ピエールの話18
数か月後、月のラグランジュ点第2エリア、
バレンシア共和国で政治スキャンダルが多発し
始めた。
今は月の第5エリアへ避難している、リアン・
フューミナリの罠が発動したのだ。
リアン本人からしたら、「人聞きの悪い」という
ことになるかもしれない。リアンが行ったのは、
政治家と経営者は、コンプライアンスを守りな
さい、という言葉を発したのと、窓口を設けた
だけだ。
主に、極右政党国家改革党の、贈収賄、横領、
パワハラ、セクハラ、暴行事件、選挙違反、
不正選挙、スパイ、などなど、党はほぼ壊滅状態
となり、この党の前に政権についていた中道左派
の政党が返り咲く動きを見せていたのだが、
この国家改革党の議員が脅迫を受けていた、と
いう話が出てきた。特殊な分野で使用する
コンピュータの特殊なプロセッサを作る企業から、
製品を提供する見返りに、偏向した政治活動を
行えと。
そのプロセッサ製品を使っている企業の株を多く
保有している政治家が標的となった。標的となっ
た政治家はそれ以外にもいろいろと弱みを握ら
れていたようだ。
その特殊なプロセッサを提供していた企業とは、
月のラグランジュ点第4エリアに本社を構える、
ヤースケライネン社。独占禁止法違反の疑いで、
極秘捜査が開始された。
数か月後、浮かび上がってきたのが、高齢の
CEO、ヒルダ・ウッテン。バレンシア共和国の
申し入れを、ヤースケライネン社のあるソニ
国は受け入れた。
そして、逮捕の際の突入にあたって、コウエンジ
連邦が協力を申し出てきた。そのCEOの部屋が
ある階に、通常街中では使用できない軍事タイプ
の兵器があるということがわかったからだ。
その兵器は、キサラギ社製のものが二台。これ
まで出てきた、民間偽装のアンドロイドとは異
なる、完全に戦場で使うタイプのものだ。
そして、キサラギ本社と技術者の協力も取り
付ける。
ナミカ・キムラは、突入の日に向けて入念に
準備した。特に、2台目に関してだ。ヤースケ
ライネン社内にも足がかりを作る。そのCEOは、
すでにかなりの敵を社内に作ってしまっている
ようだ。
そして当日、やってきたのは、ユタカ・サトー、
ドン・ゴードン、サキ・キムラ、ナミカ・キムラ
の4人だ。




