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相手を知るには、過去を知ることから

 ゼイヴィア君と出会って翌日。

 今日もアンヌお母様に不思議なものを見るような目で見られながら、おうちで自習をする。


 ティナ姉が、昨日あれだけ手伝ってもらった宿題を鞄に入れ忘れていたのを指摘して、おっちょこちょいな姉を見送る。

 その後、アンヌお母様も用事ができたということで、私一人でお留守番となった。

 玄関までアンヌお母様を見送りに行くと、それも初めてだったのか「ありがとう」と言われてしまった。

 もっと母親を大切にしようよフィーネちゃん。こうなったら私が、元フィーネちゃんの分まで五千兆倍ぐらいアンヌお母様を大切にするしかないね。

 そのうち料理も覚えよう。


 ……そして、窓からもアンヌお母様がいなくなったのを確認して、ニヤリと笑う。


 よし、今のうちにアンヌお母様のお部屋に潜り込もう!

 えっ、お母様のこと大切にするんじゃなかったのって?

 ……それはそれ、これはこれっ!

 まずはアンヌお母様自身がどういう経緯で独り身になってるかとか、普段どういうこと考えているかとか、そういうことを調べる必要があると思うんだよね私は。

 見れば見るほど若いし、下手したら精神年齢が下の可能性もあるからね。

 出来る範囲でいいので、いい将来を迎えてほしい。




 ってわけで、アンヌお母様の部屋は……そうそう、家の一番奥のここだね。

 勝手に入った時にばれるようなものを準備していたりとか、入った悪い子におしおきするような仕組みとかあるかなと思って、念のために扉の辺りを軽く調べてみる。

 ……調べたところ、そういうのはなさそうだし鍵もかかってなさそうだ。

 フィーネちゃん信頼しすぎでしょお母様。私はフィーネちゃんの日記を読んだけど、あれは間違いなく何かやらかすわがままっ子だぞー。

 まあ実際やらかしたんだけど。


 アンヌお母様の、部屋の扉を開く。

 貴族未亡人のお部屋はどんなものなのかなーと楽しみにを見てみると……なんと、意外なことにシンプル。

 本棚メインで、お母さんのプライベート部屋というより、まるでお父さんの書斎だ。

 クローゼットもあるけど、フィーネのものより明確に小さいと分かる。


 ゆっくりと、部屋の中に足を踏み入れる。

 部屋の中には本棚の他に、机、ベッドがある。

 本棚にあるうちの一つを手に取ると……。


「……『初めて料理をする人の為の基礎知識』?」


 そこにあったのは、料理本。

 いやまあ料理が作れるのだったら、料理のやり方が載っている本があってもおかしくはない。


 だけど……この本は違う。

 包丁の持ち方、野菜の切り方、調味料の注意点など基本的なことが書かれているのだ。

 大した料理もなく、最後まで基礎知識のみ。

 その本は、私が読んでも退屈なぐらいの簡単な内容だったけど、折り目が沢山ついて、非常によく読み込まれていた。


 トライアンヌが子供の頃から、この家に住んでいた、とかでなければ……。


(アンヌお母様は料理を最近までできなかった?)


 今日も食べたけど、現在のアンヌお母様の料理は、お世辞抜きに美味しい。

 それなのに、こんな本がフィーネやティナ姉の部屋ではなく、アンヌお母様の部屋にあるということ。何か重要な手がかりになる気がする。


 ……これに関して、調べられる以上の内容を知るには、時系列の上だとティナ姉に聞いた方がいいかもしれない。


 一旦料理本を棚に戻す。

 他にあるのは、やはり魔法の本。それから家計の本と……。

 ふと、机の上にある本のうちの一つに目が留まる。


 間違いない。日記帳だ!

 だってフィーネと全く同じデザインなんだもん。




 さて、ここからが本番だ。


 アンヌお母様の過去の秘密と、お父様の謎。

 恐らく幼いティルフィーネに対して、そういった話を話してくれることはないと思う。

 するとしたら、物心ついてから。


 だけど……それじゃ遅いんだ。

 トラヴァーズ家は、選択を間違えるわけにはいかない。


 私は恐る恐る、その中身を開く——!

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