ゴシの話
人は、どれぐらいの長時間、星を眺めて
いられるのだろうか。
今回は、それを試すのにちょうどよい旅
なのかもしれない。最初の目的地まで八日間
の旅、その後の旅程も含めると、合計
39日間、星を眺めていられる。
少なくとも、無心で星を眺めるのは無理だ。
そう思いつつ過去の旅に思いを馳せる。
あれはもう10年以上前のことだ。
海上都市ムーから地球へ降りて、旧チャイナ領
へ高速艇で移動、そこから大陸間鉄道に乗る。
上海から、南京、徐州と経由して西安に入る。
古きものと新しきものが混在する風景、という
ものを期待したが、そこまではほぼほぼ新しい
都市の風景だった。
ただ、洛陽を通過する際は復元された都の
姿が車窓の遠くに確認できた。そこから
続く農地や自然の風景が車窓から眺め
られた。
間違いなく、そういったのんびりした
風景と時間が自分は好きなのだ。
心残りなのは、かつてシルクロードと呼ばれた
国々を、夜の時間帯で車窓から眺めることが
できなかったことだ。
自分で稼ぐようになってから、また戻ってきて、
今度は列車から降りて都市を訪ねたい、と
思いながらもまだ達成できていない。
朝には中東と呼ばれた地域で、アフリカ大陸
側へ分岐する。中東もアフリカも、かつては
もっと乾燥した地域だったらしい。
今では比較的新しい街の風景が広がっている。
アフリカの西端から、再び海路で海上都市
アトランティスへ、そこを経由して、
海路でアフリカ大陸を南周りで迂回し
海上都市レムリアへ。そこから宇宙へ戻る。
結局レムリアの街や料理が気に入って、
その数年後に戻ってくることになる。
レムリアの街は、旧インド領の文化を多く
受け継ぎつつ、宇宙エレベーターの駅も
存在するため世界中の文化が集まる。
逆に、旧インド領のほうが近代化された
ビル群でかつての文化が失われて
しまった。
レムリアの町はずれの小さな料理店で
3年料理の修行をした。そこはインド料理
専門店であったが、
近所には観光客目当ての、各地域の料理店
が並んでいた。どれもその地域の
本格的なもので、食べ比べをするのに
ちょうどいいと思ったものだ。
けっきょくのところ、インド料理が一番
旨いという自分の中で結論に達したが、
他の地域の料理も食べる前に自分が
想像していたよりもはるかに美味だった。




