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3 音と楽しさを感じる家

 自己紹介を終えた私たちは、あれから雑談をしながらリオンの家に向かっていた。すると、


「ここが僕の家だよ」


 リオンはそう言うと、家と思われる場所を指差した。


「ここが家?」

「そう、ここが僕の家だよ」


 リオンが言う家は、私が思い描いていた家とは違った。

 私はもっと、品格があって綺麗で、広い家だと思っていた。

 しかしこれは……。


「豚小屋?」


 あ、つい本音を言ってしまった。


「あっはっはっは! 豚小屋だって! やっぱりカリーナは面白いや!」

「もうっ! バカにしたように笑わないでよ!」

「だって豚小屋だよ? 面白いよ! あっはっは!」

「面白くないっ! だって本当にそう思ったんだから!」

「ごめんごめん、つい笑いすぎたよ。……あれ? 怒ってる?」

「……怒ってないわ。だけど私をバカにしたことは許せないわ。だから土下座しなさい。そしてその後私の足を舐めなさい」

「あっはっはっはっは! やっぱり怒ってる! それに土下座! オカリナに土下座だって! さらには足舐め! 面白いったらありゃしないよ!」

「もうっ! リオンのバカッ!」


 私どうしたのかしら。バカにされて怒っているはずなのに、なぜだかあまり本気になれない。本気で怒った気になれない。


 どうして?

 これまでの私ならむしゃくしゃして、女中をめちゃくちゃにするくらいにはちゃめちゃだったのに。


 むしゃくしゃしないのはリオンが男性だから?



 こうして私に一つの謎が生まれてしまった。



--



 リオンの家の中は豚小屋ではなかった。

 私が住んでいたマルシェ城のように広くもないし綺麗でもなかったけど、楽しさと音を感じられる家だった。


「リオンは部屋に楽器を飾っているのね」

「そうだよ。だって僕は楽器吹きだからね。色んな楽器を集めているのさ。今日オカリナを買ったのもそういった理由さ。ところでカリーナの部屋はどんな部屋だったんだい?」

「偶然だけど、私も部屋に楽器を飾っていたのよ。今の私はオカリナだけど、このオカリナも当時は部屋に飾っていたの」

「へえ、そうなんだ。楽器を飾っていた者同士が出会うなんて、奇遇だね」


 リオンはそう言うと、部屋に飾ってあったトランペットを吹いた。


 そしてその音は、私の心を爽快にさせてくれた。

 まるで部屋の中に春風が吹いているような気分になった。


「上手! リオンのトランペットすごく上手ね!」

「まあ、なんと言っても楽器吹きだからね。これくらいはできないと。ちなみにさっきの演奏は僕の家に来てくれたカリーナに対するお祝いだよ」

「あら、嬉しいわ! それにしてもトランペットを吹けるなんて尊敬! だって私なんかオカリナくらいしか吹けないもの!」

「なるほど、だからカリーナは唯一吹けるオカリナに魂を移したんだね。納得したよ」

「そ、それは違うわ! 私はオカリナになりたくてなったんじゃないの! 呪われてしょうがなくオカリナになったのよ!」

「呪われてしょうがなくオカリナに……ね。やっぱり面白いや、カリーナは」

「だから面白くなんてないってば……!」


 どうやら私はリオンに本気で面白い女だと思われているらしい。

 ……まあ不快じゃないしいいか。それにもう何を言っても覆りそうにないし。


 それから私たちは、お互いの趣味嗜好などを語り合った。

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