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遺伝子分布論 22K  作者: Josui
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ピエールの話

  ピエール・ネスポリは、身長もそれほど低いと

 いうわけではなく、どちらかというとハンサムの

 部類に入るだろうか。

 

 しかし、どことなくニセモノ感が漂う、宇宙世紀

 前の言い方をするなら、売れないホストを思わ

 せる外見、という言葉がぴったりかもしれない。

 

 しかし彼は、意識が高かった。今日も、仕事を

 休んで、外交に関するシンポジウムに参加して

 いる。そして、これから発表を行う予定だった。

 

 タイトルは、知的生命体外交。

 

 その発表の様子を見ていく前に、彼の仕事に

 ついて少し触れておこう。時は宇宙世紀

 22012年、25歳になった彼は、コンサル

 タント事務所に勤務していた。

 

 大学もフルコースで出ており、生物学を専攻して

 いたが、月のラグランジュ点第3エリアの

 マイナーな大学だった。

 

 しかも配属された研究室が人気がなく、教授が

 退官直前ということもあって、生徒はピエール

 一人だった。その教授も、最近亡くなったと

 風の噂に聞いている。

 

 それでは彼の発表を見ていこう。

 

 その日は、シンポジウムの最終日ということも

 あってか、会場全体も雑談が飛び交い、出席者も

 リラックスした雰囲気であった。

 

 ピエールは、他の意識が高い同年代の仲間にこの

 様子を見せようと、自分の発表の動画撮影の

 許可も取っている。

 

 意気揚々と入ってくるピエール。しかし、会場内

 に何かを見つけ一気に挙動不審になる。

 

 彼は、コンサルタント事務所の所長の姿を

 会場内に見つけた。少し発表の場所から遠いが、

 あれはキムラ所長だ。なぜこんなところに

 いるのか?

 

 ピエールは、事務所に採用される際、直接の上司

 セルジオ・イグチとしか面接していない。

 キムラ所長もあまり事務所に姿を見せないので、

 2回ほど元気に挨拶したのみだ。

 

 今日の件はセルジオには説明しているつもりだが、

 キムラ所長にはそれが届いているのだろうか。

 仕事を休んでこういう場に出席していることに、

 どういった印象を持たれてしまうのか。

 良い印象を持たれればいいのだが。

 

 おふっ、こっちをめっちゃ睨んでるぞ、でも

 この様子を今まさに配信してるんだ、

 ひるんだ様子を見せてはいけない・・・。

 

 一方こちらは、もちろんナミカ・キムラである。

 タイトルが気になったので、この発表にだけ

 参加していた。

 

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