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電脳王国サバイバル  作者: 鳴海屋
第1章 君が望むもの
9/23

水と推理と強襲

サイトとマドカの2人は街の北門に向かう前にマドカの家に寄っていた。

「ほ、ほんとに1週間で買えるものなの?」

サイトはマドカの家に入ったにも関わらず今だに信じられずにいた。というのも北区のそこら辺にある家の2倍もしくは3倍近くの土地を使い、その土地の広さに見合った大きさの建物がそこにはあった。北区の土地は一軒一軒が他の区の何倍にも値する大きさなのに関わらずだ。それは最早、家と呼ぶよりも館と呼ぶ方が相応しい。

その館の廊下を応接間を目指して歩いているサイトはつい先ほど通過した正門の巨大な噴水を右手に、左手には中央にガゼボと呼ばれる半円の屋根を柱が支えている建物が設置してあり、そこに向かうように4つの道が伸びている中庭を目にしながら歩いていた。

更に驚くべきは正門の噴水から溢れ出した水はその周りの通路に流れ込んでいる。正確にはガラス張りにされた通路の下側を小川のように水が流れていた。水が流れているのはそこだけではなく、中庭のガゼボへ向かう道もそうであり、ガゼボの中もチラッと見えた限り水は流れている。そして2人が立つこの館の床もまた水が流れていた。

「はい、買いましたよ。これでも社長の1人娘です。商売の知識は他の方々よりもだいぶ持っておりますし、使い方も心得ています。この世界の流通に目を通すぐらいなら時間はかかりませんでしたし、皆とある商品の法則に気づいていらしませんでしたから。一瞬で独占させてもらいましたわ。」

割とえげつないことを言っている。と言うか、ゲームの世界であってもそんな簡単に商品1つを完全掌握し、自在に売り捌きにかかるまで1週間でできるとは想像できなかった。それをいとも簡単にやってのけたマドカは本当に恐ろしい。

「なにその商品って?危ないものじゃないよね。」

少し怖くなってサイトは尋ねる。このゲームの世界にも薬物のようなものは存在する。現実世界での影響はないので取り締まられることも少ないのだが、使用者はチート行為として報告される。そういった類の物を扱ってるのではないかと心配になったのだ。

「薬物は取り扱いませんわ。寧ろ今となってはその販売ルートが残っているかも怪しいのですが。私が扱うのはキューブです。」

なんかサラッと薬物の販売ルートを潰したような発言をしていたけど多分聞き間違いだろうとサイトは聞き流し、後半部分だけに意識を向けた。ただそれは頭にハテナマークを浮かべるだけで、それで大儲けできる理由が分からない。

キューブとはソシャゲにおけるガチャのようなものである。名前から想像できるような箱ではなく、天然の半透明の石。その説明だけだととても儲かりそうだが実際はそうではない。その実態は

護身道具の1つ。キューブに衝撃を与えるとランダムで何かしらの効果を発動する小さな立方体の物質である。街を出て東部へ向かうとそれがよく手に入る。その効果は大抵が小さな爆発を起こすだけだがごく稀に火炎瓶のように炎が弾けたり、破裂時に触れていたものを瞬時に凍らせたりする効果がある。大まかな見分け方は色である。キューブには何種類か色があるのだがその色によって当たりの効果が変わるのだ。ハズレは全て共通して小さな爆発を起こすだけ。その爆発ではヌル1匹倒すのが限界なので群れで生活することの多いヌルには意味をなさないことが多い。だが当たりは使える。まとめてヌルを一掃できるだけの力があるものが多い。敵にキューブを投げてその可能性に賭けて攻撃する。そう言う意味でのガチャである。

「キューブ?あれでどうやって儲けるのさ。あれで儲けようとした人は今までたくさんいたけど誰も成功してないんだよ?いくらマドカでもー」

「それは今までの商人が観察力や推理力が無かっただけです。」

きっぱりとそう告げるマドカを不思議そうにサイトは見つめた。

「それはないと思うよ。今のサバイバルの流通に幅を利かせてるとこの党首がキューブの解明をいろんな人に研究するよう依頼したけど、その誰もキューブの法則性なんかは分かんなかったんだよ?」

「言いましたわよね?別にキューブの成分を調べたり、大きさや、形などで法則を見つける訳ではありませんの。そんなことは万人がやってるはずですもの。私はもっと分かりやすく、分かりにくいところに目をつけました。簡単に説明しますね。傷です。」

マドカは応接間の扉を開けながらそう言った。

「は?」

サイトは、あまりにも簡単にそしてあまりにも意味のわからない説明を受けて応接間の入り口に立ち尽くしてしまった。

「これが一般的なキューブ。そしてこちらが皆が当たりと呼ぶキューブです。」

マドカは前者を左手に、後者を右手に持ちながらそれをサイトに渡してきた。

どちらも同じ大きさ、同じような形で特に違いはなかった。

「同じに見えるけど?傷って言ったよね。どっちのキューブにも傷はあるけど。」

「そうですわね。でもあたりのキューブには特別な傷があるのです。これは拡散のキューブです。衝撃を与えると、それを与えた方向へ散弾銃のように火を纏った石のかけらが飛んでいきます。」

そう言いながらマドカは石の一部を指差す。そこには漢字の小の様な形の傷が付いていた。もう片方の傷をよく見てみるがその形の傷はどこにもない。

「でもそんなの偶然かもしれないじゃん。」

「偶然でこの水の館は買えませんよ。」

「・・・!」

サイトは言葉が出なかった。なるほど確かにその通りだと、そう思わされた。1人2人ならそれこそ偶然当たりを受け取りそれを使わせることで騙せたかもしれないが、この館を買えるほどの偶然は起こりえない。

何よりマドカは誰かを貶めるような嘘は絶対につかない。それは幼馴染である自分が一番よくわかっている。

なぜそんなことに気づいたのか理解はできなかった。でもそれに気づき、商売として成り立たせたことに納得は出来た。

「取り敢えず納得はしたよ。流石マドカだよ。敵わない。」

ニコッとマドカは微笑むとピョンとソファーに飛び込んだ。綺麗にお尻で着地するとその弾みで姿勢を正した。

「さて、そろそろお告げの社に向かいたいのですがよろしいですか?」

ここに立ち寄った理由は、サイトがどうしても北区に家を買ったことを信じられなかったから。それが解決した今マドカはいち早くお告げの社に向かいたくて仕方がない様だ。

「了解です。時間も押しちゃったし行きますか。」

「ほとんど、いえ全部サイトのせいですけどね。」

サイトは黙って応接間を出た。




それから小一時間が経つくらい、ようやくお告げの社が姿を見せた。道中マドカのキューブの傷の見分け方講座がみっちり行われたおかげでサイトは必要以上の疲れを覚えていた。しかも何を言ってるかよく分からなかった。傷は法則など無く必ず一定量付いている。だから外れのキューブの数がとても多い。人が外から傷を加えると弾けてしまうので、任意のキューブを作り出したり偽装することはできない。そこらへんまでは理解できたのだが。その後のことがさっぱりだった。確率がどうだの、期待値がどうだのなにやら、傷の数の法則?みたいなことを延々と語られた。その上での結論は傷がないキューブが極々稀に見つかる可能性があるということらしい。

だから何なのだと声を大にして言いたかったが、その話が終わる頃にはお告げの社にたどり着いていた。

現実世界にもある様な大きくも無く小さくもない普通の社。ここがどういう場所か知らなければ無視して通り過ぎてしまうほど周りの森とも合致している。一度くれば2度来ることはない場所のため人もいない。

「さて、ここでなにをすればいいのですか?」

マドカにパッと話題を変えられ、キューブの話は打ち切りとなりサイトはモヤモヤが残りつつも本題の方へ意識を向けた。

「社の中に入ればそこで全て説明されるから入ってみたら。ものは試しだよ。」

この社で行われることは中に入った人が持つ適性をあらわにし、その人に見合った職業を選択肢としてあげること。それともう1つ、サイトやユウキが持つ特別な力を持っているかの判断もしてくれる。

サイトの星座魔法や、ユウキの能力は他の人とは違う固有の能力だ。それがあれば良いというわけでもないのだが、その判断ができる唯一の場所である。

そしてその力を知ればその瞬間から自分のものとして扱うことができるようになる。能力は様々でそれがあれば戦闘を有利に運べるし、商売などでも遅れをとることがなくなる。逆に移動に制限をかけられたり、無意識下で発動させてしまい周りに迷惑を被るものもたまに存在する。

「固有能力に関してはあまり期待しないでおいてね。持ってない人の方が多いから。」

早速中に入ろうとしているマドカに告げるとマドカはこちらに体を向けて手を振って答えるとそのまま中に消えていった。


「さて、1時間ぐらい暇ですな。昼寝でもしてますかね。」

とは言ったもののサバイバルで寝ることはベッドがないと出来ない。横になり風もない静かな森で1人時間が過ぎるのを待った。

最初はそれで良かったのだが30分を過ぎたあたりで流石に横になるのも疲れてきた。起き上がり大きな欠伸をしながら体を伸ばしていると、ガサガサと森の木々の葉が擦れ合う音がした。

その程度の音しかここにはない。小鳥の囀りも、獣の鳴き声も、空気の流れる音すら聞こえてこない。ガサガサと木々が揺れる。


「・・・え?」

その違和感に気付いた時には、遅かったとサイトは唇を噛んだ。

ガサガサと大きな音は森全体を覆う様にあちらこちらから音がする。何かいる。いや何かではない。ヌルだ。

木々に隠れながらこちらを見つめる三つ目と一瞬目が合う。

サイトは剣に手をかける。それと同時にかなりの数のヌルが空から落ちてきた。

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