ゴシの話27
何を隠そうこの目の前にいるサクハリンの
リョーコ・ミルズもそうだ。ひざ下ぐらいのを
履いている。
そして、どうもその女性たちは無重力でスカート
を履くのに慣れているのだろう、さっきから
色んな角度のスカートの女性を見ているのだが、
内部を見れる機会が今のところ一度もない。
リョーコもそうだ。さっきも先を進んでもらって
いたが、ことごとく見えない。一瞬たりともだ。
かなりきわどいところまで行くのだけれど。
「彼らの派手な踊りや服装が気になるでしょう?」
「え、ええ、そうですね」
あわてて答える。
いたるところで特殊な服装をした人たちが光る
デバイスをくるくる回したりしながら、自身も
くるくると器用に踊っている。
「レイバーやヒッピーなんてとうの昔に絶滅したと
思ってました」
つい10年ぐらい前だろうか、第3エリアでも
見れたと思うんだが。
「そうね、彼らは、恒星系中の、最も新しい音楽を
もとめて、そこに集まるのよ」
「最も新しい音楽・・・、つまりここは・・・」
「そう、今この太陽系で、一番新しい音楽を扱って
いるのは、ここクラブ・ウルゲンチよ」
「そうだったのか・・・」
リョーコの説明は続く。レイバーやヒッピーは、
宇宙世紀前から存在したという。彼らは最新の
音楽を含めた文化を求めて、どこまでも旅をする。
そこには、いつも繰り返される悲しい歴史が
あるという。
「彼らが集まるところには、必ず一般の人たちや
業界人だけでなく、犯罪者、犯罪組織も集まる」
「新しい文化がやがて商用化されて一般に広まるの
はむしろいいことだと思うわ、でも、常にそう
いった新しい文化の芽は、ドラッグや犯罪の
温床にされてしまう」
「そして場合によってはレイバーやヒッピーが悪者
にされてしまう。まあ確かにごく一部そういう
ひとがいる可能性は否定しないけどね」
「そして、けっきょくはそこからいなくなる、
ってわけか」
「その通りよ」
そこへアミたち3人がやってくる。
「リョーコさーん、大丈夫だった?」
よく見ればこいつらも今日は全員スカートだ。
しかし、まったくゴシの角度からは見えない。
リョーコの話が面白かったのか、酒が進む。
今日はいっちょやってやろうか。




