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天然でやらかしてしまうのは運命なんですかね……

 部屋を移ると、アンヌお母様がいたので安心させるために笑顔で手を振る。

 こちらを見て顔をほころばせるお母様かわいい。あとエドお父様もそんな感じの顔をしている。

 シンディがいる以上は血の繋がりがないのに優秀な娘ってそこまで可愛いのかなと思うのだけれど、エドワードさんを見る限り心の底から心配していたみたいな感じだ。

 この人いい人すぎるでしょ。お母様の見る目に間違いはなかったです。


 あと、お母様の付き添いみたいな形でレイチェルさんもいらっしゃった。


「ティルフィーネ様、よろしいですか?」


「はい、お待たせして申し訳ありません」


「……なるほど、お話どおり、大変良き娘様ですね」


「ええ、フィーネは私の自慢ですわ」


 ちょっとまって、私の居ないところで何喋っちゃってるの!?

 あっ、エドお父様がめっちゃ笑ってる。声を出さずに肩で笑うやつやってる!

 うわー、親馬鹿やらかしてますねこれ!


 さすがに恥ずかしいので釘を刺しておこう。


「両親の言ったことをは流してくださいね、特別な教育など受けている身ではありませんので。二人とも、ちょっと子煩悩なんです。アンヌお母様、私のいないところで変なこと言ってないでしょうね?」


「あ、あらフィーネったら、私は本当に起こったことを言っただけで……」


「あまり変なこと言うようでしたら、もう料理はお教えしませんからね?」


「ご、ごめんなさい! ほんの少し魔法の話を盛ったぐらいなの! 本当よ!」


 うーむ……嘘を言っているとは思えないし、これぐらいでいいか。

 魔法を使ったのはインパクトあっただろうから、気持ちは分からなくもない……かな。

 まあ、あんまり派手に目立った活躍をしないようにしたい。


 私達の話を聞いていた文官さんが、私の方を見る。


「……あの、よろしいですか?」


「はい。何でしょうか」


「聞き間違いでしょうか……料理を、娘が母親に教えているように聞こえたのですが」


 あっ。


 お母様の方をちらと見る。

 あさっての方を向きながら、すっごい瞬きしてる。まつ毛で風が起こりそうなぐらい。なっがいなまつ毛、それで付けて盛ってないんだからすごいわほんと。


 ……すみません、お母様。

 今のは完全に私のやらかしです。お母様は悪くないです。


「はい……家でずっといる時は、本を読んでいるのです。魔法もその関係で使えます……」


「なるほど……トラヴァーズ家の次女は、思った以上の秘蔵っ子ですね……」


 いや、ほんと、自分でそうならないように考えておいてやらかしちゃうあたり、別にそんな頭良くないですってほんとほんと……。

 私はお茶を濁すように笑いながら備え付けのソファへと座る。


「まず、お二人のお話に大きな差異は見受けられませんでした。よって一連の話を事実として報告いたします。少しティルフィーネ様の話がぼやける形ですか」


「ぼやける、ですか?」


 アンヌお母様が聞き返す。


「はい。ティルフィーネ様は『お母様が使える魔法を秘密にしている可能性があるのなら、あまり私が喋るべきではない』とご配慮なさっています。そのため、魔法の名前は一つも出ていません」


 アンヌお母様とエドお父様、レイチェルさんも驚いた顔でこっちを見ている。……うん、確かに九歳の発想じゃないですね。

 でもアレを喋っちゃうと、まずそうな気がしたので。


「フィーネを見ていると、自分の娘の魔法をはしゃいで自慢した自分の方が子供みたいに感じてしまうわ……」


「トライアンヌ様の反応が普通だと思いますよ……この歳でここまで配慮できる人は初めて見ました」


 やらかしちゃいましたをやらないように動いて、結果的にやらかしてしまうの、ちょっと自分で凹みますね……。

 謙虚と卑屈は違うので、いただいた評価は素直に受け止めよう。


「恐縮です。お母様に本当に沢山本を用意していただいたので、入園前に様々な知識を得ることができました。お母様のお陰ですよ。それに、真面目なわけではないのです。勝手に親の部屋に入って本を読んでいるわけですし」


「いえいえ、本当に良いことです。トライアンヌ様のお話にあったとおり、ティルフィーネ様はマナウィンドの魔法を使ったというのは間違いありませんね?」


「はい、間違いありません」


「二人のお話も一致しました。これで聞き取りは終了です、お時間をお取りして申し訳ありませんでした。お疲れ様でした」


「ええ、あなたも」


 見落としは……ないよな?

 そういえば山賊達、何でエドお父様を襲ったんだろう。

 ……今そこを考えても仕方はないか。


 あとレイチェル様、教育ママの顔でメモ取るのちょっと怖いです。気持ちは分かりますけど。




 話が一通り終わったところで、私達はようやく解放された。

 レイチェルさんは溜息を吐いていた。


「本当にフィーネちゃんってすっごいわね……」


「勝手に私の手を離れて育ったようなものよ。私だって時々、親としてこれでいいのかなーって思うぐらいなんだもの」


「……まあ、そうよね」


 あはは……そういう評価になりますか……。

 でも、魔法に関してはレイチェルさんだって相当凄い人なのだ。

 なんといってもあのアンヌお母様に最後は勝ったっていうんだから、可愛いお母さんっていう姿に似合わず、鬼神のように強いんだろうなあ……。


「フィーネ」


「あっ、ゼイヴィア様」


 ゼイヴィアが顔を近づける……近いです。なんだか近いこと多くないですか?

 そして近づいておいて赤面するのやめていただいても? 私も赤面してしまうので。


「ソラっち——クレメンズに話してたけど……あの時のフィーネって、わざとだよね?」


 さすがゼイヴィア、めちゃ頭の回転速いですね。本当に十歳ですかねこの子。

 まあ家での時と雰囲気違ったので、気づきはしたとは思うけど。


「ええ。相手が苦手そうなことを演出してみました。それに……」


「それに?」


「ゼイヴィア様が、以前……その方が良さそうに言っていらしたので……」


 なんでと言われて素直に答えてしまったけど、自分で言っておいてこれって……あっ、今一気に顔熱くなった! 恥ずかしい!

 ゼイヴィアも真っ赤になってるの、見てるとますますこっちが影響しちゃうからやめて。

 いや今は私の影響を受けてゼイヴィアの方が赤くなったな。ほんとすまん少年、十歳をたぶらかす中身年上の九歳、ほんと小悪魔ムーブだわ。

 ある意味元のフィーネよりよっぽど悪い子フィーネちゃんである。


「あらあら、内緒話? 仲がいいわね」


「ふふっ、フィーネちゃんみたいな子が仲良くしてくれて嬉しいわ」


 いえ、今話している内容は子供とは思えないぐらいの政略結婚を中心とした心理戦のすり合わせです。


 今日は本当にいろいろあった。

 分からないことは怖い。知らない未来は恐ろしい。

 それでも……今思う中で最大の障害を切り抜けられたように思う。

 一安心して、今日は枕を高くして眠れそうだ。


 お疲れ、自分。

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