売却して生計を立てている人が多いらしい。うん、勇ましいね。




 一通り、この世界の基本的な内容を話したところで終了時間が近づいてきた。


「今日の世界情勢の講義はここまでにするね。じゃあ、朝はじめに行ったようにこれから専門科目の希望調査の資料を配ります。各自よく考えて決めるようにね」


 そう言って、アルメリア先生は希望調査の資料を配り始めた。


「皆、ちゃんと資料もらったわね? じゃあ今日の講義はここまでです! 気を付けて帰ってね」


 全員に行き渡ったことを確認したところでアルメリア先生が終了の挨拶をして解散となった。



「いや~、ホント疲れた…」


 ウィルがお昼前よりさらにぐったりしている。まぁこいつは座学より実際に体動かしたいタイプだもんな。


「疲れたけど、今日のメインイベントはこれからよ! あたしの爆炎魔術を披露しちゃうんだから!!」


 おっと、そんなイベントがあった…。リリーも座学が嫌いらしいが、今はこれから爆炎魔術を使えるのが嬉しいのか目がキラキラしてる。


 若干の不安はあるが、リリーの爆炎魔術の威力や効果範囲を把握するのは学年別対抗戦に向けて重要なので仕方ない。



「そうだな。一応、闘技場の使用許可は取ってあるからこれから行こうか」


「うん! 行こう!!」


 僕の言葉を聞いたリリーが元気よく返事をする。




 *****



 その後、僕達4人は闘技場に来ていた。


 昨日、爆炎魔術について話していたので今日の放課後に使えるように事前申請しておいたんだ。


「いい? あたしの爆炎魔術は、範囲は狭いけど威力重視だから、巻き込まれないようにしてよね?」


 リリーが得意げに説明している。


 ちなみに炎属性は火属性に重きを置いた爆炎魔術と、風属性に重きを置いた火炎魔術がある。爆炎魔術は効果範囲が狭く、威力が高い。逆に火炎魔術は効果範囲が広く、威力は爆炎魔術に比べると低い。


 この2つの魔術だが、別にどちらが優れているという訳では無く、用途に応じて使い分けるのがよいとされていて、爆炎魔術は少数の強敵相手に、火炎魔術は多数の雑魚殲滅に向いている。


 ただ、普通エルフは風属性に適性を持っている種族なので、爆炎魔術が得意なエルフなんて完全に少数派だろう。というかここまで爆炎魔術を愛しているのは多分リリーくらいなんじゃないだろうか…。



「へいへい、頼むからオレを巻き込むなよな…」


「分かってるわよ! このあたしに任せなさい!!」


 ウィルがすごく不安そうに声をかけているが、リリーはどこ吹く風といった具合だ。



「じゃあ早速始めようか。リリー、僕達は少し離れているからまず一発撃ってみてくれ」


 そう言って、僕達はリリーから距離を取った。


 リリーはゆっくりと目を閉じ、深呼吸してから集中し始める。


 魔力が徐々に練られていくのを感じるが、これはちょっと練り過ぎじゃないか…? どんどん高まっていく魔力を感じながら僕の頬に冷や汗が流れる。


 と、満足行くまで魔力を練り終わったのか、リリーが目を見開いて息を吸った。


「デミ・エクスプロージョン!!」


「「「!!!」」」


 リリーが魔術名を叫ぶと、パッと光った後、激しい音を立てて大爆発を起こした。


 焦げ付いたような匂いが激しい熱風に乗ってやって来る。あまりの爆風に僕達は手で顔を覆いながら地面を踏みしめて何とか立っているが、正直立っているのがやっとだ。


 か、完全に想定外だ…。


 これはリリーが爆炎魔術を放つ前に急いで退避しないと大変なことになる。特にウィルが…。


「うーん、スッキリしたー!!」


「「「…」」」


 リリーは晴れ晴れと、僕達は顔を引きつらせている。これでエルフって、完全に生まれてくる種族を間違えてるよ!!


「どう? あたしの爆炎魔術もなかなかのものでしょ?」


 リリーが満面の笑みで僕達に問いかけてくるが、返答に困るな。隣のウィルは青い顔をしている。


「おぅ、想像以上にすごかったぜ。でも撃つ前にちゃんと教えてくれよ。じゃねぇと、オレが死ぬ…」


「そうでしょ! 分かってるから心配しないで!!」


 心配しかないが、確かに威力は凄いので、良い意味で想像を超えたと思う。これがうまく決まれば優勝も狙えるんじゃないだろうか?



 その後、リリーの爆炎魔術はあと2,3発くらいなら撃てるとのことだったので実戦くらいの距離で練習をした。



 帰る時には真っ黒焦げした親友が放心状態でボソボソ何かを言いながら歩いていたが、僕は何も声をかけられなかった…。



お読みくださってありがとうございます。


今回は魔術などの説明回でした。

説明回って淡々とした感じになってしまうんですよね。

あまりそう感じさせない書き方をする作家さんって凄いですね。


徐々に盛り上がっていく予定なのでもうしばらくお付き合い頂ければと思います。



相変わらず拙い文章ですが引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] なろう作品としてみると、やはり説明が長く感じるかなぁ…。 ノベルゲーならこれで普通なんだけどね・・・ 『本好き』みたいにこまごまとした描写を書いてても面白いのは、例外というか…ジャンル違い…
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