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誰かを頼るということ

 あれから、まず私は自分の身の振り方について考えを変えることにした。


 ——それ即ち、『この問題を自分だけの問題にしない』である。


 大抵こういう時って、自分だけで問題を解決していこうとするものだ。

 相手が自分に向かって喧嘩を売ってきたのなら、自分一人で解決する。

 そうすれば、周りのみんなに迷惑をかけないで済む。


 だけど、私の周りには頼りになる人達が沢山いるのだ。

 お母様は勿論のこと、ゼイヴィアの両親、学校の先生や校長。

 ……そして何よりも、闇に落とされかけた私を救ってくれた、最愛の姉妹が。


 そう思えたからこそ、私は、勝手に自分で動いて、勝手に心配を掛ける……なんていうことは、やめようと思った。

 迷惑を掛けたくない。実に結構。うんうん誇り高いね。

 でも、もしも……仮にシンディが私に迷惑を掛けないために、一人で相談もなく解決しようと思ったとしたら、私は何と思うだろうか。

 そんなの、決まっている。物凄く寂しく感じるだろう。

 その結果怪我でもしようものなら、どうして頼ってくれなかったのかと思うだろう。

 迷惑を掛けてくれてもいいから、絶対に私に秘密にしないで、助けを求めてほしいと。

 むしろ、積極的に私に頼りまくってほしいまである。めっちゃ迷惑かけてほしい。私はもっとシンディで苦労したい。

 そしてきっと、あのときトレント相手に無茶をしたシンディは、私に対して同じ感情を持っているのだと思う。そうだと嬉しいな、という希望ももちろん含まれている。


 あと、何と言ってもティナ姉だ。

 ティナ姉のシリアスブレイカーっぷりというか、私がどうにかなってしまいそうな瞬間だろうと勢いよく引き上げてくれるような、天然の無遠慮さが本当に有り難い。

 私はあの日、ティナ姉に助けられたのだとハッキリと分かる。

 きっとティナ姉がいたら、どんなに落ちかけようとも私は何度でも戻ってくることが出来るだろう。

 それが、転生してきた初日に私を抱きしめてくれた、温かいティナ姉なのだと思う。


 アンヌお母様は、本当に青い姿の氷の夫人ってだけで、中身は温かい母親だ。

 亡き父ジェイラスの娘である私達のことを、きっと自分の命以上に大切に想ってくれている。

 お母様に、私の悩みを秘密にするなんていうこと、絶対にナシだ。

 隠し事を話してもらえないなんて、絶対に悲しむだろう。


 だから。


『……この封筒を送った相手が、誘拐犯の可能性が高い?』


 私は真っ先に、お母様に相談した。……封筒の文面は曖昧にして。

 この問題を、自分一人の問題として片付けてしまうのはよくないことだと思ったから。


 私は、まだ自分のことをハッキリと分からない。

 結局名前も思い出せないし、どんな能力があるのかも自信がない。


 だけど……今は、フィーネなのだ。


 私は、まだ自分に対して自信がない。

 結局転生した意味も分からないし、特別なものを受け継いだという感覚はない。


 それでも……それだからこそ。


 私は、自分を過剰に信じない。

 映画の主人公のように、どんなピンチでもどうにかなるような謎のパワーなんてあるとは思わない。

 私にとって一番大事なのは、一つ。

 それは『みんなでハッピーエンドを迎えること』だ。

 そのためだったら、みんなの力は積極的に借りていきたい。今は素直にそう思う。


 だから私は、積極的に自分の周りの人達を、頼ることにした。

 ゼイヴィアの両親にも相談したし、学園長先生を初めとして学園の先生方全員に相談した。

 だから今、頼れる大人達の大多数には犯人捜しに協力してもらっている。

 未だ手がかりの掴めない誘拐事件なのだ、どんなに筋の薄い情報でも今は欲しいだろう。

 ふっふっふ、ルビーに手を出したのは失敗だったね。あの子の母親はアンヌお母様の同期なのだ。お父様を亡くした上にエドお父様も襲われた今のアンヌお母様が、中途半端に諦めるなんてことは有り得ない。


 これで、私の周りの人達は協力者になってくれた。

 ここから先は——私の考えるべき問題だ。


 皆に協力してもらっているとはいえ、肝心の部分は話していない。

 封筒の中身を、当然見せるわけにはいかないからだ。


 ……名前を、忘れたこと。

 それは間違いなく、フィーネではなく、転生前の名前のこと。

 事実として私は、名前を忘れてしまっている。

 全く思い出せないのだ。


 そのことに最初不安も覚えたけど——実際今も不安だけど——今重要なのはそのことではない。

 最悪、私が居なくても世界は回るのだ。

 だけど、解決しないまま居なくなるわけにはいかない。

 だから、保留。私は自分を構成する上で一番大切な要素を『フィーネ』に定めて、前世をその次に置く。


 記憶はないけど、死んでしまったことは確かなのだ。

 今更終わったことを嘆いて、今の環境を悪くする意味などあるまい。

 いざ覚悟が決まると、考える余裕が出来た。




 まず、第一に。

 この封筒を送ってきた相手は、私が転生してきたことを知っている。


 真っ先に思い浮かぶ可能性は、二つ。

 一つは、この世界に転生させてきた存在だ。

 私の記憶があるかどうかすら分かるのだ、超常の存在である可能性は決して低くはないだろう。

 何故私に封筒を送ってきたのか、というところは謎であるけど……少なくとも、この手紙には攻撃的な意図を感じられた。


 そして、もう一つ疑問から生じる可能性は……当然一つ。

 あまり考えないように考えないようにしていたが、やはり避けては通れない。

 いずれ、向き合わなくてはいけなかった問題だ。


 ——そもそも、元のフィーネの意識はどこに行ったのか。

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