ゴシの話14
アラハントのメンバーは、なんとなく
勘づいている。しかし、もしそれが当たって
いたとして、どうやってここまで来たのか。
マルーシャがMCを始める。
「みなさんありがとうございまーす」
「えーと、今日はですね、もう一人ゲストが
いるみたいなんですけど・・・」
ちょうどその時、フロアに一人、ダイブで運ばれ
てきた男性、金髪の、テルオだ。
アラハントのメンバーの顔が少し引きつって
いるのは、おそらくテルオが初めてこの
規模のハコで出演することを心配している
のだろう。演れるのか?
警備員と話している。戻されそうになるところを
スタッフが駆けつけて説明している。ステージに
上がる前に、観客に振り返る。
歓声があがる。テルオコールも始まった。
「テルオ!テルオ!」
アラハントのメンバーが驚いている。
テルオコール? クリルタイ国で、どういう
知名度なんだ?
ステージに上がって来たテルオは、マルーシャ
からマイクを受け取ると、
「プロキシマ・ケンタウリとアンドロメダ、
続けていきます」
曲が始まる。プロキシマ・ケンタウリにまとも、
かどうかわからないが歌詞が付いた。
意訳するとこうだ、
あまたの神が生まれ、ひとつの神に収束し、
神が滅びあまたの魔があらわれ、魔が収束し、
それは永遠に続く輪廻の井戸の底であり、
人類は煩悩を捨てて輪廻から脱しなければ
ならない。
故郷である恒星系の周囲を回りつづけるのは
まさに輪廻であり、われわれはそこから
脱する。そして次の恒星系をめざす。
それができるのは、虐げられた民のみ、
我慢をし続けた民のみだ。たどり着いた
その先で、人類は新たな境地にいたる。
そして次の曲に移る。
アンドロメダはより深く、遠い未来、遠い
場所を思わせる曲調だ。
概要はこうだ、
次の恒星系に至ったわれわれは、再び輪廻の
罠に陥る。われわれ人類は、輪廻から脱しては、
再び輪廻の罠にはまるということを繰り返す、
しかし、やがて我々は銀河を抜ける。次の
銀河を目ざす。たとえそれがいつか我々の
銀河と融合するとわかっていても。
そして最後には、人類は恒星系にも銀河にも
頼らずに、完全に煩悩を捨て去り、解脱する。
その日は遠くとも、進まないものはけして
たどり着かない。




