ヘンリクの話8
「アラハントはまた遅れてるのか」
控室の椅子に座ってキングが嘆くように
呟くが、よく見ると顔がニヤニヤ笑っている。
言っているうちに二人到着した。
管楽器とラップ担当のエマド・ジャマルと、
ドラムスのフェイク・サンヒョクだ。
フェイクはくるなりそそくさとドラムの
準備を始める。
「おっすヘンリク!最近どうよ!?」
こいつとは昼にキャンパスで会ったばかりだ。
適当に返事しておいて準備を手伝う。
残りの3人がどうしてるのかあえて聞かない。
エマドとは、ガッダーフィという名の
ユニットも二人で組んでいて、DJ Kanbee
名義で僕もプレイする。ビジュアルジョッキー
ではなく、ディスクジョッキーとしてだ。
アラハント結成前からやっている。
フェイクが叩き始めた。
エマドのマイクパフォーマンスが始まる。
ここ最近だが、もう少し大きなハコ、つまり
ライブハウスでは、アラハントの時間が
スタートするときはいつもこの二人から
始まる。
そして、エマドがマイクパフォーマンスで
客をいじったり煽ったりするので、
まずはエマドへの「帰れ」コールから
始まる。
しかし、ここゲルググでは、その帰れコール
も気の抜けたいい加減なものだった。
フェイクのドラムが鳴り始めてからフロアの
客も増えだしたが、まだまだこれからだ。
エマドの下手うまダンスとマイクによる煽り
が続く。もっと返してこいというジェスチャー
をするが、客はまだ乗ってこない。
まだメンバーはそろっていないが、
アラハントの特徴は、まあ一言でいうと
未来オタクの集まりだ。
彼ら個々もそうだが、バンドの設定上も
メンバーがテンジクという未来都市に住んで
いて、そこからやってきて演奏している、
ということになっている。
だからエマドの客いじりも、その帽子は
どこで買ったんだテンジクにはもうそんな
ものは売ってない、だとか、いい加減その
古典的なダンスをやめろ古い、といった
感じだ。
彼自信は身体能力抜群で、ダンスの
キレもいい。現存するほとんどの踊り方
を知っている。しかし、ステージでは
テンジクのダンスしか踊らないらしい。
ウイン・チカが入ってきた。彼女の
学生友達らしき数人から歓声がおきる。
今日は小さめのキーボードを肩から
下げている。
それに笑顔で答えながら、
メロディーが足されていく。




