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悪役令嬢の手下だった子は、過去を知っている

 目の前に現れた女の子の顔には、見覚えがある。

 栗毛色のおさげを二つ後ろにくっつけた、おでこの広い女の子。

 この子は、シンディを真っ先にどついた子だ。

 名前は……確か、スザンナだったはず。


 なんでどついたかって? スザンナはフィーネとつるんでたからだよ。

 どちらかというと、フィーネがスザンナを手下に引き入れていたに近い。

 ゲーム中のフィーネは、一人でシンディを苛め抜いたわけではない。

 貴族の仲間を囲って、陰湿にネチネチと笑いものにしたのだ。


 ……じゃあ、フィーネが破滅したのならスザンナはどうなったかって?

 実は、知らないのだ。

 何故なら……フィーネとのボス戦以降、登場シーンが全くないんだよっ!


 とりあえず返事しよう。


「あなたは、スザンナ様でいらっしゃいますか?」


「……」


 あ……あれっ!?

 もしかして、間違えました!?

 さっきからドヤ顔で思い出し設定想起してましたが、別キャラのこと考えてましたかっ!?


「……申し訳ありません、お名前を間違えたでしょうか」


「あっ、いえっ! スザンナで合ってますわよフィーネ。ちょっと驚いただけですわ」


「よ、良かった。記憶違いでしたら恥ずかしいですから」


 スザンナは、私の方を見て首を傾げている。

 私も同じように首を傾げる。


「どうかなさったのですか?」


「ああ、いえ……以前お会いしたときは、もっと気軽に声をかけていただいていたので」


 ……あっ。

 そっか、部下として囲っていたんだから、スザンナは確か子爵家で下の貴族だ。

 ってゆーか同い年なんだから、子供の私がへりくだってちゃおかしいわ。


「あーっ……えっと、どんな感じでし……たっけ」


「フィー姉様、私に接するような感じでいいのではないでしょうか」


「そ、そっかなシンディ。えっとスザンナ、こんな感じでどう?」


「……え、ええ、構いませんわ。前より随分と明るくて、驚きましたわね」


 話から察するに、きっと以前はもっとタメ口で暗いか、我が儘な感じだったのだろう。

 ……そうか、スザンナは以前の私を知っているんだ。


「ところで、あなたは?」


 はっ! そうだ、シンディだ!

 スザンナとシンディが出会うんだった!


「わ、私はシンシアと申します。お母様、トライアンヌ様が再婚した相手の娘、です」


「……ふうむ」


 じーっと値踏みをするように、シンディを見る。

 ……スザンナは、シンディと私で視線を何度も往復させる。

 言いたいことは分かるよ、ルックス完全に負けてるって。


「フィーネは、シンシアのことを受け入れていますの?」


「そりゃもちろん。掃除とかすごく丁寧だし」


「なるほど。しかし、これは……妹だからでしょうか……。フィーネが受け入れているのなら構わないでしょう」


 スザンナは値踏みするようにフィーネをじろじろと見て、別の教室へと入って行った。

 ……せ、セ〜フ。スザンナ、シンディをどつかなかった。

 ちょっと喋る内容が不思議だったけど……。


 後でスザンナには、私の過去のことを聞きたいな。

 シンディには知られたくないから、できれば個人的に。




 教室に入って、まずはみんなと顔合わせ。

 クラスの担任の先生は、ゲーム中なら初等部はマーガレット先生だ。


 私達は、初等部に9歳で入学する。

 それから中等部に12歳、高等部に15歳と、ちょっとだけ学園の進み方が日本と違う。


 ちなみにこの『グレイキャスター・シンディ』では、この9年分の時間をゲーム進行によって経過させる。

 まあ、10年ぐらい時間経過して子供が育つRPGもあるからね。


 ってなわけで、まずは顔合わせ。

 私達が教室で待っていると、ばたばたと走る音が聞こえてくる。


「お、お待たせ! ごめんね遅れちゃって!」


 そこにいたのは、やはりマーガレット先生。

 シンディにとって三年間お世話になる、大切な先生だ。


 ふと、隣のシンディを見る。

 シンディは首を傾げたので、私はなんでもないと首を横に振る。

 マーガレット先生の方に向き直ると、私は当然のことを思った。


 ゲーム中で三年間シンディはマーガレット先生にお世話になっていた。

 そして、フィーネは三年間シンディを苛め抜いて、親の権力で別クラスにしていた。


 そこで、ようやく思ったのだ。

 シンディと同じクラスになる以上、フィーネにとってマーガレット先生の授業を受けるのは初めてのケースなんだなって。

 本来ゲームでフィーネはずっと、離れたクラスの若いイケメン先生が担任だった。

 だけど今回の人生、恐らく私はあの先生が担任になることはない。


 今、私は明確に、ゲームと違う人間関係がスタートしたのだなと思った。

 シンディにとってではなく、フィーネにとって新しいルートだ。

 これからどうなるかは分からないけど……とりあえず、マーガレット先生は作中でもいい人で信頼できたから一安心。


 明日から各先生の紹介と……魔法の基礎練習が始まるはずだ。

 楽しみだな。

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