ゴシの話16
残された男4人でとりあえずどうするか
話し合う。
「えっと、ジェフさんは優先パス持ってるん
ですか?」
「いや、僕乗り物苦手で・・・」
「おれも実は・・・」
「人型機械なら乗れるんですけど・・・」
というわけで、全員エンターテイメントパーク系
の乗り物が無理なのがわかったので、どこか適当
に過ごせるところを探すことにした。
「ずっと生演奏聞けるレストランがあるんですよ」
ジェフが言うのでそこへ向かう。
そこはかつて地球上でメキシコと呼ばれた国の
音楽を一日中生演奏している食堂だった。
「じゃあまだ朝ですけど、今日もうこのあと
なんもないんで飲みますか」
ビールを頼むと、ラベルにコロナと書かれてある。
4人で乾杯した。
「なんかここ落ち着きますね」
独特のカントリー風の曲が演奏され、歌も
どこか異国の田舎の風景を思い起こさせる。
そして男同士で飲んでいるとだいたい
そういう話題になる。
「ジェフさんモテますよね?」
見た目も仕事的にも、とエマドが付け加える。
「あの4人だと誰がいいんですか?」
まあこういう質問になる。
「いや僕あの実は・・・」
サクハリンのジェフ・タナカは、実はいわゆる
美人、美女、かわいい女の子の類が苦手らしい。
背が低くて少しふくよかで眼鏡であまり
かわいくないのがいいらしい。
「いや、べつにブス専ってわけじゃないんですよ、
だって僕はかわいいと思ってますから」
「とするとリョーコさんはあんまタイプじゃない
ってことですか?かなりの美人っすよね」
まあそういうことになるね、とジェフは答え、
あと実は、と続ける。
「これ、内緒ですよ」
リョーコも背が低くてブサイクな男性が好きだと
いうのだ。なので、ある意味この二人は気が合う
のだ。
ライブなどでは、ごくたまに二人ともブサイクな
カップルを目にすることがあるが、決まって
ライブ終わりに二人で、世の中なかなかうまく
いかないね、という話になる。
こういう話をそれぞれ順にやっていき、朝から
酒とつまみが進む。
気が付くともう昼だ。
女子4人がやってきて、
「8人乗りの空いてるやつがあったよー」
ムリやり拉致されていく。
4人同士が対面で乗るカヌーのような形をした
乗り物を前に、男子4人の顔が青ざめる。
最大の危機がここにやってきたのだ。




