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5 おやすみの言葉を交わして

 息ができずにむせてしまった私。その後、リオンからの質問を受けていた。


「カリーナはただ会話できるだけじゃなくて、色々と感じることもできるんだね?」

「そうよ。今の私には、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚があるの。あ、でもオカリナだからごはんは食べないわよ。というかお腹も空かないし。あと生理現象もないわよ。ということで、さっきはこのことを黙ってて悪かったわ。そして一つだけ言わせて。軽蔑しないでね」

「軽蔑はしないよ。だけど……そうだね。黙ってキスされようとした悪い女にはお仕置きが必要だね」


 するとリオンは私の目の前で中指を折り曲げ、ペチンッ!


 デコピンをしてきた。


 デコピンなんてされたのは、子どものころに第二公爵令嬢とデコピン祭りをしたとき以来だ。久しぶりのデコピンだ。


「痛い! ちょっと何すんのよ!」

「だからこれがお仕置きだよ。あ、もしかしてお尻ペンペンのほうがよかった?」

「どっちも嫌よっ!」

「あははっ! 冗談だよ!」

「冗談って何よもうっ!」


 リオンはよく笑う。その笑いが私の感覚を狂わせているのかもしれない。

 私はお仕置きされたというのに、不快にはならなかった。まあ嬉しくもなかったけど。



--



 長い一日は終わりを告げようとしていた。

 今の時刻は夜十一時。もう寝る時間だ。


 それだというのに、私たちはまだ寝ていなかった。

 なぜなら、リオンが私専用のベッドを作っていたからだ。


「……よしできた。こんな感じかな」

「すごいわ、リオン! よくこんなおままごとセットみたいな物をただの木材で作れたわね!」

「まあ僕は趣味で木管楽器を作ったりもしてるしね。このくらいなんてことないよ。というか、僕が作ったベッドをおままごとセットって表現するなんて、やっぱりカリーナは面白いね」

「だっておままごとセットなんだもん」


 おままごとセットみたいな小さいベッドが私の目の前にある。

 この木材で作られたベッドがこれから私のベッドになるらしい。ちなみにこのベッドは、木材の板の上にふかふかした綿を詰めて、その上に布生地を被せてある。リオンがわざわざ手の込んだふかふかベッドを作ったことは、女という私に対する配慮なのだろう。たぶん。


 すると、リオンは私をそっと掴み、さっそくそのベッドの上に乗せた。


「どうだい、ベッドの感触は?」

「そうね……。私の部屋にあったベッドには及ばないけど、これで充分だわ。ちゃんとふかふかしてるし」

「大丈夫? 遠慮してない?」

「してないわよ。心配してくれてありがとう」


 私が言った通り、本当にこのふかふかでも充分だった。

 だって今まで闇商店の戸棚の上に無造作に置かれていただけだもの。そう思うと、このベッドはあの戸棚と比べたら天と地の差があるように感じた。


「じゃあそろそろ寝ようか」

「そうね、寝ましょうか」

「おやすみ、カリーナ」

「おやすみなさい、リオン」


 お互いにおやすみの言葉を交わす。つい昨日までは考えられなかったことだ。今の私は幸せだ。

 そして私は幸福感に包まれながら眠りについた。

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