ナミカの話2
ナミカの恋愛対象は、初恋のころから男性
だった。もとの名前をタカオといった。
世間の、いや、とくに父親が求める男としての
あるべき姿と、自分の心の中との差異に、
大きな戸惑いを感じながらも忙しい毎日を
過ごしていた。
芝居の中で女形を演じたことがタカオの迷いを
確信に変えた。そして、自分の人生を変えるべく
家を飛び出す。名前も変えた。
妹たちは格闘家という人生をすでに歩みだして
おり、母もタカオが出ていくまえに夫からの
ドメスティックバイオレンスにより妹たちを
追って宇宙にすでに出ていた。
25歳のとき、父の死を知った。けして好きな
肉親ではなかったが、大きな衝撃を受けた。
そして、それをきっかけに性転換手術を
決意する。
それは、単に男性機能を捨て去ることだけでは
なく、子どもを産めるようになること。人類は
まだその時点でそういった性転換手術に
成功していなかった。
第三エリアに住む、シャックという無免許医師だ。
宇宙進出の初期段階で建造された、シリンダー
タイプの都市に、たくさんの幼女らしき
アンドロイドの助手と住む。
その構造都市は、古いコロニーの愛好家とともに、
さまざまなタイプの人型の模型を好む人たちが
多く住むことで有名だった。
彼は、成功する手術しか行わない。そして、普段
なら高額の報酬を患者に要求するが、今回は
タダで良いという。
そのかわり、臓器が安定するまでのあいだ、
データを取ることを条件として出してきた。
この手法を一般化させればそれで莫大な
儲けとなる。
もうふたつ条件を出してきた。
「子が生まれても、親と名乗らないこと」
最後の条件には少しだけ納得がいった。
「手術に耐えるだけの体力をつけること、
そうだなあ、例えば、スポーツや格闘技
の世界でトップとなるぐらいの。
5年は必要だろう」




