ピエールの話19
今回の4人は、国と市の許可をとって、完全
武装している。ドン・ゴードンは、外でホバーに
乗せていた飛行ドローンの準備だ。
サトーとサキ、ナミカの3人で社内に入っていく。
サトーは大きな荷物を抱えている。
「意外とそういうものなのよ、頭の良さそうな人は。
あちらのお母様との仲がどうなのかとか聞いて
みたら」
ナミカがサキと何か話している。あまり今日の
突入に関することでは無さそうだ。サトーは
緊張してきた。この日のために練習してきたが、
やはり、断れば良かっただろうか。
妻によると、今回もし仮に失敗すれば、かなりの
破格のあれが入ってくるらしい。成功すればそれ
なりの成功報酬だとか。目をキラキラさせている
ように見えるのは気のせいか。
あらかじめ連絡が入っているので、案内ゲートと
セキュリティチェックは簡単に通過。セキュリ
ティは上階以下は一時的に切断できているため、
金属装甲による完全武装でも警告音は出ない。
そして、上階でそろそろ警告音が鳴り出したが、
通常この会社の警備員がかけつけ、警察に連絡が
入る。警察はすでに到着していて建物を囲んで
いる。警備員はこの件了解済みだ。
そして、最上階からひとつ下の階で、それが出て
きた。キサラギ社製、ラーヴァナ。2本足に多数
の腕、多数の顔。まあ、まだアンドロイドと言え
なくもないか。いや、無理だ。
こいつには、サキとナミカがあたる。
「でもねえ、私が母親だって、言わないほうがいい
でしょう、あの子、いつもビクビクして気の毒」
「実は父子家庭って言ってみよっか? まあ、
あながち間違いではないし」
「アハハ、それちょっと面白いね」
まだなんか話しているが、ぼちぼちマスクを
閉める。開始だ。
想定どおり、ラーヴァナは銃器の類を持って
いないが、刃物は全ての手に持っている。
基本的に避けたほうがいいが、装甲で受ける際
は角度に気をつけないといけない。
一分ほど二人は攻めあぐねていたが、目くばせ
する。サトーをおとりに使う気だ。サトーは
聞いていないので、少し慌てる。
ラーヴァナがサトーとの距離を詰めようとした
とき、背後からサキが跳び蹴りを狙った。多数の
腕に跳ね返されるが、その時ナミカが足元に
もぐりこんでいた。




