サトーの話2
家に帰ってまず確認したのは、最近の女性の
格闘家の画像や動画であった。そして、やはり
いた、年齢や背格好がその少女にそっくりな
選手。
しかも車で2時間の場所にその子たちが所属
するジムの支部があった。翌朝仕事に行くふり
をしてそこを訪ねる。職場には身内に不幸が
あったとして一時帰国とその準備のための
休暇を願い出ていた。
そして、会えた。本人たちではないが、
トレーナーで母親のエマ・ハントである。本人
たちはすでにプロ格闘家としてデビューして
おり、そこにはいなかったが、ジェニーと
ジェシカ、親のエマも現役当時そうとう強かっ
たが、期待の双子だった。
エマに入門希望と別に話がある旨を伝え、部屋
に案内されてさっそくその話を切り出した。
「それはうちの娘たちじゃないね。最近は印象
づくりもあって一人で行動することはほとんど
ないし」
「あの二人地上はそんな好きじゃないみたいだし」
「でも思いあたる節もあるんだよ、下の子と話し
てみる?」
ジェレイドはその双子の弟で、彼ももうすぐ
デビュー間近だった。
「それ、サキかもね」
従妹がいるとのことだった。3人並べばだいぶ
違うのがわかると。
しかし、驚いたことに、その双子は女子選手
なのにジェレイドより強い、いや、重量級の
トップクラスでさえ倒してしまうかもしれ
ないと。そしてさらに、サキはもっと強い
らしい。
「小さいころから何度か練習したけど、一度も
勝てなかった」
「あんた前に一度も触れなかったって言ってなか
った?まあプロデビュー前にそんな話他人に
できないか。」
「なんせ親があれだからねえ」と横からエマ。
親も有名な人らしい。
が、そのあとエマから出た話も驚愕、というか
ある程度予想できた部分もあるが、他人から
あらためて言われると膝の裏あたりにぞわぞわ
と寒気を感じた。
「家族も含めて狙われると思ったほうがいい」
もう少し出世していれば、脅迫して口止め、
というかたちをとってくるところだが、今の
位置だと消される、らしい。
「うちは警備会社もやってるでしょ、その手の
話多いんだよ」
「うちの本部ジムに来ればいい。そう、家族で
宇宙に移動。ちょうど仕事も募集してたから、
新聞記者でしょ? ブログ書けるよねえ?」
というわけで、妻をどう説得するか、そこだけ
だった。