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遺伝子分布論 22K  作者: Josui
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ヨシコの仕事

  ヨシコ・ヨシムラがその就職情報誌を

 見つけたのはその日の午後であった。

 

 もう少し正確に言えば、その募集記事を見つけた。

 

 あなたも大統領になれる、その記事の冒頭には、

 そう書かれてあった。

 

 応募条件には、身長体重などとともに、顔の3D

 写真を送り、それに合格することなどがあった。

 報酬額や寮の完備など、働く条件がかなり良かっ

 たため、ヨシコは写真を送ってみることにした。

 

 その後、面接が行われることになり、職場への

 旅費などすべて向こう持ちとなる。いい話だ。

 

 その職場は、木星のラグランジュ点第3エリア、

 木星から太陽を挟んで反対側にあるエリアである

 が、そのヨシコが住んでいる構造都市の、すぐ

 近くだった。

 

 ヨシコは、アイドルを目ざしていた。レッスン

 やライブの費用をこれでまた稼げる。

 仕事内容が少し気になったが、それはいつもの

 ことだ。変わった仕事でも、それは芸の肥やしに

 なる。

 

 採用が決まったので、髪をボブに切ってもらい、

 金髪に染める。

 

 職場には、ヨシコのほかに6名の担当者がいた。

 まとめの人間が、現場担当をあと1名追加して、

 7名で週1日勤務としたい、と言っていた。

 

 週休2日で、勤務日以外は歌や踊りのレッスン、

 セリフの練習などだ。これにも給料が出る。

 

 しかし、一番つらいのは、数百枚の紙にサイン

 する練習だ。過去のアルバイトで登録済み電子

 サインを使っていたことはあるが、自署は

 ほとんどない。しかもこの数だ。

 

 しばらく続けているうちに、バイト仲間だと

 思っていたうちの一人が、大統領本人だと気づ

 いた。まったくオーラが出ていなかったので、

 まったく気づかなかったのだ。

 

 しかし、このメンバーで国の政策を決めていく

 のは本当に楽しい。それに、うまくいくと支持率

 が上がるし、なにか失敗すると下がる。自分の

 頑張りがすぐ反映されるのはいいことだ。

 

 外交や議会の場でしゃべるのは、少し緊張するが、

 そんなことでへこたれていては、立派なアイドル

 にはなれないのだ。

 

 そして、いいことを思いついた。大統領のままで、

 アイドルをやる企画だ。これが通れば、この

 仕事をやりながらアイドルができる。

 

 そしていつしか大統領本人はあまり職場に

 顔を見せなくなったが、しばらくはこの仕事を

 続けていたいと思うヨシコだった。

 

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