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遺伝子分布論 22K  作者: Josui
63/134

ゴシの話4

  夕食はいつも、私とアラハントの5人、

 ケイト・レイ国務長官、トム・マーレイ少尉、

 ブラウン・ノキア艦長、そしてクリルタイ国

 外務省次官のリアン・フューミナリの

 10名で会食となる。

 

 格調高い部屋の、厚い木製テーブルは20名ほど

 が座れる、ふだん非公式な外交の会合も行われる

 場所だ。

 

 今日流れている曲はラフマニノフのピアノソロ

 第2番だ。今日のメインのハンバーグにも

 ナツメグがしっかり使われていて、プロの仕事だ。

 

 2国の政府高官や軍の佐官クラスが参加している

 こともあり、ふだん一般人では聞くことのでき

 ないトピックが飛び交う。

 

「第5エリアではやはり指導者不足の状況が

 続いていると」

「先月自由主義寄り政党の党首がスキャンダルに

 より失脚しています」

 

「第2エリアのバレンシア共和国では極右政党

 が勢力を伸ばしています。このままでは数年

 以内に政権をとることが確実かと」

 

「先日第4エリアの民間工場であった一般市民

 による暴動ですが、被害にあったのは要人警護

 および要人暗殺と誘拐に使用できるレベルの

 アンドロイドだったそうで」

「けっきょく発注元がまだ明らかになって

 いないようですね」

 

「ケイト様のお二人のお姉様のお話もよく

 存じ上げております。とくに上のお姉さまの

 伝説は今も語り草で」

 と話すのはリアン次官だ。

 

「ほほほ、姉はともかく、姪っ子たちも今は

 もう手に負えないことですわよ」

「ところでご子息は舞踊の道に進まれているとか」

 

 こういった会話に参加していると、自分がこう、

 太陽系のすべてをコントロールしているような、

 何かそういった錯覚に陥りそうになる。そして、

 それを止めないことを否定しない自分もいる。

 

 自分も何か話題を出してみよう。

「リアン次官はお若くて聡明であられるが、

 それほどの才能がおありであれば、クリルタイ国

 のような小国ではなく、もっと大きい、そう

 例えばバレンシア共和国でも立派に勤められる

 と愚考しますがいかがか」

 

 アラハントのメンバーがゴシを一瞬睨みつけたが、

 本人は気づかない。

 

 リアンが答える。

「いえいえ、私のような者などクリルタイ国には

 掃いて捨てるほどおります」

「それに、小国であれば自らの思いも為しやすい

 というところがありまして」

 

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