ピエールの話17
そのころ、アキカゼ・ホウリュウインは、
アグリッピナ・アグリコラとともに、クリルタイ
国の首都、木星ラグランジュ点第1エリアにいた。
覇王、ティエン・ヘイの謁見の間である。
「私の提案はただひとつ、この帝国を二分し、
ふたつの性格のまったく異なるふたつの国を作る、
まさに、天下二分の計にござりまする」
「お二人には説明するまでもありませんが、その
狙いはもちろん国民の不満を逸らすため」
「都市開発による負荷がかなり高まっております
れば」
「もちろんティエン様にはその一方の国のトップ
になっていただきまする。2国は再び大いに
栄えましょう」
アキカゼが説明を終える。
「そこなリアン・フューミナリ参謀本部長も、少し
違うが同種の献策をしてくれた」
「いったんこの件は預からせていただく」
そういってティエン・ヘイは幕奥へ下がった。
「みごとな献策でした」
リアンが追従する。
「アキカゼ殿にはしばらくここクリルタイ国に滞在
いただきたいのですが。太陽系でもここほど安全
な場所はございませぬ。暴動など一切起こる気配
もござらぬので」
そのあと小一時間ほど、アキカゼとリアンが
デキる軍師ごっこを繰り広げ、アグリッピナは
知らぬ間にいなくなっていた。
そして、その騒動が起きたのがその二日後である。
ニュース速報が伝える。
クリルタイ国では、クーデターが発生、国王の
ティエン・ヘイおよび参謀本部長のリアン・
フューミナリは、月のラグランジュ点第5エリア
へ逃亡。
クーデターは成功し、その勢力は、帝国建国を
宣言、国名は、フイ帝国。その皇帝の名は、
テルオ・リー、光輝帝を僭称した。
そして、その後行われた国民投票により、圧倒的
人気で正式に皇帝となる。光輝帝はただちに行動
にうつる。クリルタイ国時に行っていた、都市
開発計画を凍結し、その分を、水星、金星、地球、
月、火星、それぞれのラグランジュ点の都市へ
持ちかける。
拒否する場合は、軍事的圧力をかけるとのおまけ
付きで。
早朝、文武百官が居並ぶなかで、光輝帝が玉座に
座る。
「謁見の間のデザインを5種類用意いたしました、
今使用しているこの間も含め、3種ほどあれば
他国の使節などを迎えるのにもよいかと」
文官による奏上が行われる。




