幼き頃②
あの事件の後父の兄夫婦に引き取られた。
父の兄は、優秀な父に対して劣等感を持っていたようで、俺に愛情を注ぐ事はなかった。
兄の嫁も父と母の遺産が目当てで引き取ったようなもので、庭にプレハブ小屋を作り、
『一人部屋がいいわよね~?』と小学生の俺と極力関わらないようにしていた。
俺は中学生になった。
「おいクズ。邪魔だどけ。」
短髪で爽やかな顔立ちでがっちりした体格。運動神経・勉強共に優秀な兄夫婦の息子の健斗。
何かと俺に突っかかってくる。俺の事を馬鹿にするのが楽しみのようだ。
「ごめんなさい。すぐどきます。」
「ケッ!お前は本当グズで何もできないな。」
人を見下した気持ちの悪い笑顔で言い放つ。
健斗が通り過ぎた後『ふ~』と息を吐く。
母が刺殺された数日後、病院の看護師が警察に自首した。
医師の向井の指示で自分が点滴に劇薬を混ぜたと。
証拠もなく、事件は看護師の殺人として処理された。
その後、向井は大学病院の学長に選出された。
だが俺は忘れない。奴が父の葬式で見せたあの顔を。
俺はあの時学んだ、目立つ人間は良くも悪くも人に注目される。悪い方に転べば出る杭は打たれる。
最後に残った者が勝者であると。
あの日から俺は変わった。一度見た物は忘れない記憶力と、
ずば抜けていた運動神経をフル稼働して、
1人小屋の中で、誰にも負けないようがむしゃらに知識を蓄え、
自分を守れるように武術はもちろん殺人術まで独学でマスターしていった。




