ディエゴの話3
月のラグランジュポイント第2エリアは、
地球を挟んで月と対称な位置にある重力安定点。
そこは、バレンシア共和国の領空で人口は1兆人。
太陽系内で最大の人口を抱える国である。
居住空間は、すべて同型の密閉シリンダ型
構造都市、直径33キロ、長さ60キロ。
そのシリンダが、だいたい縦、横、高さ方向に
40基弱ならび、総数は40000基弱。
それらの構造都市は、番号で呼ばれており、
今回彼らが向かうのは、2001番。
シリンダ都市は、月の体積とほぼ同じ程度の
空域に広がり、遠くからみると非常に密集して
いるが、重力安定点からかなり外れているもの
もある。
都市が、多すぎるのである。定期的に、推力で
位置調整が必要であり、バレンシア共和国が
慢性的な経済不況から抜け出せない要因の
ひとつになっていた。
3バンドの一行は、大型の民間船で移動する。
船内から窓を通して第2エリアを見ると、
4万基ちかくのシリンダが密集し、壮観で
あるが、少し息苦しさも感じなくもない。
バレンシア共和国の国民がかかえる閉塞感も、
そういったところが影響しているのだろうか。
航行自体は約2時間程度、第3エリアでの
空港までの移動や搭乗手続きに約2時間、
第2エリアに到着して入国手続きその他で
約3時間、朝家を出て夕方には目的地
ホテルに到着する。
大型の民間船を使わず、高速艇を使えば、
例えば木星へいくのと同じ速度で
エリア間を移動すると、航行時間は
10分前後だ。
バレンシア共和国は、ある意味で快適である。
だいたいこうだろう、というのを裏切らない。
たまに来る分にはまったく問題ないのだ。
ありがちなホテルにチェックインし、
ありがちなレストランで夕食を食べる。そして、
翌日の、ライブとその後も含めた動きを
打ち合わせで確認する。
ネハンのメンバーについても今のうちに確認して
おこう。長髪のボーカル、マット・コバーン、
ミディアムヘアのギター、サージ・オダジアン、
スキンヘッドのベース、エディ・ローランズ、
そして短髪のドラムス、カール・スミスの4人。
熱狂的なファン、とうわけではないが、マッハ
パンチなどは、この時代の多くの若いバンドが
そうであるように、このネハンを手本としている。




