ヘンリクの話14
今日のボッビボッビは、ビンディがいつもと
違う楽器でスタートだ。
これは、キョクトウという島国が発祥の
シャミセンというリュートだ。独特の音色
を響かせる。
それに合わせてタリアが歌うのは、やはり
キョクトウで生まれた民謡だ。キョクトウ
の民謡はその地方によって趣きも
違うらしい。
少し悲しげで、どこか懐かしいような、
その地方の自然や人々の暮らしを謳う。
そこにメリンダが据置キーボードから
管楽器の音を合わせていく。
彼女たちは、地球上のさまざまな
地域の民謡を歌う。そして、その
民謡風のオリジナル曲も作る。
オリジナル曲では、もっと直接的に
その民族の悲しい歴史を歌う。
曲調が少し明るいものになり、
映像は熱帯の島々の海の風景になる。
いつのまにかビンディはさっきと
少し違う楽器を弾いている。
キョクトウの南国の民謡だ。
映像の中で人々が踊っている。そして、
次に流れてきたのは、これもすごく
古い歌であるが、いまだにプロの
歌い手たちに歌い継がれている、
Great Tears Are Spillingだ。
それを玉のように響く声でタリアが
歌いあげる。その透明感と声の伸びが
とても気持ちいい。
そして次はオリジナル曲だ。日差しの
強い南国の明るさと自然の美しさを
感じさせるその曲調に、
深い悲しみを見いだせるのはその歌詞
のせいだ。
キョクトウの南の島々は、旧世紀に
悲惨な戦禍に巻き込まれたという。
映像は楽し気に踊る島の人々を映し
出し、まったくその戦禍を想像する
ことはできない。
曲が終わり、タリアのMCが始まる。
「えー本日はボッビボッビのワンマン
ライブにお越しいただきましてー」
すぐ観客からツッコミが入る。
「それでは、私たちの新境地をー」
3人が、頭に手をやり、髪をそっと掴む。
周りが息をのみ、状況を見つめる。
「えっと、ジョウダンです」
周りがホッと胸をなでおろす。
「じゃあせっかくなんで明るい曲も
演りましょう。ダンシングガールズと
アメノウズメ、続けていきます!」
その声に合わせてフロアにスモークが
足される。3D映像と2Dモニターを切る
のはフラッシュライトの効果を高める
ためだ。
フロアにはさらにお客さんが集まってくる。
サクティも外も人が多く、噂を聞きつけて
遠方からでも集まってくる。




