ゴシの話23
この木星ラグランジュポイント第1エリアの
無重力都市トメトには、約10億人が暮らす。
一辺が100キロの、6面体ダイス構造を
したこの都市の人口密度は、したがって、
1立方キロメートルあたり、千人となる。
ただし、ひとつの底面の面積で考えた
場合は、1平方キロメートルあたり10万人だ。
クリルタイ国では、トメトで試験的に10億人の
人口で都市生活がどうなるかをモニターしており、
住人は募集で選ばれている。
クリルタイ国のダイス型都市は、月の第3エリア
にあるバームクーヘン型都市マヌカとほぼ
同じ規模だ。人口も、マヌカの都市仕様のほぼ
限界にあたる。
人口密度1,000/立方キロメートルというのは、
重力下での平方キロメートルあたりの
人口密度と比較してほぼ間違いない。
立体のほうが1キロ上空まで含んでいるだけだ。
例えば地球上の大都市であれば、1平方キロ
メートルあたり5000人というのもざらだ。
また、無重力という点が重力下よりも閉塞感を
防いでいることも忘れてはいけない。
ある人は、重力下の高層建築物の最上階を、
井戸の底と同じだ、と言う。
若干閉所恐怖症を疑ってもよいきらいもあるが、
確かに重力下の高層建築物は、建物の屋上に
出ることはできても、側面に出ることはできない。
バルコニーなどの外、という意味だ。
それに対して、無重力下であれば側面だろうが
どこだろうが、出放題である。人口密度の
割に、狭さをあまり感じないのだ。
居住キューブの全体に占める体積の割合で
いっても、10億人住んで8分の1以下だ。
これは、10億人が一人一個のキューブに
住んだ場合に、ちょうど8分の1になる。
では、実際無重力下での人口密度の限界は
どのあたりか、ということになると、それは
今後の研究次第ということになる。
宇宙は広い、今のところそんなに無理を
して人々を詰め込む必要もないのだが。
また、そもそも人が生きていくうえで、
広い空間が本当に必要なのか、そして必要
だった場合、どの程度の空間があれば
それを広いと感じるのか、といったところが
焦点になるだろうか。
では、居住キューブのもうひとつの特徴を
見てみよう。それは引っ越しに関することだ。




