ゴシの話28
「うん、へーきへーき、ゴシさんいてくれたから」
誰もサクハリンのリョーコがこんな人と一緒に
遊びに来てるとは思わないよね、とアミが小声。
ウインがスーパーテキーラのショットを5人分
買ってくる。
「かんぱーいー!」
そう、この、手すりのちょっと太くなった部分を
両ひざで挟めば、おれも踊れる。
昔、海上都市レムリアのクラブでナウなヤング
たちがやっていたのを見よう見まねで覚えた、
おれのとっておきのカルカッタダンスを披露
しよう。
フロアのほうも盛り上がってきた。
そして、アミが買ってきた2杯目のスーパー
テキーラにより、男ゴシ・ゴッシーは人生の
絶頂にいた。美女4人に囲まれて。
一方エマドとフェイクは。
そう、そうだったよ。先日それを聞いたばかり
じゃないか。フェイクと顔を見合わせる。
その女性店員は、なんというかこう、一緒に
いると落ち着くというか、優しそうではある
というか、眼鏡はかわいいというか。
店員と話し込みだしたジェフを置いて、
エマドとフェイクは店内をうろつき出す。
遠くのほうで、一緒に来た5人が何か変なダンス
を踊っているのが見えたが、知らないふりを
しよう。
しかし、あらためて思うが、このハコもとても
音がいい。設備自体も最新だろう。
「とりあえず楽しむかー」
エマドが踊り出す、スペースロボットダンスだ。
空中を歩く。
「負けないぜ!」
フェイクも楽しみだした。スペースシャッフルだ。
二人とも、重力下都市出身にしては無重力ダンス
がうまかった。
翌日そんなに朝早いわけではないが、午前1時
過ぎには引き上げることにした。
「あー、やっぱおれたちもアウトサイドエナジー
取り入れるかなあ」
「今日の聞いてしまうとなあ」フェイクが答える。
「ていうかさあ、今思うと、テルオ兄さんの曲って、
ゴリゴリのアウトサイドエナジーだよな」
「うん、意外と抜け目がないと言うか」
フェイクが答える。
「むしろテルオ兄さん発祥だったりしてハハハ」
「まさかなあ」
ゴシはジェフの肩を借りながら、まだ夢気分だ。
「ライブ終わった次の日、もっと無重力都市の
ディープな部分行ってみます?」ジェフの提案に、
「お、いいねえ」
皆が答える。
ゴシも両手でサムズアップしてみせた。




