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いろんな人から、普遍的な知識を学習していこう

 昨日はアンヌお母様と、いろいろお話をした。

 こういう時に頼りになるのは、やっぱり身内の常識人。

 世界との齟齬を限りなく無くすため、教わることのできるものは全て知っておきたい。


 マナチャージは二回以上やっちゃだめ。

 しっかり覚えました。

 あと、私の魔法が威力とんでもないことになるので危険ということと、私の身体の中の魔力が足りずに危険ということと。


 その他にも、学習内容のすりあわせというか、勉強内容がどれぐらい進んでいるかという話もあった。

 結果から言うと、まあ当然中等部ぐらいは暗記してる内容でしたね。

 さすがに高等部の内容となると、ぱっとは答えられなかったけど。


 ……つまり、その辺りが私の神童っぷりが終わる頃かなあ。


 大人にとって、子供の問題は容易い。

 ただし、大人からやり直したところで、高校受験の問題は簡単には解けないのだ。


 それが分かるのは、世界で私だけ。

 客観的には、『初等部では優秀だったのに、高等部に入っても一切頭脳が成長していない』というふうに見えるだろう。

 これを解消するには、私が転生者であることを話すしかない。……が、しかし。あれだけ娘を大切に育てていたトライアンヌが、いざ娘が別の人格になっていたと知ったら何と思うだろうか。


 怖い。

 さすがに話すことはできない。


 この未来を回避するには……マジで本の虫フィーネちゃんとして超勉強するしかないのでは……?

 そう、幼少期から本を読んで、9歳時点でこれぐらい優秀になったぐらいの吸収量を、9歳から15歳にかけてガンガン本を読んで吸収するしかないのである。


 ある意味、これって神童ごっこやっちゃった転生悪役令嬢の、第二の破滅フラグ!?

 婚約破棄ものみたいな大人スタートじゃないパターンにおける、こんな落とし穴があったなんて……!


 まずい。

 これは非常にまずい。

 ただでさえアンヌお母様には、不真面目肉食系女子フィーネちゃんから真面目フィーネちゃんに極端なチェンジを見せているのだ。

 ここで一切勉強していないフィーネちゃんっぷりを見せるようなことは、なんとしても避けたい。


 よし。これからは真面目に自主勉強しよう。

 幸いにも、本を読むこと自体は面白い。

 っていうか、知らない知識を学習するのって一度学校という環境を終えた私からすると、やっぱ面白いことだったんだなって思う。

 学生時代はかったるいんだけどね。


 目指すは6年後。

 その頃には、高等部の勉強も簡単に解けるぐらいに頑張ろう。




 シンシアと一緒の仲良し登校三日目。

 風邪でも引かない限りは卒業するまでずっとこんな感じで登校するかな?


 教室に入る前に、先日見た顔と出会う。


「あら、フィーネ」


「スザンナ、おはよう」


「お、おはようございます……!」


 スザンナはシンディの方をちらと見ると、小さく頷くだけの挨拶をする。

 ……そういえば、スザンナ自身はシンディのことをどう思ってるんだろうね。

 何か私に共感する部分があって、シンディにちょっかいかけていたとも考えられる。

 そう思うと、さすがにちょっと気になっちゃうな。


 そういえば……アンヌお母様が家族内で分かる常識を教えてくれるのならば。

 スザンナは、対外的なフィーネの評判を教えてくれる人ではないだろうか。


「スザンナ、もしよければ一緒に昼食でもどう? できれば二人っきりで」


「あら、いいんですの? わたくしは構いませんが」


「よかった。……あっ、ごめんねシンディ、勝手に約束しちゃって。その時にはティナ姉を呼んでくるから」


「い、いえ! そこまで配慮いただくわけには」


 シンディは遠慮しようとしていたけど、まだまだそのへん無自覚。

 この子を一人にすると、間違いなく大変なことになってしまうだろう。

 だってシンディだもの! でも遠慮したがるところもシンディらしくて好き! 姉馬鹿再び。


 でも、実際どうやったら聞いてもらえるかな?

 うーんと……そうだ。


「きっとティナ姉だって、一緒にいたいって思ってくれてるよ。やっぱり学園って貴族社会だし、あまり一人にさせたくないはずだから」


「ティナ姉様も……。わかりました、昼はティナ姉様とご一緒させていただきます」


 よかった。ちょっとシンディの人の良さを利用したようで申し訳ないけど、話を聞いてもらえそうで安心だ。


「それじゃ、スザンナ。昼にここで」


「ええ、よろしくてよ」


 喋る度に思うのだけど、お嬢様度の高い喋り方だよね。

 素朴な見た目の割にそんな口調のスザンナを、ただのお嬢様以上に濃いキャラだなあと、栗毛色の二つのおさげを揺らしたお嬢様を見ながら思った。




 授業は、国語とか算数とか、まあそんなかんじのやつ。

 ひとつ特徴的だったのが、社会の授業だ。


 マーガレット先生が黒板に図を描き、その図を線で結ぶ。


「この国は、キングスフィア王家により栄えています。王家が責任を持って、魔物から国民を守っているのですよ」


 この世界の仕組みは、もちろん地球の世界史とは全然違う。

 ゲームで知っている簡単な設定とは別に、ちゃんとした歴史があるのだ。


「かつて『魔王』と戦った英雄の血を、代々受け継いでいるのがキングスフィア王家……といわれていますが、真相は明らかになっていません」


 違うよ。だってラスボスを倒すのはシンディだもの。

 英雄の血を受け継いでいたのはシンディです。まあこれは予測つくよね。

 だってこのゲームはマルチエンディング。ラスボスを誰のルートでも倒せるようにするには、シンディに魔王を封印する力がないといけないのだ。

 ルートが選べる都合による、華麗なる逆算である。


「そして、キングスフィア家は優秀な魔法使いを、魔物討伐のための役職に就かせています。みなさんも、将来はその討伐隊で優秀な成績を収めるのですよ」


 この世界の貴族の基本は、『辺境伯』なのである。

 辺境伯とは、へんぴなところの伯爵、という意味ではなく、国の端っこ……つまり国境の敵国と隣接するための貴族である。

 このゲームでは貴族領、みたいな考え方はそこまで大きくない。キングスフィア家が日本国で、トラヴァーズ家が自衛隊東京支部みたいな。それぐらいの関係図である。

 故に、土地の管理は王族や公爵の一部のお仕事。

 魔法の優秀な人は戦う者として、魔法より筆記で優秀な人は国を運営する者として。

 そういうふうに、将来が分かれる。


 ここまで言うと、分かるだろう。

 いかにこの学園が、この世界にとって大切なものかが。

 常に魔物が溢れ出ているのだ、そんな環境で国を守るための魔道士を育てるために、この学園がある。


 そして、これからの9年が、どれほど影響するのかも。

 日本に例えるなら、なんというかセンター試験の点数がそのまま仕事の能力になる、ぐらいの感覚なのだ。

 そりゃ頑張るしかない。


「……あら、授業はこの辺で終わりですね」


 先生が平民への平等を丁寧に説いたところで、学園の鐘が鳴る。

 それじゃ、世界の常識も習ったところで……私の今までがどういうものなのか、聞きに行きますかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ……これはもはや、やらかし芸というやつですね。わかりました!
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