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さいくるタウンが、やって来た。
僕は、あの日見た光景を。
いつまでも。いつまでも。
忘れることは、ないだろう。
いろいろなものが、目覚め始める時間に。
いろいろなものが、目覚める事が出来なかった。
恐ろしいほどに、きれいな朝日と。
恐ろしいほどに、張りつめた静寂が。
僕らの街に舞い降りていた。
愛しい人と一緒に迎えた、あの朝の光景を。
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さいくるタウンは、人工的に作られた街だ。
その計画地に、なぜ僕らの街が選ばれたのか。
本当のところは、僕は知らない。
僕らの街は。
寂れた温泉。
急激に海へと落ちこんでいく断崖。
断崖の上に、キセキのように広がる盆地。
盆地の向こうに広がる山々。
特別な名所もなく、
自慢できるような、名産品もない。
そんな、街だった。
さいくるタウン計画は、そんな僕らの街に
史上最大級の台風のように、
やって来たんだ。