2 よくしゃべるオカリナ
四年の時を経てついに私は買われた。
しかも相手は男性、さらに言うと若くて金髪のイケメン。
私は幸せでいっぱいだった。
男性は私を片手に持ちながら外を歩いている。
私が闇商店から外に出たのも四年振りだ。
ただ外に出ただけだというのに、私はワクワクが止まらなかった。外の空気がおいしく感じられた。
しかし、このとき私はあることに気づいた。
そう、男性と出会ってから一度も声を出していなかったのだ。
男性は私の声を聞いていない。もし声を聞いたら、一気に私のことを嫌いになって、「返品します」なんて言われるんじゃないか。そんな不安が出てきた。
でも、ずっと黙って生きるなんて私にはできない。
私は声を出してみることにした。
「あ、あの……」
すると男性は声が聞こえたのか、辺りを見渡しキョロキョロしだした。
通行人の誰かから声をかけられたと思っているのだろう。
私の勇気が足りなかった。そして次は思いっきり声を張って男性に声をかけた。
「あのっ!」
「へっ? うわっ!」
男性は驚いて私を放り投げそうになった。あぶないあぶない。
「お、驚かせてしまってごめんなさい……」
「いやいや、こちらこそ驚いてしまってごめん。君は話せるオカリナだと聞いていたのに、つい声をかけられてびっくりしてしまった。あ、放り投げそうになってしまったけど、怖くはなかったかい?」
「大丈夫でございますわ!」
大丈夫でございますわ!
なんて普段使わないような言葉を使ってしまった。私、緊張しているわね。
「あの、私はカリーナ。マルシェ城第三公爵令嬢マルシェ・カリーナと申します。この度は私を購入し、助けていただいて本当にありがとうございます」
「これはこれはどうもご丁寧に。僕はリオン。バートランド・リオンと申します。このプレーリーの村出身の一般男性です」
「そ、そうでございましたか! 気品があったもので、てっきり貴族かと思いましたわ!」
「いやあ、貴族だなんて恐れ多いですよ。それにしてもカリーナさんはお話が上手なんですね。僕のことを貴族だと言ったり、自分はマルシェ城第三公爵令嬢だと言ったり」
あ、あれ? 私の言葉、信用されてない? 嘘だと思われてる?
「マルシェ城第三公爵令嬢マルシェ・カリーナは嘘などつきませんわ! どれもこれも本当のことです!」
「あっはっはっは! いやあ、面白いですね! それによくしゃべる!」
あ、だめだこれは。完全に信用されてない。
こうして私は話が上手く、よくしゃべるオカリナとして認識されてしまった。