幼少期フィーネのぼっち化の謎と解答
それからというもの、週5日はティナ姉が学校に行き、私は平日にお部屋で本を読むという日々が続いた。
アンヌお母様はすっかり何かを察してくれたのか、私のことを全面的に信頼して留守を任せてくれている。
ただし、日記は隠すようになったのか、部屋から見つからなくなった。残念。
時々なのだけど、ゼイヴィアが遊びに来るようになった。
どうやらアンヌお母様の友人が、ゼイヴィアの家ペルシュフェリア夫人らしい。そういうことなら、親同士が仲良くするためにも仲がいい方がいいんだろうね。
ゼイヴィアは、学校の勉強をティナ姉に教えた後は、私と積極的に話そうとしてくる。
同学年からしてみればひっじょーに聡明だけど、ちょっと背伸びしていることぐらいはさすがに分かる。年齢的には、私の方が遙かに上だからね。
彼との会話は、決してつまらないわけではない。
紳士であり、真摯である。優しい彼を邪険にする理由など、あるはずもない。
だから私はいつも、ゼイヴィアとの会話そのものはそれなりに楽しんでいた。
だって私、やっぱり乙女ゲームユーザーだし。基本的に攻略キャラ好きだし。
そのキャラの幼少期と交流できることは、ほんっとーに楽しいのだ。
でも、一日の最後に彼と別れる度に思ってしまう。
ゼイヴィアも、いずれシンディを見るのだと。
彼が向けてくれる笑顔が、ずっと私の方を向いているとは限らない。
初恋とは実らないものだというし……段々と私の残念さを学習していくだろう。
大人の頭で小学校の問題を解くのは簡単。中学校も、それなりにいける。
だけど……高校の、進学高レベルの勉強を私が解けるかは分からない。
その時に彼は、私にどんな目を向けるだろう。
◆
毎日のマナチャージを欠かさずに、私は日々を過ごしていた。
特に友達がいるわけでもなく、家に籠もって遊ぶだけ。
……そう、友達がいないのである。誰も遊びに来ないし、誰の家にも遊びに行かなくてもアンヌお母様は疑問に思わない。
ちなみにティナ姉は、普通に他の子の家に遊びに行っている。
何故そんなことになっているのか。
その理由を探るヒントは、近くにあった。
『10/13
アンヌお母様が、お茶会を開いた。
お茶会は女の子ばかり。男はいなかった。
男の話を振ってみたけど、みんなあまり好きそうじゃない。
ティナ姉は、お茶より食べてばかりだった。
なんか、つまんない。
お母様には、次から男を呼んでくれないと行かないと言った。』
フィーネちゃん面食い!
チョー面食い肉食系女子!
早熟とかそんなレベルじゃないぐらいの男好き!
ってことは、元々は友達との付き合いもあったんだ。
アンヌお母様が、積極的に同年代の友達を作ろうとしていたのを、フィーネが断ったってことなんだね……。
これも好意的に解釈してくれたりするんだろうか、アンヌお母様。後から後からボロが出るぞフィーネちゃん、ていうかマジでいいとこないぞ元フィーネちゃん。
……あれ、もしかしてフィーネちゃん、ご近所から見たら面倒な子?
もうさすがに忘れ去られてるかな。嫌な言葉ぶつけたというより、わからなかったみたいな反応だし。
でも、確かに現在は同性の友達らしき子は全くいない。おるすばん時のフィーネちゃんは完全に孤立している。
そういえばゲーム中も、女の友達とか全くいなかったはずだわフィーネ。
ま……まずい……! まずいぞ……!
フィーネちゃん、このままだと完全にぼっちだ……!
私は魔法の練習とは別に、もうひとつの目標を立てることにした。
それは、学園デビュー。
普通のちっちゃい女の子を演じきる!
そして、普通の、ほんっと普通の女の子の友達を作る!
私は気合いを入れ直しつつ、元のフィーネちゃんの負債に頭を痛めた。
あとどれだけ、元フィーネちゃんのやらかしがあるのか……。
さすがに、もうないと思いたい……。