ティナ姉の秘密を探ろう
変化が現れたのは、すぐだった。
「ティナ姉、行ってらっしゃい」
「……うん」
以前に比べて、明らかに距離を感じるティナ姉の返事。
私……フィーネに対して、どう見たらいいのか分からないような反応。
その原因は、考えるまでもなくシンディと会った日だろう。
ティナ姉が出て行くと、次はアンヌお母様が家を出る。
その前に、私の方へと振り返った。
「……やっぱりティナは、再婚に反対なのかしら」
「わからないです、ティナ姉がどうしてあんな反応なのか……」
「私からお話をしてみるわ。だから、フィーネもあまり頑張りすぎないでね」
「はい、お母様」
アンヌお母様は安心したように微笑むと、家を出た。
……出たね?
私はお母様が離れたのを確認すると、早速ティナ姉のお部屋に潜り込む!
さすがに姉の部屋を全く知らないってことはないけど、一人の時に潜り込むのは初めてだ。
ティナ姉のお部屋は……ザ・シンプル生活! ちょっと男の子みたい!
花より団子、恋より冒険! って感じの部屋をしている。
うーん、ティナ姉には幸せになってほしくはあるけど、将来恋愛するようになるのかどうかは、現状からだとまだ分からないなあ。
本も沢山あるけど、まだまだ真新しい感じ。どうやら読んではいないみたいだねー、まあティナ姉の性格なら読書ってあまりしないだろうし。
さて、目的のものを探さないと。
私は部屋の中をじっくり見て、それを探す。
机。宿題やってそうなペン。
それから……何だろうこれ。
妙に古い本。絵本かな?
中は子供向けって感じだけど、読むのは後回し。。
後は……あった!
棚の奥から出てきたのは、私やお母様と同じ日記帳。
綺麗に使ってあるのか、汚れは少ないかも。
この中に、ティナ姉の秘密が……。
ずっとベールに包まれていた、あの勝ち気な姉の内面が赤裸々に記されている。
これは、滅亡から避けるための行為。
ティナ姉のためにも、必要なこと。
本当にいいのだろうかと、少しの葛藤もある。
だけど、ここまで来たら読まないなんて選択肢はない!
私はドキドキしながら、中を開ける——
——真っ白だった。
……。……………………。
完っ全に、失念していた。
宿題が分からなければ、全部ゼイヴィアに頼むような姉なのだ。
家では再々宿題をやり忘れてて、そのまま学校で怒られているのだ。
日記なんてものを毎日書くほど、マメなわけなかったですね!
「うわー、まじかー、なんだよそりゃー……」
今のフィーネちゃんらしくない言葉をぶつくさ呟きながら、日記を元の位置に戻す。
はー、緊張して損した。別に何も損はしてないはずなんだけど、どっと消耗した感じがする。
……しかし、そうなるとますます困ったことになった。
ティナ姉の内面を知るヒントがないのだ。
「まずいなあ、シンディと合流するのはすぐなのに……」
いざとなったら、私がシンディをティナ姉から守る?
なんだかそれも変な感じがするし、さすがに考えとしては突飛すぎる。
分からない、というのは本当に怖いものだ。
まあ日本での人生もそんなもんだったけどさあ。
でも、今回は『トラヴァーズ家の滅亡』という結末を知っている上での、未知の世界なのだ。
日本の時より緊張もするものである。
私が次の悩みを考えながら、絵本をぺらぺらとめくった。
もう童心に戻ってこどもむけのえほんでもよんでよ……。
開いた絵本の内容は、剣と魔法でどんどーんって感じだった。
感想、勇者の絵が結構渋めでした。魔王を倒して山も谷もなく終わりましたとさ。
実にティナ姉好みらしい絵でした。
天真爛漫で、悩みとかなさそうで、正解まで一直線で……。
ティナ姉、ほんとどうしちゃったのかな……また明るく元気なティナ姉が見たいな。