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電脳王国サバイバル  作者: 鳴海屋
第1章 君が望むもの
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始まりの一戦

ここは多くの人々で賑わう街「サバイバル」

街の中央に位置する城「イルエーク」では、毎日巨大な鐘が音を響かせ、街にリズムを刻む。

政治もここで行われ、秩序の維持を行う最高機関が集まる最も重要な場所である。

南部にある巨大な闘技場では様々な理由で集まった人々が己の力を極限まで引き出し、栄誉、名誉、自由、各々が各々好きなものを求め闘う。またそれを見る人々も魂を震わせ、試合が動くたびに十人十色な咆哮が飛び交う。闘技場を一歩出ればスラム街が広がる。決して裕福とは言えない人々が同じ場所に集まり、暖をとり、話し相手となり、時には喧嘩相手となる。廃れたこのスラム街は街の汚点と同時に巨大な防壁となっている。

この世界に存在する摩訶不思議な生物「ヌル」、そいつらは街の南から現れることが多い。そのため侵略阻止区域としてスラム街が機能しているのだ。

サバイバルは城下町のように周囲を城壁が囲んでいるが円ではなく弓形であり、城壁の外にスラム街が存在する。城壁の出入りは東西南北に1つづつ、南部は闘技場がそこに位置する。また闘技場がヌル侵攻の際の最後の砦となっている。

そのような条件のせいで、南部はなかなか発展せずスラム街へとなった。

北部はほぼ魔物とは無関係の場所であり裕福層がここを住居とすることが多い。馬車などの交通機関も発達しており、北部は北部だけで、経済が成り立ってるといっても過言ではない。それどころか、会社の経営者等もこの場所で生活することが多いため北部以外の場所からお金を搾取しているのが現状である。そのため治安こそいいものの、東部、西部からの妬みの対象となり、「大火薬庫」と表現されることもある。

その東部と、西部はいわゆる平民層が暮らしている場所であり、その生活は豊かではないが暖かく、優しい雰囲気が漂ってる。

しかし北部との問題は無くならず、南部からやってくるヌルの脅威も皆無ではないと言われているため、平和とは言い難いのもまた事実である。


これがサバイバルという王国であり、世界でも有数の巨大都市




という設定のゲームである。


2100年、VRは改良、発達を繰り返しCVRーcyber VRーへと進化した。

これは肉体から意識だけを切り離し、電脳世界で自由に活動させることができる技術を用いている。これによりゲームの質は大きく変わった。FPSやシュミレーションゲームも実際に「体験」できるのだ。もちろんデメリットも存在し、ダメージを受けると少しばかり痛みを伴う。もちろん実際の傷より痛みは少ないのだがそれでも死亡時などはかなりの痛みが襲ってくることもあるらしい。

それでも普及したのはVRを超える臨場感や爽快感。そういったものがあったからだろう。


このゲーム「電脳王国サバイバル」もその1つであり、フリーシュミレーションゲームとしてかなり人気の部類に入る作品である。

その人気の理由は、NPCがヌル以外存在せず全てプレイヤーで構成されているということであるだろう。

政治も経済も全てプレイヤーが決定している。

プレイヤー全てが等しくその機会を与えられるので、街の風景もその時の統治者によってだいぶ変わる。荒んでしまう時期もあれば、かつてないほど豊かになる時期もあり、殺人が合法化するときもあれば、人にぶつかるのすら犯罪になる時期もある。

全てが自由で、各々作りたい世界を作れるのがサバイバルだ。

もちろん、あまりに人道に反する行いをすると反逆も起きたりする。

自分で家を建てることもできるし、誰かと結婚することもできる。新しい商売を始めることも可能だし、サバイバルの外に1から街を作ることも可能である。

思いつくことはなんでもできる世界、それが「電脳王国サバイバル」である。





サバイバルの南部、闘技場では毎週1度最強プレイヤーを決める大きなイベントが開催される。

1週間で季節が移り変わるこの世界において、各季節の一番を決める一大イベントだ。

その開催日が今日であり、多くの人が集まっている。見物客も参加者もとても興奮している様子だ。

年々参加者の数は増えるが、決闘の質は落ちていると言われているがそれでもやはり聞くのと見るのでは雰囲気も違えば、観客たちの熱気も想像の遥か上をいく盛り上がりを見せる。その決闘は、トーナメント方式でシンプルではあるが勝ち上がれば勝ち上がるほど観客は盛り上がる。今はまさにその一番盛り上がる決勝が始まろうとしていた。

「さあさあ、やって参りました。第124回決勝戦、今回も白熱した試合ばかりでしたが、決勝はそれ以上のものとなることは間違いありません‼︎それでは、選手の入場です!東、アラメ サハル!西、ナリア ユリナ! サハル選手は体格に恵まれており、パワフルかつスピーディな試合運びでここまで対戦相手を圧倒してきました。今回もそのパワーとスピードを生かして優勝なるのでしょうか?一方のユリア選手ですが、初出場ながら魔法の圧倒的な力で、苦戦した試合こそあったものの、ほとんどダメージを受けることなく決勝まで進んできております。それでは間も無く試合が始まります。両者準備はいいですか?レディー!ファイト‼︎」

上裸の巨漢が、試合開始の合図とともに音にならない叫び声をあげた。それは衝撃となり黄色を基調としたローブと胸元がしっかり開いたドレス、黒色のトリコーンを被り余裕綽々と構える女性めがけて闘技場に敷き詰められた砂をえぐりながら襲いかかる。

ユリアは、その豊満な胸に手を置くと一言二言何か呟く。するとユリアの伸ばした手の先から何か鏡のようなものが出現する。

「リフレクト!」鏡はサハルの放った衝撃を吸収すると、威力と範囲を倍増して放出した。サハルは驚いた様子で一瞬動きが止まった。かわす余裕はないと判断したサハルは防御体制に入る。反射した衝撃波の威力は凄まじく、サハルの皮膚を防御の上から傷つける。傷こそ浅いものの、あちこちから血が滲む。

しかしそんなことを気にする余裕はなく、ユリアの追撃を警戒した。

そのユリアは、リフレクトで反射しきれなかった分の衝撃をくらい、片膝をついていた。

「スタンプ!」

サハルは一度飛び上がり、その勢いをつけたまま、地面を思い切り殴る。その勢いが地面を伝い、ユリアの足元で炸裂する。ユリアは宙に投げ出され、空中で2、3回転する。

「クラッシャー!」

サハルの右腕が肩近くまで、地面にめり込み、その状態から地面を持ち上げるようにユリアめがけて投げつける。巨大な岩石となった地面は一直線にユリアへ向かう。

「ウィンテム・ドルクス・ウーラ!」

直撃する直前にユリアは風を起こし、自分の身をさらに上空に持ち上げ、岩石をかわした。ただその衝撃も凄まじく、体から血が滲み出す。

「サンガル・ダーメル=アーガ・イリシャ・ストレイン!」

会場がざわめく。

上空から無数の雷が降り注ぎ、直撃した場所からは天まで突き抜けるような氷柱が立ち登り逃げ場を少しずつ、でも確実に奪っていく。

「合成魔法・・・」

誰かが呟く。合成魔法は現在のサバイバルで扱えるものは数少なく、滅多にお目にかかれない代物なのだ。

魔法単体でも可能性は無限大である。この世界において魔法は、想像すれば大抵のことは現実となる。

それを2つ同時に扱うとなると、これは言葉で表す以上の難しさとなる。両手でそれぞれ違う文字を書くような感覚である。練習すればある程度は習得できる。ただそれを完璧にできる人間はなかなかいない。それが、合成魔法である。

雷が100は落ちただろう。サハルはなんとかかわし続けていたが、氷柱により逃げ場をどんどん奪われていた。

このままだとダメだと判断した彼は、逃げながら何本か氷柱を折り、それに雷を当てることで逃げ場を確保するという手段に出た。

氷柱に雷が何本も当たり、氷柱から氷柱が突き出す。

それが、いくつも重なりサハルを守る屋根となる。円錐状に積み重なった氷柱に守られて、サハルは反撃に出るために、地面を思い切り蹴り、氷柱ごと宙へ飛び出す。

「ファーラ・イム・アテム=ウィンテム・ドルクス・ウーラ!」

炎が風をまとい、渦を描きながら、氷柱とサハルに襲いかかる。氷柱は一瞬で溶け、炎を消火する。しかしそれを周りの風が吹き飛ばし許さない。

勢いを衰えさせず、サハルに直撃し、肉と血の焼ける匂いが闘技場全体に蔓延する。

炎が地面で散布して消えるとそこにサハルが立っていた。全身火傷をし、もはや生きているのかすら怪しかったが、右手を上げて何かしようと動く。しかしそこで力尽き、倒れた。

「勝者、ユリア‼︎」

勝利の鐘が1度大きな音を立てて響く。

「凄まじい試合でした!これから優勝者のユリア選手にインタビーしていきたいとー」

司会のアナウンスを遮り再び大きな鐘の音が3度闘技場全体に響き渡る。

「ヌル襲来の合図!」

初めて聞く音だったが、すぐに反応を示す。ユリアは真っ先に闘技場のスラム街を見渡せる場所へと飛んだ。文字通り飛んだ。

そこで見たのはかつて見たことのないほどのヌルの数による襲来であった。

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