初めての魔法!
さて、アンヌお母様の部屋に入るのも無事公認(?)となったところで、今から昨日読んだ本の内容をちょっとおさらいしていこう。
マナチャージの載っていた本をざざっと見てみたけど、基本的な部分は学習できたように思う。
なんてことはない、ゲーム遊んでたからね。
RPGのまほうとかじゅもんとか、プレイしている最中に便利なものは使いまくるから、大体どのゲームでも暗記するよね。
学校の勉強は暗記できなくても、そういうところは忘れないのである。
周りに誰もいないことを確認して、家の外の裏庭に出る。
花とか植えてたりテーブルと椅子がある場所じゃなくて、ぱーっと広がってる草原ね。
「けっこー広いよね、庭も敷地も。これ以上を望むのは贅沢に感じちゃうなー」
日本人の都内とは土地事情が違うというのは分かる。
上昇志向はあってもいいんだけどね? その結果が破滅だというのなら、安全第一です。
「まずは……えーっと、《マナチャージ》」
ふっと力が抜けていく感覚。それとともに、ぐっと力が集まっていく感覚。
それをゆっくりと、身体に広げるイメージで。
「うん、前よりもずっと安定してるかも。しばらくこれは続けてみようかな」
誰もいない、開放的な森の中で両手を広げる。
……都会の喧噪なんてどこにもない世界。
いきなりの転生は不安だったけど……今の自分の環境、もっと好意的に捉えていってもいいかもなあ。
悲観しても仕方はない。
さて……いよいよ本番だ。
どうやらこの世界の子供達は、魔法を使う前に得意な属性を見てもらうという儀式があって、それから魔法の練習をするらしい。
つまり、ティナ姉も魔法自体はまだ使っていないのだ。
でも、私は最初からフィーネが風属性の力を使うと知っている。ゲーム中のフィーネが儀式後の魔法使いなのだから、未来を知っているって形だ。
だから、わざわざ儀式まで待つ必要はない。
風属性の魔法、一番最初に覚えるのは簡単な生活魔法。
ゲーム中にはバトル中ではなく、会話シーンで使われた魔法だったので本で予習しておきたかった。
まずはそれを練習してみよう。
「よーし、よーし、できるできる……。……っふぅ……《マナウィンド》」
その魔法を使った瞬間。
私の目の前の草原が、ぶわっと左右に開けた。
地面の砂も葉とともに舞い、辺りが一瞬曇る。
「まずい、《エアフィールド》!」
私は咄嗟に、風属性の防御魔法を使った。
ほら、子供のごっこ遊びでやられそうになると『バリア、バリア!』と叫んだことない?
そんなノリで、ゲームに実装されている防御魔法を思わず叫んだのだ。
結果……私の周りには、砂が一切入ってこなくなっていた。
なるほど、これがエアフィールド……。
ふらっときて足を支えられなくなり、草原の上に尻餅をつく。子供の身体に、いきなり大きな負担がかかったようだ。
勢いで使っちゃったけど、エアフィールドって比較的消費MPの多い中盤の魔法だったから、MPの減り方が大きいんだろう。
「……MPゼロってどーなるんだろ。気絶しそうで怖いので気をつけよう」
魔法に関しては、当然ながら分からないことだらけなのである。
今のところ、魔法の名前しか分からない。
最強魔法の名前だって知っているけど、それを口に出したときに何が起こるか分からないのだ。
ああ……それでも……! 私は今、確かにゲーム中の魔法を使ったんだ!
RPGゲームの中にあった魔法が、今、私の手の中にあるんだ。
やばい、マジで楽しい。こんなにはっきりと、自分の身体から魔法が使えちゃうなんて。
これ、もっと練習したい。MPも伸ばしたいし……とりあえずマナチャージは日課にしよう。
自分がどこまで伸びるかわからない。ゲーム攻略していた身としては、最強キャラのエクゼイヴィアに比べたら、1ボス同然のティルフィーネはすっごく弱いし。
今のゼイヴィアから見ても、きっと私はまだまだひよっ子だろうからね。
入学するまでに、どれぐらい強くなれるかはわからない。
だけど、自分で自分のことはもちろん、家族のことも守れるぐらいに強くなりたい。
最終的に、難しいとは思うけど……主人公にも、簡単には負けないぐらいの魔法使いを目指したい。
そんな決意を胸に、ふらつく足に両手で渇を入れつつ、私は屋敷へと戻った。
あ、肝心なことを思い出した。
そういえばこのゲーム、かぼちゃの馬車を作るお婆さんだけはいなかったよね。
だってみんな魔法使いなんだもの。
もしかしたら、私も馬車を作り出す魔法とか使えるのかな?
そのうち調べてみよーっと。




