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小さな、相棒。
僕には。
時々、ムギが本当の姉弟なんじゃないかと
思えてくる。
うちの姉貴はあんなんだが、
あれで理系女子だ。
僕には、理系の血はちっとも流れていない
気がする。
今でも宝物の、呼笛がついたキーホルダー。
幼稚園の時に、永遠の愛を誓わされた
女の子からもらったもの。
その子は、おしゃまだったんだろう。
勝手に僕を愛して、
勝手に引っ越して行ったんだが。
それでも大事にしなきゃいけないと。
手放さないでいたもの。
小4の夏休みに、どうしても見つからなく
なった。
虫取の朝に、落としたのか。
花火の夜に、落としたのか。
休み中ずっと、気がかりだった。
夏休み。最後の日。
ひろ兄に連れて行ってもらった渓流釣りから
帰ってくると。
キレイ好きのはずのムギが、
薄汚れたまま。
僕の机の上にうずくまってた。
ひと伸びして立ち上がったお腹の下に。
キーホルダーが。
あった。
驚いたまま笛を見つめる僕の足元で。
ムギは。
毛繕いを、はじめた。
そして。一言だけ。
ないた。